スイート[ビター続き/忍足片思い]
卒業式は終わり、今日は3月14日。
何気にチョコレートを用意してしまった自分が怖い。
スイート先月の侑士の意味不明な発言に踊らされるがまま、チョコレートを用意してしまった自分が憎い。
でも、14日にどう会えばいいのか考えていなかった。
氷帝に行っても誰もいないのはわかりきっていたことだ。
正直、チョコレートをあげるのも前日まで悩んでいたぐらいだ。約束なんてのもしていない。
とりあえず、電話でもしてみようかと思って携帯を見ると、跡部くんからメールが入っていた。
内容は、ジムとだけ書いてあった。
「お前はどこまで王様なんだよ!」とついつい携帯に突っ込んでしまった。
とりあえず、侑士より先に王様の居るであろう王様のジムに向かうことにした。
バックに財布と携帯を詰めて家を出た。
「寒い。」
ジムはさほど遠くはないが、今日は一段と寒く遠くに感じた。
着くと、受付に向かい跡部くんが居る場所を確認した。
2階のスカッシュ場にいると言うので、階段で2階に向かった。
すると、そこに居たのは侑士だった。
「え?侑士?」
私は水分補給している侑士に声をかけた。
侑士は驚いた顔をしてこっちを見た。
こっちも尋常じゃないぐらいに驚いた。
なんで、侑士がいるの?
「冥子?どないしたん?」
「王様から意味不明なメール来たから。」
「ああ、跡部か。跡部なら今から泳ぐらしいで。」
「えーここにいないの?!」
「さっき下に行ったわ。」
「まじかー。ありえない…。」
入れ違いとか勘弁して欲しい。
ここのジムただでさえも広いのに、プール?
地下じゃないか!
せっかく歩いてきたのに!
「ああ!そうだ!」
丁度良い。侑士の用事も片付く。
ここで、チョコレートをあげれば侑士の用事も片付くし、下に行けば王様のミッションもクリアで一石二鳥!
「あれ?」
チョコレート…チョコレート…
あ、リビングのソファーの上だ。
「あー…ごめん忘れた。」
侑士に言うと侑士は理解してないらしく、歩きながらこちらに来た。
「何を忘れたんや。」
「チョコレートだよー…あーリビングだ。」
しょげていると、侑士がいきなり抱きしめてきた。
「ちょっと、侑士…!」
抱きしめられると、侑士の中ににすっぽりと収まってしまった。
今まで、侑士にこんなことをされたことはないから、自分と侑士ではこんなにも身長差が出るとは思ってもみなかった。
「好きや。」
「え?」
「ずっと好きやった。」
何を言われているか理解が出来ない。
侑士が私のことを好き?
「いつも、辛かったわ。冥子が好きなやつ出来た時辛くて死にそうやった。」
どういうこと?
親友ではないの?
「せやからこの前、居らん聞いて安心したわ。」
「侑士…。でも、私…。」
「返事はいつでもええわ。言いたかっただけや。」
「う、うん…。」
そう答えると侑士は離れた。
ドリンクとタオルとラケットを取りに椅子に戻り、再びこっちに戻ってきた。
「大学は氷帝大学から近いよな。」
「え、ああうん。」
「覚悟しいや。」
「えっ?」
「これからは遠慮なんてせーへんから。」
そう言うと、私の耳元で
「攻めさせてもらうで。」
と言い階段を降りていった。
その後を追いかけることができなかった私は、スカッシュ場の前でただただ立ち止まっていることしかできなかった。
2014.03.14
[ 13/17 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]