小説(両性) | ナノ

▽ 10


真剣だった。まさか自分はプロポーズをされているのだろうか。一生結婚なんて縁がないと思っていたのに。


「お前の母親も、元老院もそんなことは許さない……」


冷静になって言ったつもりだった。そう、誰も許さない。


「俺を誰だと思っているんだ?これでも皇帝だ。俺が選んだ人を認めないなんて、誰にも許さない。母親だろうが、元老院だろうが……たとえユイン、貴方でもだ」

「嫌だっ……無理だ!皇后なんて、できない!……お願いだ。俺を愛しているって言うんだったら、俺を行かせて?」


あの小さな館と領地で静かに暮したい。



「俺を一人にするのか?ずっと育ててくれた俺をユインが見捨てるのか?そんなことをできるのか?」


そんな酷い事をユインがするはずもないかのように、信じきっている目をしていた。


「お前を一人になんかさせたくない!……でも、もうお前は子どもじゃないだろ?」

「そうだ。もう子どもじゃない……でも、ユインが必要なんだ!そしてその子も。俺の子どもだ。引き離さないでくれ!」


ユインは酷い事をしようとしているのだろうか。たった一人のライルを置いて逃げ出そうとしている。ライルだって父親なのに、引き離そうとして。


「お前……すごい若い父親になるんだぞ?」

「年が明ければ、17歳だ。そんなに若くは」

「いや、充分若いだろ?……そんなんで、お前の子ども守れるのか?絶対に狙われるんだぞ?……お前の正嫡にはもっと血筋の良い子を入れたかったはずなんだから…」

「絶対に守ってみせる。それに、あんな館に引っ込んだほうが危険なんだ。俺の目が行き届かないから」

確かにあんな辺境の小さな領地では、ここから遠すぎる。しかし、何も知られていない今なら平気だろう。子どもと二人で静かに暮していける。


「もう言っちゃったんだ。元老院と約束していたし……ユインに子どもができたら皇后に迎えるって」

「おい!」

「だって、俺はすぐにでも皇后にしたかったんだけど、子どもができなかったらどうするんだとか、元老院の老いぼれどもが煩かったからな。じゃあ、子どもができたらユインを皇后にすることに反対するなよ、って3人くらい脅しに辺境に追いやったから反対派はもういない」

「そんな勝手な……」


自分が死にたくなるほどに思いつめたのは一体なんだったのだろうか。もうライルだけじゃなくて皆に知れ渡っているのなら、隠す意味なんてなかったのに。


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