そして、外壁にあたる部分から緑色の何かが落ちてきた。つくづくこの人たちは落ちてくるのが好きらしい、とアニスはため息をつく。それが何なのか、分かった上で。高いところから落ちてきたにも関わらず、たんっと軽快な音を立てて、一同とアッシュの間に足をついた、その人は。ぱっと顔を上げてアッシュの方を見やった。まるでこちらを気にしていないかのような表情で、


「おー、早かったなフローリアン」
「うん!まぁ所詮はたかが研究者ってところだよね!楽勝楽勝〜!髭を後ろ立てに生きてるような連中だもん、僕の手にかかれば人捻りだもん。どーこもかしこもくーずばーかりー♪ってね!」

ふふん、と何故か得意げなフローリアンはアッシュを前に仁王立ちをした。先程までの苛々は何処へ消えたのか、アッシュの口元がふっと緩んだ。それを見て、少しだけむっとしているのは勿論ガイとティアである。

「ルーク!何故敵と楽しく談笑をしているのですか!?」

そして、ナタリアが声を上げた。げ、と呟いて振り返ったフローリアンは嫌そうな顔で一同を見渡した。そして、その後ろにリンとシンクの姿が見えると、不思議そうに首を傾げたものの、特に何も言わずに視線を外した。


「ルークって、そっちにいる役立たずの親善大使様のことでしょー?てかアッシュのどこが聖なる焔の光なわけ?意味わかんなーい、頭弱いんじゃないのー?」
「おーいフローリアン、それは俺に対しても酷いぞー」
「役立たずとはどういう意味だ!!」

アッシュが声を上げるものの、その前にルークが突っかかってくる方が先だった。そして、その役立たずに反応したのはナタリアもそうだ。そんな2人を見ながら、事実じゃーん、とフローリアンは奥もせずに笑って見せた。


「えー、だって重要任務であるアクゼリュスの慰問が終わったはずなのに自国への報告を蔑ろにしてるわけでしょ?だったら死んだって言われてもおかしくないもーん。それ以前に慰問に参加してないはずの王女様がいるってのも変だしぃ〜。つーか髭がベルケンドにいるわけないし意味わかんないし言葉通じないしキムラスカまじでご臨終!」

フレイがいないと此処までいうのか、と内心でアニスが呟いていた。確かにそれもその通りであるせいか、誰も言い返せない。それを見て、気を良くしたのかフローリアンはさらに続けた。しかも、と、よりにもよってアニスにいる緑の2人に向かって。(しかしこの場合“リン”は銀髪だからその緑という真意を知るの者はいないわけだが)いや、その一方だけかもしれないが。


そこでようやく、アニスは先程のシンクの言葉を理解することになる。


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