小説(両性) | ナノ

▽ 王国物語 2


「って、なんじゃこれー!!」

 俺は叫んだ。叫ばずには要られなかった。

 ライル王が用意してくれたのは・・・・・・・・なんとドレスだった!!しかもロリータ風味。あの人俺のこと王子って呼んでいたくせに性別を勘違いしているんじゃないのか?


「文句言ってくる・・・・・」

「まあまあ王子!せっかく陛下がくれたものにイチャモンつけたらどんなことになるか!・・・王はあんな色男ながら、潰した国は10を下りません。うちも目付けられたらどうするんですか」

ドレスで潰された国っていうのは無様かもしれない。

「それに王は王子の性別を知っているのかもしれませんよ」

「はあ?俺言ってないはずだけど・・・いや、待てよ?言ったのかな」

 最近は声を大にしては言ってないけれど、むかしは俺の外見では性別を判断できない人が多くて、男の子?女の子と聞かれることが多かった。その際、どっちもと答えていたような。王に会った頃はまだ10歳だったそうだから、どっちでもあるみたいなことを言ったのかもしれない。

「だからドレス用意したんじゃないですか?ほら、諦めてドレス着てくださいよ」

 で、仕方がなく諦めた。

「ホンッと!王子顔だけは可愛かったんですね!普段の口の悪さが目立って気が付きませんでしたよ」

 俺はお前こそ口が悪いだろうと突っ込みを入れる気力もなく、呆然と姿見の自分を見ていた。我ながら可愛すぎた。

「これでどうやって・・・妃候補を探せって言うんだ?」

「それは・・・・ちょっと無理かもしれないっすよね・・・王子より可憐な娘を探すほうが困難だと思います」

 

 そんなこんなで妃など見つけることを諦めた夜会。王に連れられてダンスまでさせられてしまった。落ち込む・・・・。

 しかしそんな可哀想な俺に、運命の出会いがあった!

 ライル王の妹のルイザ王女陛下!俺より10歳くらい年上だったが、すごい綺麗な人だった。この王女はかなり有能な人らしく、王が征服した領土の一つを治めている。王女ながら一国の王でもある。

 そんな人だから俺の妃になんかなってくれないかもしれない。キリっとしててカッコ良いし王女。

「陛下と結婚したいなー」とうじうじと悩んでいると、何時もは余計なことしか言わない従者その1が代わりにプロポーズに行ってくれることになった。


 この時代、求婚は代理を立てて行うことが正式な申し出だ。

 ドキドキしながら待っていると、遠目だが従者その1が嬉しそうに親指をグッと立てていた。


「王子のほうから求婚をしてくれるなんて・・・・また兄陛下が冗談を言っているものだとばかり思っていましたわ」

「いいえ!そんな!・・・俺の一目ぼれなんです!一目見たときからこの人しかいないと思いました!陛下が俺の求婚を受けてくれて・・・本当に感謝しています」

 俺とルイザ王女とライル王と後ろに控えている従者その1とで歓談が進んだ。陛下とはルイザ王女のこと。ルイザ王女も北の領土を治めているから、呼びかける時は陛下が正しい。王族って名前を呼ぶのは目下から目上のものには許されていないのだ。敬称で呼ばないと不敬にあたる。俺も王子だがまだ国王にはなっていないので、ここでの身分はライル王が1番でその次は属国の王を務めるルイザ王女が2番目に当たる。俺は3番目で従者その1など物の数にも入れれない存在だ。従者その1は所詮従者だから。

「私は王子からここに来てくれた時から、こんなときが来るのを信じていたよ・・・ルイザは私の思い込みだと言っていたがね。私も運命の人だと信じて疑わなかったよ」

 王もよく話してみればいい人だった。なんせルイザ王女との縁談を快く承知してくれたからだ。全然2人とも似ていないけど、王はルイザ王女の兄だ。やっぱり兄弟なんだからライル王もいい人なのだろう。

「あと・・・その、求婚を受け入れていただいたのは凄く有難いのですが、俺も父の後を継いで王になります。陛下も一国の王ですし・・・跡継ぎ問題や、何処に住むかなど婚礼の前に決めておきたいのですが」

 俺、弟いるし別にルイザ王女のところに婿に行ってもいいけど。お互いが王同士や跡継ぎ同士だとどうしても色んな問題が出てくる。それで戦争になった国もあったくらいだから。これでも俺も王族だし、一応考えるには考えている。

 それにせっかく結婚したのに別居婚とか悲しすぎるし。

「それなら、当然ユインがこの国に住むことになる。ユインはまだ王子だし、王もまだお若い。当分ユインに王位はまわってこないだろう?・・・それに王位なら連立王国にして、子どもに王位をつけさせれば良いだけの話しだ」

 要するに、合併ってこと?俺一人で勝手にそこまで決められないよなあ・・・国民の反感を買うかもしれないし。いくら気楽な父だとて、そう簡単に頷ける話でもないし。ルイザ王女の治める領土とうちの王国は地続きじゃないし。下手したら、あっちの王国に編入されてしまうかもしれないし。規模的には明らかにライル陛下やルイザ王女が治めている領土のほうが大きい。

 俺のそんな思案気な顔に気が付いたのか

「それで都合が悪いなら、君の弟王子が王位を継いでも構わないのではないか?ユイン、君は王位に興味が無いようだし」

「あ、うん・・・そっちのほうが良いかな?」

 王の言うように俺、王位に興味ないし。ルイザ王女のためだったら、婿養子に行っても構わないし。

「では、そろそろ夜も更けてきた・・・今夜は初夜なのだから、支度もあるし、そろそろ解散しよう」

「まあ、陛下。気が早いですわ・・・今日婚約したばかりですよ」

 そうだよ!俺も驚愕した。そんな、初夜だなんて。心の準備もできていないのに、そりゃあ、俺も王子だしそういった教育も受けているけど。実践をしたことはない。

「夜会でのお披露目も済んだことだし、問題はないだろう?ユイン王子の父上に反対されないとも限らないからな。既成事実は早めに作っておくことに限る・・・異存はないだろう?ユイン」

「あ、はい!勿論です」

 ここで断ったら男が廃るだろう。でも、さっきから気になっていただけ、ライル王、俺のこと名前で呼んでない?まあ、義弟になるから良いけど。

 というわけで湯浴みしています。今日プロポーズしてのあまりの急展開にちょっと頭が付いていっていなかったりもします。ライル王もさあ、あの親父がルイザ王女との結婚を反対するわけないのに・・・本当は妃、妃って五月蝿いのは母王妃ほうだったりする。早くに孫を見たいかあ、父をせっついて俺を追い出したのだ。だから結婚するんだから、反対されるはずないのに。

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