この先にある未来を見ようよ


現在、キムラスカから出された宣戦布告に対して、マルクト帝国の首都であるグランコクマは港も全て封鎖された状態になっていた。当然、街に入るには検問や尋問などの処置が施されている、はずなのだが。魔物を使って降り立ってきた神託の盾兵の服装をしている方々3人の人の影。それに、一瞬街の入り口にいたマルクト兵は身構えた、が。

「―…神託の盾騎士団参謀総長特務師団師団長のフレイ・ルーティス響将です。すみませんが、アスラン・フリングス少将を呼んでいただけますか?」

最初に降り立ったのは、もちろん俺。その後ろからアリエッタとイオンが地に降り立つ。それを見た(何を、と聞かれたら俺だけどをだ)マルクト兵は武器を構えていたことを詫び、そして猛スピードで宮殿の方へと掛けて行った。


かつてケセドニア北部戦でマルクトと対立していた俺なんだけど、幾度となくマルクトへ導師代理使者として赴いていること、それからきっと陛下の私室へ入ることを許されたっていうこともあるんだろうけど。

「…あの、フレイ。グランコクマって封鎖されてるんじゃないんですか。なんでこんなに簡単に入れるんですか、おかしくないですかこれ」

明らかに待遇されているのが分かる周りの態度に、[前]との事項を重ねてイオンが首を傾げていた。アリエッタは封鎖されていることは知らなかったのか、驚いている。残念ながらライガは街の外でお留守番中だけど。

「事前に連絡もしてあるしな。まぁ…しょっちゅう来てるから覚えられてんだろ」
「そうなんですか?」
「ちょくちょくな」


なんでそんなにちょくちょく?とアリエッタに首を傾げられつつ、その答えを探す。仕事から逃げるのに遊びに来たり、…正直、イオンの前で言いたくないことも結構あるんだけど、と思いながら、もう時効だからいいか、と納得。

「勝手に議会改正法出したり軍制度見直し案とか提案したり」
「ばっちり内政干渉!!」

マルクト兵はそれを全力で聞かなかったことにしたらしい。軍制度見直し、は数年前に施行されたばかりだ。自分も掛っているという制度の改正に他国の軍人が関与していたなんて、そりゃ考えたくないだろうな。がくり、と肩を落としたイオンに軽く笑った。最も原案を出したのは俺で、陛下に奏上したのはアスランなんだけど。


「お待たせしました」

イオンが項垂れている間に、いつの間にかアスランが出迎えに来ていた。アリエッタは数日ほどに会ったばかりだろうけど。俺にしてみれば、約束の日の少し前に会ったばかりだから、もう数カ月ぶりになる。陛下ともそうなんだけど。

「思ったよりも早かったですね」
「入れ替わりを早めにしておいたから、書類が溜まってなかったんだよ。で、連絡した通り陛下と謁見出来る?」

イオンもいるし、と姿を見せれば何故か項垂れているイオンの姿。その様子を見て思うところはあったようだけれど、特に何も言わずに苦笑いを零して視線を俺へと戻した。

「勿論、非公式に」
「よし、それじゃあ行くか」

まだルークたちが此処に来るまでに日数はあるはずだ。たとえワイヨン鏡窟へ寄らなかったとしても、タルタロスの故障でどうしてもケテルブルクには行かなければいけないはずだ。だとすると、あと数週間ある。その間に、やりたいことは沢山あるから。


わがもの顔でさっさと街中へ歩き始めた俺を、特にマルクト兵は咎めたりはしない。その様子を見ていたイオンが、あの人はどこまで世界を征服するつもりなんですかねー、とアリエッタに零していたらしい。人聞きの悪い。

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