小説 | ナノ

  4


「啓志くん〜上がったから、啓志くんも入ってきて?」

「うん。ちょっと待っててね。すぐ出てくるから」


電源も切る★会長を忘れて、かわいこちゃんと良いことするんだ〜。

しばらくネコしかしていなかったけど、抱き方忘れていないよな。うん、男の本能だから大丈夫なはず。


「お待たせ〜………」


可愛い子猫ちゃんがベッドで待っているはずなのに、仁王立ちをして威圧感満々に俺を睨んでいるのって……。


「啓志、インフルエンザの調子はどうだ?沖縄まで来れるくらいだ。もう完治したのか?」

「は、はい!」

「そうか、でもさっきのメールはまだ熱があるとか。今から寝るとはほざいていたな?まさか、寝るとはこの男とか?」


ああ、真紀くん……どこに行ったかと思ったら、また可愛い顔がボコボコにされて見る影もない……。


「あ、あの……」

「約束を守る気があるか、この冬休みは自由にさせてみたんだがな。大人しくしていれば、少しは監視も緩めてやろうかと思ったが、案の定目を離す振りをすると、フラフラと浮気かよ?ああ?」


ひい!もう、目が怖い!
真紀くんもごめんなさい!可憐な顔をそんなにさせて。会長、本当に容赦ないから。


「あ、あの!まだ、まだ未遂です!何もしていません!」

「未遂になるように、今出てきたんだよ!?俺がいなかったら、こいつとやっていたんだろ?違うか?」

「やっていたかもしれないですが……会長を思い出して、勃たなかった可能性もあるので」

「思い出したらやれないよな?……最後のチャンスにメールで、約束は覚えているか?ってわざわざ忠告してやったっていうのに。思い出しもしなかっただろ?電源まで切りやがって……約束を破ったらどうなるか、ちゃんと言っておいたよな?」


うわああああ、無理心中とか、言っていましたね?じょ、冗談だよね?


「いや、でも、会長のお陰で未遂に終わったので関係」

「関係ないわけないだろ!」


ああああ。駄目だ。以前の浮気未遂の時に比べて、怒りが尋常じゃない。いや、実際に会長が記憶喪失になって浮気した時もここまで怒らなかったのに。未遂ごときで怒りが半端じゃない。何で?


「啓志……お前は、俺の僅かばかりの信頼をことごとく破ったんだ。どう矯正しようが、お前は浮気すると分かった。覚悟はいいか?」


いや、俺の浮気性なのは、確かに矯正できないかもしれません。でもそれ=死亡とかちょっと酷すぎない?


「か、会長が悪いんだよ!」

「何だって?」

「だって、会長、俺が浮気性だって知っていて監視緩めるから!ずっと見ていないから悪いんだよ!浮気させる会長が悪い!!」


なんであのまま見張っててくれなかったんだよ〜そうすれば浮気するチャンスだ!ってこんなところまで逃げ出さなかったのに。


「啓志!」

「会長が悪いんだから!……ずっと俺のこと束縛しないから!ずっと見張っててくれれば、俺も浮気しないのに」


うん、正論のはず!勿論、会長はそんな俺の言葉には騙されてはくれないが。


「だから、孝也がずっと俺のこと、浮気しないように閉じ込めて?」


うだうだ言っていると、また殺すとか心中とか言い出しかねない。この人、本当にどっかおかしいから。


「孝也以外、見えないようにして?」


仁王立ちしている会長をベッドに押し倒す。ちゅっと物騒なことしか言わない口にキスを落として、それ以上文句が言えないようにしてやった。会長の手をとって、かぷっと噛みつく。


「啓志っ……」

感極まったように俺を抱きしめる会長。

「本当に閉じこめるぞ!」

「孝也の好きにして……俺のこと壊れるまで抱いて?」

「一生束縛してやる!浮気する気も起こらないくらい、毎日抱いて、他の男なんか目に入れさせないからな!……分かったか?」

「うん……分かった。浮気しないようにちゃんと見張っててね?」



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