化け物×化け物 | ナノ




13 泣いてる理由


昨日の事があってから、静雄さんと会うのが怖い。怖くて怖くて堪らない。

「おはよう」も言えてない。

午前の授業は全く頭に入って来ず、耳を通り抜けるばかり。あっという間にお昼休みになってしまった。

屋上に行ったら、静雄さんや岸谷さんがいるかもしれない。
怖がられるかもしれない。嫌われるかもしれない。

そう思ったら自然と足は屋上と反対に向かっていた。





静「おい」

腕を掴まれ静止させられる。振り向かなくても分かる。静雄さんだ。

ゆっくりと後ろを振り返る。

静「そっち屋上と反対側だぞ?」

静雄さんは本当に不思議だという顔をしていた。
私も私で、そんな事言われるとは予想してなくてびっくりしてしまう。

静「なんだよそのアホ面は」

『あだっ』

そう言って目を細めて笑う静雄さんは私にデコピンをしてきた。

また一緒に屋上でお昼ご飯食べても良いの?怖がらないでくれるの?嫌わないでくれるの?前みたいに、仲良くしてくれるの?

そう思ったら涙が出てきた。

『っ〜〜。』

静「わ、悪い!そんな痛かったか?」

静雄さんが心配そうな顔で私の顔を覗き込む。

違う。違うの。嬉しいの。

そう言いたいのに喉に言葉が詰まったように出てこない。

静「保健室行くか!?」

『違うの…!違うの違うの違うの!嬉しくてっ』

静雄さんはキョトンとした顔をした。

静「泣くほど痛かったって訳じゃねえのか?」

『うん』

ああ、静雄さんは本当に優しいな。私の悩みや不安なんてきっと、ちっぽけな事でしかなかったんだ。

静「よかった…よし!屋上で飯食うぞ!!」

『はい!!!』

顔が自然と綻ぶのが自分でも分かる。




屋上に行くと、岸谷さんと京ちゃんがいて。もう既にご飯を食べていた。

少し暑くなってきた初夏の日。
やっぱ幸せだな、なんてヒシヒシと感じた。


(ありがとう。本当にありがとう)



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