読書感想文
2011/04/04



敬愛する(故)エドワード・ゴーリー氏の絵本の中でも、一番生々しい作品ではないかと思います。

彼は、ブラックユーモアに富んだ作家で、少しオカルトチックな絵柄とどこか救いようのない物語が魅力的な作家です。

彼の描く話では他に『ギャシュリークラムのちびっ子たち』(アルファベット順の名前の子供たちが死んだり殺されたりする26の方法を提示する話。例:A.アンリーはリンゴを喉に詰まらせた。B.ビリーはびりびり感電死etc...)──このあらすじだけを聞くと甚だ不謹慎な内容に思えるかもしれないが、実際はどこかファンタジーのような部分が見え隠れしていて、あくまでもブラックユーモアの一つとして、少なくとも一部のマニア(もちろん私も入っている)などには熱狂的ファンが多いのである。


だが、そんな彼の作品の中でもこの『おぞましい二人』は、特に救いようがなく、

また、1965年に英国で実際に起こった「ムーアズ殺人事件」(夫婦が4年間の間に5人の子供をさらい殺した事件)を基につくられた作品なのである。

内容はあくまでも淡々と、1Pに大体1〜3行くらいの文字で書かれている至って普通の絵本方式。
上部には、手書き字体のような英文が書いてあり、その下に日本語訳がある。

決して、研究・評論本なわけではなく、かと言って精神分析の本なわけでもなく、

ただ淡々と殺人犯の夫婦の一生涯を絵本にした一冊。

そこから何を感じるか。また、絵本だからこそ、何をどう思うのか。活字が苦手な人にほど読んで欲しい。これはその為の絵本であると思う。

目を背けずに、これからの世の中どんどん虐待や犯罪が多くなっていくかもしれない。その為にも、この絵本で、少しだけこの悲しい現実に向き合って欲しい。


最後になりましたが、私個人的には、決して「怖い話」ではないと思う。




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