使命のようなもの(2/22)

モコナさんが羽根の位置を察知してくれるなら、鬼に金棒だ。
さすがモコナ大明神。あとはうまいこと羽根の落ちている世界に当たるまで、根気よく旅を続けていけばいいだけ。その道中に私のいた世界があれば言うことなし。

「おまえらが羽根を探そうが、探すまいが勝手だがな、俺にゃあ関係ねぇぞ」

きゃっきゃと場が華やぎ、皆で協力モードになっていたかと思いきや。黒鋼さんは自分の意志を譲るつもりはないようで、じっと私達を見回している。正確には、小狼さんを、かもしれない。羽根探しの主導者は、サクラ姫を誰より大切に思う小狼さんだから。

「俺は自分がいた世界に帰る。それが目的だ。おまえ達の事情に首をつっこむつもりも、手伝うつもりも全くねぇ」

あのう、差し出がましいようですが、対価を一緒に払ったんだから、全く全然関係ないことはないんじゃないんですかねえ、とは言えなかった。だって、私にも少なからず黒鋼さんと同じ気持ちがある。
たとえ、サクラ姫への思い入れがある私といえど、元の世界で戦う人達が気がかりな思いもあったからだ。
一刻も早く、無事にサクラ姫の羽根が戻って、サクラ姫が無事に元の世界にかえって、そして私も元の世界に帰りたい。

「はい。これはおれの問題だから、迷惑かけないように気をつけます」
「あははははー。真面目なんだねえ、小狼くんー」

黒鋼さんに対する小狼さんは、思っていたよりずっと冷静だった。
私達の世界で学生をしていたら、優等生タイプと呼ばれていただろう。ファイさんはちょっとだけチャラい人、モコナさんはムードメーカー。となると黒鋼さんは、不良とか?不良は優等生タイプに弱い法則は異世界でも健在らしい。よく舌打ちするところなんて、本当に不良っぽい。

「お前らはどうなんだ」
「んん?」
「はいー?なんでしょう?」

はてさて、黒鋼さんのターンはまだまだ続く。けれど、これは大事なことだ。これから嫌でも旅を共にする相手なのだから、意思確認をすることは重要だ。仲間割れなんて、目も当てられない。

「そのガキ手伝ってやるってか?」
「んー。とりあえずオレは元いた世界に戻らないことが一番大事なことだからなぁ。ま、命に関わらない程度のことならやるよー。他にやることもないし」
「なるほど、その考え方もあったんですね!空いた時間を有意義に!できる大人って感じです!」
「でしょー?」
「………で?お前はどうなんだ、小娘」
「え、勿論手伝いますよ」
「即答かよ」
「ええ、もしかしたら私、羽根に助けられたのかもしれないですし。それに、困ってるお姫様を放ってはおけないですから!」

羽根が私を助けたかどうか、この際どちらでも構わない。
何故私の記憶の中に、サクラ姫がいたのか。ようやく分かったかもしれない。そのことの方がずっと重要だった。
記憶の中だけのお姫様。存在さえ、危ぶまれて、私の妄想だったのかもしれないと不安になったけれど。

夢見の力なんて私にはない。だけど、そんな私がもし、旅立つこの日を察知していたのだとしたら。
だったら、サクラ姫の力になることが、私に与えられた使命なのかもしれない、って思えたから。

『××』さんや『××の××』さん達と違い、使命のない自分に後ろめたい思いがなかったとは言い切れない。使命がなくても、自分でできることをすればいいって自分を励まし続けてた。
でも、使命のようなものをこうして見つけられたことに、喜びを感じてしまう自分は本当に単純で救いようがないな。


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※『××の××』:夢主が元いた世界で共に戦っていた七人の総称。『×××』とも呼ばれるが、使い分けが分からない。
※『××』:前回解説した『××』に同じ。『××の××』同様、夢主が元いた世界で共に戦っていた人物の名前。



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