小説(両性) | ナノ

▽ 16


「父上っ!お話しがあります」

皇太子の生母を確認しようとライルは会いたくもない父親に謁見を申し込んだ。なるべくなら二人きりが良かったが他の元老院のメンバーもいた。だが父親の派閥のものだ。構わないだろうと話しかけた。

「父上、皇太子殿下の生母は誰ですか」

「皇后に決まっているだろう…そんなことより皇太子殿下の様子は」

「父上!貴方が大事にしている皇太子の命に関わることですよ!」

そう簡単に答えるとは思ってなかったが、想像通りの態度に少し霹靂してきた。

「ライル、お前に話すわけにはいかない……陛下との約束を破ることになる……誰にも明かさないことが皇太子誕生の際の……約束だ。ずいぶん陛下にはご無理をお願いした。約束を破るわけにはいかない」

「分かりました。父上に聞いても無駄なことが理解できました。他の方々にお聞きしても同様でしょう」

他の議員も父の腹心ばかりだ。

「それにしても大きくなったな……」

「叔父上」

父の弟で、軍閥一族に相応しく軍の重鎮だ。

「もう大人ですから」

「そうだな……まだ子どもだった頃でも十分陛下のお相手を務めることができた」

「何をおっしゃりたいのでしょうか?」

今更ライルとユインのことを揶揄される必要性が分からない。

「陛下はお疲れだ。お慰めする相手が必要だろう。お前がその身体で陛下を癒してこい」

「なっ……」

「陛下はずいぶんお前のことがお気に入りだった」

「生憎、陛下は小さな私がお気に召していらっしゃったようですよ……今更私などお呼びではないでしょう。他の女なり男なりをあてがってはいかがですか?」

「陛下のお相手が我が一門以外であってはならない!他の勢力をのさばらすわけにはいないのだ!」

ライルに拘るのは、一族が好きな権勢かと納得がいった。昔から国を影から操るのが好きで仕方ないのだ。特に欲しいもののためなら手段を選ばない血が流れている。

「嫌です…俺はもうごめんです」

「ライルお前が行かないのなら、一族からお前に似た男を陛下の下に送るだけだ」

「父上……あの陛下がそんな者を了解するとは思えませんね。ただでさえ皇太子が危篤だというのに」

「いいや陛下は皇太子殿下がこんな状態だからこそ必ず拒否はしない。そう分かってる……お前は良いのか?陛下がお前以外の男に抱かれて」

何の確信があって父がこんなに自信があるのかは分からない。でもそれは事実なのだろう。

「以前とおっしゃっていることが違いますね……俺に結婚しろと、陛下を諦めろと命令なさったのは父上だったと思いましたが?」

なのに今日はユインを抱いて来いという。

「それも変わらない。お前は結婚してもらう…だが陛下のお相手もしてもらう」

「何も真実を教えてくれないのに命令だけはするんですか」

「そうだ。それが役目だ」

「いつまで?」

「お前の役目が終わる時は陛下が知ってらっしゃる。それまでお前はその身体で陛下を慰めてくるんだ」

prev / next

[ back to top ]




×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -