本と本の間[高校生/ヒロイン1個上/日常/ヒロイン標準語]
同学年のA組の図書委員会の子が、今日は用事があるみたいで交換を依頼された。
別に、用事がない私にとっては構わないんだけど。
本と本の間頼まれたのは、お昼休みの時間。
私は、クラスの友達と仲良くご飯を食べていたら、呼ばれた。
理由を聞けば、どうやら先週休んだ塾の振り替えを月曜日にしてしまったらしい。
理由なんてどうでもよかったが、いちを日誌に書くために聞いておいた。
気がつけば授業が終わり、私は図書室に向かっていた。
ここの学校にはあまり図書室に来る人が少なく、果たして図書委員が必要なのかもわからない。
前居た学校では、読書週間というものもあったため図書館には少なからず、4人ぐらいは毎日いた。
なのに、ここの学校では1週間誰も来ない日だってある。
だからか、3階の突き当たりにある図書室は、何処か暗いイメージすらある。
図書室に着き、扉を開けカウンターを見ると今日の当番であろう子がいた。
「えーっと、今日交代で頼まれた大木です。」
目の前の黒髪の男の子は顔を上げ「知ってまスわ。委員長さんやろ?」と椅子に座りながら言ってきた。
私は、後ろにある椅子を持ってきて、その子の横に座った。
「えーっと、財前くんだっけ?」
委員長でありながら、あまりメンバーを把握していない。
と言うよりは、名前と顔が一致していない。
ただ、彼が黒髪で派手なピアスをしていたから、きっと財前くんだとわかった。
テニス部の話は、同じクラスの忍足くんや白石くんからよく聞く。
特に忍足くんが、派手なピアスをした黒髪の財前くんの話をよくする。
「そうです。委員長どこ出身です?」
財前くんは椅子を私の方に向けて「前から気になっとったんでスわ。」と言った。
転校してきて2年。
上手く大阪弁は使えないので、標準語で喋る私をきっと財前くんは、疑問に思っていたのだろう。
「えっ?東京だよ。」
「大阪弁は慣れへんもんです?」
「うーん、慣れないなー。聞くのはだいぶ慣れたけど。」
正直、大阪の街並みにも方言にも慣れるのが大変で、2年目でやっと聞くのは慣れ始めてきた。
「じゃあ委員長は、なんで図書委員なんスか?」
「静かそうだから。」
そう言うと財前くんは少し笑った。
「俺と一緒っスわ。」と言い「此処、ほんま騒がしい場所ばっかで困りますわ。」と付け足した。
「確かにねー。最初、校長先生のギャグでコケるとか困ったよ本当。」
ここは本当にお笑いに満ち溢れた学校で、授業だろうが何だろうが、先生生徒間でボケとツッコミで成り立っている。
「全然おもろないんスわ、アレ。はよ気づいて欲しいスわ。」
財前くんは困った顔をしていた。
そんな、財前くんとの委員の仕事は学校の話や、同じクラスの白石くん、忍足くんの話をして時間が過ぎていった。
「部長ほんまウザいんスわ。テニスになると。」とボヤいていながらも顔は、本気で嫌な顔はしていなかった。
「忍足くんからよく話はきいてるよ。」と言えば、「あの人ほんま勘弁して欲しいスわ。」と返された。
今日も来客がなく、ただただ話すだけで時間が過ぎていった。
気がつけば時間は18時になっていて、そろそろ図書室を締める時間になっていた。
「そろそろ閉めようか。」
私は、椅子から立ち上がり図書室の鍵を握った。
「ほんま、暇スわ。」
財前くんは、コンピューターの電源を落とし椅子を片付けていた。
「俺、閉めてくんでええですよ。」と、財前くんは右手を出してきた。
「別にいいよ。私やるし。」
「ほんなら、委員長待ってまスわ。」
「え?」
「靴箱の前にいまスわ。」
財前くんは図書室を出て行った。
私は、1階の職員室に図書館の鍵を戻し、靴箱に向った。
そこには、先ほど一緒に仕事をした財前くんが居て「はよ帰りましょ。」と言われた。
私は靴を履き替え、財前くんの方に向った。
「ごめんね。行こうか。」
財前くんは私が横に来るのを確認すると、歩き始めた。
しばらく歩くと財前くんが口を開いた。
「委員長…って呼ぶの辞めてええです?」
「うん?いいよ。別に。ってか財前くんぐらいだよ、そうやって呼ぶの。」
正直、“委員長”と呼ばれるのはどうもしっくりこない。
私はどう見ても、白石くんみたいにしっかり者でもないし“部長”や“級長”
など皆の上に立つような言葉は似合わない。
「ほんなら、大木先輩で。」
「その方がいい。うん!」
そう言って校門を出た。
校門を出た通りで、「私、こっちだから。」と伝えると、財前くんが「ほんなら、ここで。」と答えた。
「あっ、大木先輩!」
「うん?どうしたの?」
「今日は、先輩が交代でよかったスわ。」と言い「ほな。さようなら。」と付け足し歩いて行った。
私は「さようならー!」としか言えなかったけど、今日は楽しかった。
また気が向いたら、月曜日の交代受けようかな。
財前くんは、全く掴み所がない子だったけど良い子だった。
明日、忍足くんに報告しよう。
2014.01.25
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