小説 | ナノ

  621日後のある日 1


ニート生活619目。ヤツが帰ってこなくなった。

何でだ?

いや、いないほうが平和だろう。それは否定しない。

だけど、あれほど俺に執着して、食べるものさえ指定して、自分が作ったもの以外俺に口にすることさえ許さなかったヤツがもう3日も帰ってこないなんて。

心配だ……な、わけないが、何かが起こっている気はする。

じゃないとヤツが帰ってこないとかないだろ。

帰ってこなくても良いが、俺の食料はどうなる?

3日経ってそろそろ冷蔵庫の在庫も切れてきたぞ?

あいつは俺に体にいいものを食べさせたいとか言っていたから、レトルトやカップラーメンなんかは言語道断で、日持ちするものが一切置いてない。

お腹が空いてきたんだけど、何時戻ってくるんだ?


待っていたが戻ってくる気配がなかったため、俺が仕方がなくニートから足を洗う事にした。

閉じ込められて621日目のことだった。


とりあえず食料を手に入れたかったので、お金を手に持って、服装はどうしたらいいんだろうか?なにぶん俺は入学式にしか出ていないから、普段生徒がどんな格好をして寮内を歩いているのかも知らない。

無難に制服にしておこうか制服を着て、一歩外に踏み出した。


でもなんてことなかった。別にヤツが飛び出てくるとかもなかったし、意外に簡単だった。何で621日も閉じこもっていたんだっけ?とか思いそうだけど、閉じこもっていないとやつに心中させられるからだったよな、と思い食材を目指して歩いた。

どこにあるか分からなかったので、夕飯の時間だからか生徒たちが向かっている方面に足を向けた。

どうやら食堂のようだ。

みんなと同じように席に着いて何を食べようかなあ〜っと思案していたが、他の皆を見ると注文はどうやらカードキーでするようで現金のやり取りでは注文できないようだった。
それではお腹を満たせない。

どうしようかな〜と悩んでいると、隣にいる可愛い子が顔を真っ赤にして俺を見ていた。


「どうしたの?」

621日目にして他人との初会話だった。

「あ、あのっ……貴方のようなお方をお見かけするのは初めてで」

「うん?こんなにたくさん人いるから見たことなくてもおかしくないでしょ?」

何百人もいるんだから、全員と顔見知りじゃなくてもおかしくないだろうし。

「で、でも貴方みたいなカッコイイ方がいらっしゃったら、絶対に気がついていると思います……」

うん?まあ、俺顔は悪くないから、目立つかなあ……?

「会長様と同じくらいかっこいいです……」

ヤツと同じくらいか?嫌な比較だな。

「じゃあ、そのかっこいい俺にご飯奢ってくれない?カードキー忘れてきちゃったみたいで」

って、ご飯を奢って貰った。パクパク、うん、美味しい。
ヤツが作るご飯は栄養価とか添加物がとか、色々煩くって薄味で結構不満があったんだよな。

「で、さあ。その会長最近見かけない気がするけど、どうしちゃったんだろ?」

ちょっと探りを入れてみる。

「え?ご存じないんですか?あんな有名な事件を!?」

「うん……俺世俗のことっていうか、あんまり噂に興味がなくてね」

世間から隔絶された世界で生きているからね。ニートだし。

なんて言っていたら、あーとか怒声?が聞こえた。何なんだ?

がやがや煩いし、周りからはブーイングを受けている声が聞こえる。

prev / next

[ back to top ]




×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -