人魚姫にはなれない  [ 11/31 ]




あれからドラコとも無事にいつも通りの関係に戻れた。
相変わらず意地悪を言ってくるけど。

私達は四年生になった。今年は百年に一度の三大魔法学校対抗試合が行われる。
ホグワーツと他の二校(名前は忘れた)で何か戦うみたいなんだけど、実際は余り興味がない。
そして何故だかはわからないが参加してはいけない14歳のハリーが選ばれたらしい。
皆は、ハリーが目立ちたいが為に立候補した、と言いふらし毎日嫌な噂が絶えない。
勿論私はそんなこと思ってない。ハーマイオニーも。きっと誰かがしくんだに決まってる。
でもロンは・・・違うみたい。ドラコも最近機嫌が悪い。きっとハリーのことだろうな。

「悔しくないの?」
「そりゃ悔しいさ」

私の問いにハリーは強く答えた。じゃあ勝つしかないわね、とハーマイオニーが言った。
そして私がこう付け加えた。

「どんな手を使っても、ね」

私が含み笑いを浮かべると二人は不思議そうな顔をした。
ハグリットやハーマイオニーの助けもあってハリーは第一の課題をクリアした。

次は私の番。ドビーにお願いして第二の課題内容を密告してもらった。
深い内容はやっぱり秘密で教えてくれなかったけど、
とにかく水中でも息が出来るような薬を作れば大丈夫だ、と言われた。
そんな薬今まで作ったことがなかったので、私は必死になって調合を繰り返した。

「おい、ベルヴィーナ」
「・・・その呼び方やめてって言ってるじゃん」

明くる日も明くる日も、研究室に行っては寝ての繰り返しで、私は少しイライラしていた。

「お前、ポッターに力を貸したんだってな」
「ハリーは勇敢だよ、ドラコがもし選ばれたらあんな風に戦った?」
「はっ、なんで僕がポッターなんかと比べられなきゃいけないんだ?ついに君まで頭がおかしくなったか?」
「・・・何でそういう言い方しか出来ないの?信じられない」

私はそう言ってドラコの横を通り過ぎた。
私を呼びとめる声がしたけど、聞こえないふりをしてまた研究室へと向かった。

それからもずっと研究室にこもる日が続いた。
そんなもんだからダンスパーティーがあることなんてすっかり忘れていた。
そうか、私はもう四年生なんだ。四年生以上が参加を許されるダンスパーティー。
クリスマスに行われるこのダンスパーティーはパートナーと一緒に踊るという、
まあ一般の女子からしたら気になる男子と一気に近付けるいいチャンスだが、
私からしたら、かなりどうでもよかった。

「貴方、本当にそれでいいの?」
「うーん・・・小さい頃からこういうことやってたから飽きちゃって」
「そう・・・」

悲しい顔で呟く彼女はトランクからコバルトブルーのマーメイドドレスを取り出した。

「折角貴方の分のドレス用意したのに、いらなくなっちゃったわね」
「え?これ、私のドレス?」

これでドラコと踊ればいいのに・・・と言われた。
ハーマイオニーは私がドラコのことを好きだと勘違いしている。
その妄想は年が重なるにつれて肥大し、自分達を両想いだとも言う。

「ドラコはパンジーと踊るんだって」
「そうなの!?ますますどうするのよ!」

結局、私はドラコと仲直りもしないまま研究に明け暮れて、
ダンスパーティーまで残り後一週間前となっていた。

「うん・・・あ、でもこのドレス折角用意してくれたんだから有り難く着させて頂くわ」
「でも・・・」
「大丈夫、心当たりはあるの」

心当たり、とはパートナーのことだった。
ハッフルパフのカルロス・テルフォードという、
一学年上の先輩からダンスパーティーの申し込みを受けていた。
もちろん了承して彼とダンスパーティーに行くことになった。
寮に帰るとパンジーのキーキー声が聞こえた。

「ねえドラコぉ、どんなドレスがいいと思う?」
「…何でもいいんじゃないか」
「え〜ドラコが決めてよぉ…きゃっ」

私はわざとパンジーにぶつかった。パンジー声が頭に響いて頭痛がした。

「ちょっと!ぶつかっといて謝りもしないのぉ!?」
「あら、いたの?気付かなかった、ごめんなさいね」
「そういえば貴方、最近姿も見せなかったわね、パートナーが見つからないからって、またあの変な部屋にひきこもっていたんでしょう?」
「ご心配どうもありがとう、パートナーならもうとっくに決まってるけど?ハッフルパフのカルロス君」

パンジーが一瞬驚いて、すぐに何よ何よと嫌味を言ってきた。
私に向かってじゃなくてドラコに、だけど。
ヴェルディはパンジーも昔狙っていたイケメンで有名の生徒だった。
明るい好青年で女子からも人気の高い…らしい。
全部ハーマイオニーからの受け売りだけど。

「アルディスの奴、私がドラコとパートナーだからって強がってるのよ」

・・・強がってないんだけど。パンジーの嫌味に背を向けて部屋のドアを思いっきり閉めた。
何だかあの二人を見ているとどうしようもなくイライラした。
その日の夕食の後、談話室でドラコに呼び止められた。

「おい」
「・・・何?」
「ハッフルパフの奴とパートナーになったって本当か?」
「ドラコには関係ない、パンジーとお幸せに」
「本当かときいてる」

妙にしつこく聞いてくるから本当だと強めに返答した。

「やめておいた方がいい、あいつにいい噂はきかない」
「そんなこと言って私を一人にしたいんでしょ?そもそもこの間のこと謝ってもらってないんだけど」
「それとこれとは関係ないだろ」
「関係あるよ!」
「何でよりによってあいつなんだ」
「何で?私もわからない!ドラコが勝手にパンジーとパートナーになるから・・・!」
「え・・・?」

え・・・私、今なんて言った?
私、パンジーに嫉妬してるの?そんなわけない。
私は何も言えなくなってドラコの問い詰めも無視して部屋に戻った。
眠いはずなのに、顔が熱くなってその日の夜は全く眠れなかった。



***

D.Side

『ドラコが勝手にパンジーとパートナーになるから・・・!』

あの言葉が耳から離れない。
彼女は何て言おうとしたんだ?
聴く暇もないまま彼女は自分の部屋へと戻ってしまった。
あいつの、泣きそうな顔が頭から離れない。

実際、僕は焦っていた。アルディスを誘ってもしパートナーが決まっていたら…
僕は赤っ恥をかくハメになる。それだけはごめんだ。
だからカルロス・テルフォードにいい噂はきかない、というのは全くの嘘だった。
咄嗟に口から出まかせがでるほど僕は焦っていたようだ。

元はと言えばアルディスがあのポッターの味方をするからいけない。
僕はどうしようもない気持ちに駆られて自分からパンジーをパートナーに誘った。
アルディスの、彼女の悔しがる顔が見たかった。ただそれだけなのに。
そんな顔を見たかったんじゃない。僕には罪悪感だけが残った。


  


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