IF.もしも出会いが違っていたら



マサラには、とても強いトレーナーがいたそうだ
過去形なのは既にこの町にはいないから

どんな相手にも屈しず、強い意思を持っていた
そして誰からも愛された明るさと優しさを持っていたそうだ
俺はそいつとあったことはない
おじいちゃんが懐かしそうに話す面影を浮かべるだけだった

そいつは3年前にこの町を出たらしい
ハッキリ言って無謀だ
俺達は10歳で旅に出ることを許可される
なのにそいつはたった8歳で出ていったのだ
そして、それから消息をたった

何故出ていったのか、それを止めるものはいなかったのか俺は知らない
ただおじちゃんは過去を悔やんでいた
もしも止めていたら、と

「もしかしてお前?オレらの邪魔してくれちゃってる奴って?」

その声に意識が現実に帰ってくる
声の主は目の前で、鋭い目付きをして睨み付けてくるフシギバナに軽くもたれ掛かっていた
その足元ではピカチュウが電気を纏って威嚇している

「マサラタウンのグリーンねぇ……、キョウとマチスが嘆いてたぜ、ガキんちょに負けたって」

それは俺に対して怒っているというより、大人が負けたことに滑稽だと嘲笑っているような言葉だった

「でグリーンだっけ?あんたの目的ってこの図鑑?」

「後はそこにいるフシギバナだ」

少年は俺が旅に出るのと同時に研究所から図鑑とフシギダネが入ったボールを盗み出した
その後ゼニガメも盗まれたのだがその件は既に解決している

「図鑑は良いけど、フッシーは駄目。もうかけがえのない仲間だからね」

その優しい瞳は本当にR団なのかと疑ってしまうほどだった
だが、確かに少年は上層部に深く繋がっている。R団トップの右腕なのだ

「グリーンは強いんだね、オレと同い年なのに。今ではこの世界を自由に旅してる」

相手は向かってくる気はないのか足元のピカチュウを抱き上げてその頭を撫でた

「オレも、もしかしたらそっちにいたのかな?」

「何を言っている」

少年は俯いてポツリと呟いた
まるで何かに後悔するような呟き
しかし、直ぐに自嘲気味に笑った

「ハハッ、何言ってんだ、オレ。そんなのありえるわけないのに」

もう決まったことだ、そう呟いた
そういえば、どうして俺は先ほどおじいちゃんの話を思い出したのだろうか
……そうだ、似ていたんだ。目の前の少年が
おじいちゃんが話す物語の少年に

黒い髪、燃えるような赤い瞳

「オレもグリーンみたいに自由になりたかった」

名前は確か……


「オレは人生で最大の賭けに負けたんだ」


レッド

彼の瞳は暗く何も映してなかったが
その奥に溢すことのない涙が見えた気がした




時間がずれてます、まず赤が8歳で旅に出て、2年くらいは放浪します、そして3巻の榊戦で敗北
その一年後の話です
強さに気味悪がられて町を追い出されて放浪していたことにしましょう(即席)
緑をみて、自分も図鑑所有者として旅に出たかったと嘆きます
緑赤?


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