化け物×化け物 | ナノ




15 自覚した気持ち


名前と新羅と門田で昼飯を屋上で食べる事が日課になっていた。


『んぐっ』

名前が突如変な声を上げた。

門「どうした?」

『玉子焼き砂糖と塩間違えたー!しょっぱいー』

門「あーあー、しょうがねえなあ。ほれ、俺の玉子焼きやるよ」

『京ちゃんありがとう』


門田ってこんな風に笑えるんだって思う程優しい微笑みを名前に向けている。
もしかして、門田は名前の事が…。

そう思うと息苦しくて、俺なんかじゃ門田に勝目ねえじゃねえか。と考えていた。

いや、そもそも俺は名前の事が好きなのだろうか。




『寂しくなるなぁ』

またもや名前が突然呟いた。

寂しくなる?どういうことだ?

『あっその、もうすぐ夏休みだから。皆んなに会えなくなっちゃうなって…』

そう言われて俺も気付いた。当分名前に会えねえのか。話せねえのか。

名前の笑顔も、名前の困った顔も、名前の泣く顔も…

夏休みの間だけだっつうのに、まるでもう一生会えないかのような感覚に陥る。



そして門田の提案で俺は名前とメアドを交換した。
自分の携帯のアドレス帳に“苗字名前”という名前が表示されてるのを見て、自然と口元が緩む。






放課後、かったるい授業を終えて荷物をまとめる。

今日名前は委員会だかで一緒に帰れないらしい。

丁度門田に聞きたいことがあったから、門田のクラスへと足を進める。
門田はまだ帰ってなく、教室で荷物をまとめていた。

静「門田。今日一緒に帰らないか」

門田は俺の方を見て良いと答えてくれた。




学校の門を出て、公園に行くことを提案すると快く承諾してくれた。

門田はベンチに座り、俺は木にもたれかかる。

門「で?どうしたんだ?」

静「あぁ…」

今更ながら、なんて聞きゃいいんだ?
ーーー名前の事どう思ってる?
ーーーお前好きな人とかいんの?
ーーー名前とどういう関係?

やっぱごちゃごちゃ考える事は得意じゃねえや。

静「門田は、名前の事好きなのか?」

だから俺は聞きたいことをそのまんま、ストレートに聞いた。

門「好きだ」

ーーードクリ、と心臓が波打つ。

そんなこと、分かっていたことではあった。でもやっぱり本人から聞くのは衝撃が大きい。

確かに門田と名前は仲良いし昔からの幼馴染だしお似合いだと思う。

俺なんかより遥かにお似合いだ。

でも、それでも、俺はーーー名前の事が好きだ。

やっと名前の事が好きだと自覚した。門田のおかげで自覚する事が出来たんだ。

静「そうか」

門「でも」

静「?」

門「確かに俺は名前が好きだ。愛おしささえ感じる程な。そりゃ俺が彼氏になれたらどんなに良いことかって思うさ。でもな。俺は名前の兄貴みたいなもんだし、名前もそう思ってるだろう。俺はそれで良い。それに俺自身、その関係を壊そうなんて毛頭思ってない。」

最後に門田は、俺じゃダメなんだよと呟いた。
そしてしっかりと俺の目を見据える。

門「だから、静雄。よろしくな」

静「…あ?」

門「え?お前名前の事が好きだろ?」

静「っ…」

俺自身さえさっききづいたのに、なんでこいつは知ってんだ。

門「まあ安心しろ。名前は鈍感だから全く気付いちゃいねえだろうよ」

静「お、おう…」

俺そんなに分かりやすかったのか?行動に出てた?表情に出てた?

今は恥ずかしいやらなんやらで訳わかんねえけど、門田によろしくと言われた事だけは理解できる。応援されたんだ。

静「門田。ありがとな」

門「おう」

こんな気持ち、初めてだ。






家に帰って携帯を見ると、ディスプレイには名前の文字。
急いで見てみると、お祭りに行きたいということだった。

これは、期待しちまっても良いのか?お祭りなんて…。俺は馬鹿だから期待しちまうぞ?

だってそんなのまるでーーーカップルみたいじゃねえか。

行くとすぐに返信をした。





それから夕飯を食べてる最中に名前からの返信が来た。
『【良かった!京ちゃんも行けるって!岸谷さんは用事があるので行けないそうです…残念】』

…ああ、わかってた。わかってたさ?本当だぜ?わかってぞ。

溜息を一つして、これから先が思いやられるなんて思った。



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