14 夏休みに想いを馳せて 平穏な日が続いた。当たり前の日常がこんなにも素敵だなんて、私は幸せだ。 静雄さんも岸谷さんも、私の能力について全く問うてくる事は無かった。 あの黒髪の人ももうあれ以来なにもしてこない。 いつかは、言わなきゃと思いつつまだ言えないでいる。友達に隠し事なん、したくないもの。 すっかり暑くなってしまった。もうすぐ夏休み。世の中の人の大半が喜ぶであろう夏休みだ。 今日は最後の昼休み。 明日からは午前授業。 そうしたら暫くここで集まる事は無いんだなと思ったら、寂しくて虚しくて… 『寂しくなるなぁ』 口からそんな言葉が溢れた。 静雄さんと京ちゃんと岸谷さんは、一斉に私の方を見た。 『あっその、もうすぐ夏休みだから。皆んなに会えなくなっちゃうなって…』 門「夏休みも、集まればいいだろ」 『へ?』 京ちゃんのそんな一言で、私は静雄さんと岸谷さんとメアドを交換する事になった。 初めて携帯に京ちゃん以外のアドレスが入った。嬉しくてなんだかふわふわする。 『二人とも、ありがとう!』 新「こちらこそ!」 静「いつでも連絡寄越せよ」 『いつでも…?いつでもメールしていいの??』 静「当たり前だろ」 嬉しい。夏休みも、みんなに会えるんだ。お話できるんだ。遊べるんだ。 そう思うとさっきまで苦痛だった夏休みも、なんだか楽しみになってきた。 家に帰ってから、さっそく三人にメールを送った。 内容は、8月初めのお祭りに行きたいということ。 我儘かな?とも思ったけど、小さい頃から憧れを抱いていたお祭り。行ってみたいのだ。大好きな人達と。 これから始まる夏休みに想いを馳せて、私は携帯を閉じた。 [しおり/戻る] |