小説(両性) | ナノ

▽ 王国物語 3(完結)


「・・・・これは?」

 用意された夜着は・・・またしても女物だった・・・・。レースが一杯でスケスケの・・・これって何かおかしくない?仮にも今からは俺とルイザ王女の初夜なんだろう?それでこのドレスって一体。

「陛下の贈りものですわ。それをぜひ殿下に着て欲しいそうです」

 ってルイザ王女の趣味なのか!!!ひょっとして俺があの時ドレスを着ていたから、俺との結婚を承諾してくれたとか?

 そういえば、ルイザ王女は今までどんな婚姻の申し出にも諾とは言わなかったらしい。一部ではルイザ王女はそういう趣味ではないかと噂されたこともあったとか。大国だというのに、兄妹そろって独身だからな。

「陛下・・・がご希望なら」

 泣く泣く俺はドレスを着た。

 

 ドレスを着た俺はある豪華な寝台がある寝室に案内され、陛下が来るのを待つことに。普通は男の俺から行くような気がするんですが・・・?何で王女が来るのを待っていないといけないのだろう。それがこの王国の仕来りなのかもしれない。

 それぞれ国独自の伝統があるもんな。あ、ちなみにどの国でも共通なのは、王が言っていた既成事実・・・要するにやっちゃえば=結婚ということになる。結婚式なんかはお披露目に過ぎない。やってしまえばこちらのものということで、略奪結婚なんかも結構あったりするらしい。女は処女じゃないと結婚できないので、処女を奪われた王女なんかは泣く泣く、略奪された男のものになってしまうのだ。

 俺男に生まれて本当に良かった・・・うちの王国、美形が多いんで、結構狙われることが多いらしいんだ。今は大国だからそうでもないけど、何代も昔の時代、かなり国力が落ちていた時代にはそういうことも頻繁に合ったらしい。

 ちなみにここまで国力が回復した理由は、俺と同名の王子が当時のライル王に浚われるように嫁いで行ったらしいからだ。その時の王の名前もライルと言ったらしい。まあ、同じ名前を付けるのは王家の慣わしだから、珍しくもないけど。というわけで、この王家の中にはうちの王家の血も流れている。そのよしみで、昔は結構仲が良かったらしい。いまのうちの国ははこの王国のおかげで、存在できたと言っても過言ではないだろう。人質のように嫁いで行ったご先祖様のお陰で、かなりバックアップをしていてくれたらしいから。
 
 今はさほど交流もないけどね。

 って、そんな取りとめもないことを考えている内に王女がやってきたみたいだ。どうしよう・・ドキドキしてきた。暗いから顔は良く見えないけど、俺もほら・・・初めてだし。暗いほうがみっともない姿見られないで良いかもしれない。

 あ、後ろから抱きしめられた。俺、歳の割りにはちょっとだけ・・・小さいけど王女ってでかい。俺がすっぽり王女の腕の中に入ってしまう。そのうち大きくなるさ!まだ俺だって15歳だし!

 そのまま顎をとられて、キスをされた。な、なんか結構荒っぽいですね?王女の口小さく見えたけど、結構大きいですか?それに凄く・・・情熱的です。

「はぁ・・・はぁ・・へ、陛下少し・・手加減をしてくれると、う、嬉しいです」

 情けないかもしれないが、俺初心者です・・・。キス1つで呼吸を乱しております。

 そんな俺に、王女は笑ったようだ。

 あ、手加減してくださいって言ったのに・・そ、そんな所触っちゃあ!い、嫌じゃないですけども、王女攻めですか?お、俺の立場がないような気がします。

 でも、気持ち良いかも・・・。何時の間にかベッドに押し倒されているし。このまま、王女に任せたほうが上手くいくかも。っていうか、もう何も考えられません。よく分からないまま、ルイザ王女に身を任せています。なんか色々囁かれたかもしれないけど、もう何が何だか。

 そこまでは天国だった。しかし地獄はその後待っていました・・・ハイ。

「いってえ!!・・・な、何、何?・・陛下」

 何だかよく分かんないけど、もの凄く痛い・・それに何か物凄い異物感を体内に感じるような気がする。

 俺がルイザ王女に助けを求めるように抱きつくと、やけ嫌に硬い筋肉が抱き返してきた。王女・・・いやに筋肉質なんですね・・・と、俺は痛みでパニックになっている頭でそう思った。

「ユイン・・・すまない。君は初めてだから、この痛みをどうしてやることも出来ない。許してくれ」

 そう言って王女は動きます。ますます痛い!って!!!!!王女じゃない?・・・この声は。この声さっきから聞いていたような気もするが、どう贔屓目に聞いても男の声・・・っていうかライル王の声だろ!これ。何で俺今まで気がつかない!ってことは・・・・俺、ライル王とやっちゃってたりしますか?

「え・・あ、ちょ、ちょっと・・・」

 何とか静止してみようとしたが、男は急には止まれないようで王も止まってはくれません。何で妹の夫とやっているんですか!真面目に質問したいんですけど!でも、痛くて王にしがみ付いているだけで精一杯の俺・・・。

「ユイン・・・君から会いに来てくれて・・・君から求婚してくれるなんて夢のようだよ・・・愛している」

 違う〜〜俺が求婚したのはルイザ王女にだ〜〜!!よく考えれば分かるだろ!!王子が王にプロポーズってありえないだろ?俺が女装していたから?

 あ、駄目だ!このまま王に出されたら、結婚が成立してしまう!俺も一応女でもあるし!っていうか・・・もう処女奪われた時点で駄目なんだけど・・・なんて焦っているのか、冷静なのかイマイチ不明な俺の心の突っ込み。

「ユインが10歳の時に、一目惚れしたんだ・・・父王に、連れて帰りたいと頼んだのだが、まだ幼すぎるから駄目だと言われ、16歳になったら良いと言われたから、ずっと待っていたんだよ。まさか、君のほうから一年も早く来てくれるとは思ってもみなかったけれど」

 ひいい〜〜〜!!!俺、知らない、知らない、聞いてない、聞いてないって!!

 知っていたら、こんなところ来なかった!一歩もライル王なんかに近づきはしなかったさ!親父の馬鹿!!何でそんな大事なこと言い忘れるんだよ!どうせ、そんな申し出があったことなどすっかり忘れているに決まってるんだ!分かりきってる!

「王も、ユインが良いと言ったら、嫁に出しても良いといっていたから、君の弟に王位を譲るのが一番丸く収まるかな?」

 そんな上機嫌な王に俺はなんて言えば良いんでしょうか?

 俺がプロポーズしたのはルイザ王女なんですって・・・言ったら・・・どうなるんだろう。な、なかったことにできるかな?

 そういえば、従者その1は一体何をやっていやがったんだ!俺はルイザ王女にプロポーズして来いって言ったのに!・・・でもアイツ身分低いから、俺が陛下と結婚したがっていると伝えたんだろうな・・・アイツくらいの身分だと、直接名前を呼ぶのは不敬に当たるから。

 客観的に見れば、俺がプロポーズする相手『陛下』はルイザ王女だけど、ライル王国側からしてみれば、王は俺が10歳のときにプロポーズしたらしい(例え、親父が忘れ果てていても・・・)から、俺の求婚相手はライル王がと、王も王女も思ってしまったのだろう。道理でなんか会話が噛み合わなかったんだ。

 今夜のこと・・・無かったことにしたいんですけど駄目かなあ。駄目?駄目でしょうか?・・・

「まあ、もしユインが嫁いで来てくれなくてもあの王国を滅ぼせば良いだけだから構わないけれど。君から私の元にきてくれて本当に良かった」

 ああ、そういえば・・・・何代も前のライル王は、俺と同名の王子が王の求婚を断ったせいで、うちの王国を攻めたんだ。なんて似ている子孫なんだ。この目の前にいる男は!

 俺・・・このまま誤解を解かないほうが、身のためかな。俺がルイザ王女のことを好きになったと正直に告白したら、あまり素敵な未来はないような気がする。俺は本能でそう悟った。

 その後も賢明な俺は真実を口にせず、酷い目に合いながらも懸命に耐え続けた。


 今日はドレスじゃなかった。俺がドレスを嫌いだと王に言ったら、別に王はドレスに拘っていたわけではないらしい。ただ王の意中のものだとお披露目をしたかっただけのようだ。その俺が男の格好をしていたら混乱するので、あのときはドレスだったようだ。

 そんな訳で俺は王城にいます。誤解を訂正できなかった俺は弱虫ではないはずだ。仕方ないんだ・・・人生にはこんなこともあると諦めるよりは他はないような気がするから。

「王子!初夜はどうでしたか?そんなにヤツレテいるところを見ると、凄かったんですか?」

 ニヤニヤ顔の従者その1を人目見るなり、殺してやりたくなった俺。そうだよ、凄かったよ。その中身までを語ろうとは思わないが・・・・。

「まさか王子の好みがライル王だったとはねえ・・・意外でした」

「お前かあ!元凶はあああ!!」

 コイツが王や、ルイザ王女が勝手に勘違いしたんじゃなくて、このアホが俺がライル王に求婚してます!とかアホなことをほざいたのか!殺してやろう。

「えええ?元凶ってなんっすか?・・・俺もはじめルイザ王女のことだと思ってたんですが、王陛下たちが王子の求婚相手はライル王だって言い張るものですから・・・やっぱ、違ったんですか?」

「違わないさ・・・・」

 こいつが原因じゃなかったのか・・・やっぱり王たちの思い込みだ。もうどうしようもないんだから、始めっから俺がライル王のことを好きだったことにすればすべて丸く収まるってわけか。


 ユインって名前ってひょっとしたら呪われているんじゃないか?

 俺はこの先うち王国でユインという名前を付けさせるのを止めさせようと、硬く心に誓った。

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