コバルトブルー色の涙
[ 12/31 ]
12月25日、クリスマス。
対抗試合が続く中、ホグワーツではダンスパーティーが行われた。
ハーマイオニーがくれたドレスはコバルトブルーのマーメイドドレス。
私には少し大人っぽかったけど化粧やヒールのおかげでなんとか見れるようになった。
「綺麗!とっても綺麗よアルディス!」
「そうかな?ありがとう」
久しぶりにドレスに身を包んだ。ハーマイオニーの褒め言葉がむず痒くて恥ずかしかった。
パールをあしらったネックレスにパールのブローチ、髪飾りも付けた。
「あなたもとっても綺麗。いつもこのくらい髪の毛を整えたらいいのに」
「そんなことしてる暇があったら本を読んでるわ」
「それもそう」
私達は笑い合って、更衣室を後にした。
それぞれパートナーとの待ち合わせ場所に向かう為、一時別れた。
私は待ち合わせ場所の宿り木に向かった。
「カルロスさん!遅れてすいません」
「かまわないよ。綺麗だね、アルディス」
「ありがとうございます」
「そんなにかしこまらなくていいよ、あとカルロスでいい」
「わかった・・・カルロス」
「行こうか」
カルロスとは思ったより会話がはずんだ。
ダンスもそれなりに踊れるし、エスコートもうまい。
女子からの視線がまあ痛かったが、気にしなかった。
何曲か踊って休憩をし、飲み物を取りに行くとバッタリ、
ドラコとパンジーに会ってしまった。
「あ・・・」
「・・・・・・・・・」
「あら誰かと思ったらアルディス!楽しんでるぅー?」
「ああ、とっても楽しんでるよ」
私が言い返そうとした瞬間、カルロスが爽やかな笑顔でパンジーに微笑んだ。
パンジーが言葉をうっとつまらせた。ふん、ざまあみろ。
カルロスが私の腰を掴んでぐっと引きよせた。
「アルディス、君はダンスがとてもうまいんだね」
「いや、そんなことないよ、カルロスの方こそうまくて驚いた」
私がそう言うと、カルロスはドラコに向かってもパンジーと同じように微笑んだ。
「ごめんな、君の大切な幼馴染を奪っちゃって」
「・・・・・・!」
「ちょっと、カルロスそんなんじゃないって!行こう!」
私はまずい、と思って彼を引っ張って逃げるようにその場を去った。
「アルディス!ごめん、そんなつもりじゃなかったんだ」
「カルロス〜私達とも踊りましょうよ〜」
私達の会話を遮り、女豹のような女軍団がカルロスを取り囲んだ。
多分私達が踊ってるときに睨んでいた女子達だ。
「いや、でも僕は彼女と・・・」
「いいよ、ずっと私と踊ってても飽きるでしょ、踊ってきなよ」
「ほら、そう言ってるんだから行きましょ!ね!」
ごめんと謝るカルロスを強引に引っ張って女豹達は嵐のようには去って行った。
ぶっちゃけると私もカルロスと踊ることはもうどうでもよかった。
さっき会ってしまったドラコの冷たい目線が離れなくて。
私はバルコニーに向かった。遠くで聞こえるオーケストラと冷たい風が身に染みる。
何だか自分がとても寂しく思えて、悔しくて、とても悲しくなった。
私、ドラコが好きなんだ―――。
ドラコがパンジーを誘ったときいた瞬間どうしようもない嫌悪感が私を襲った。
それは間違いなく、嫉妬だった。心ではなんで私じゃないの?と泣き叫んでいた。
嫉妬心が心の中で渦を巻いた。私は自惚れていたんだ。
幼馴染と言う位置に甘えて、自分は特別な存在なんだって
心のどこかで思っていたから神様が私をこらしめたんだ。
一人になって改めて感じる悲壮感に胸がさらに痛んだ。
「アルディス・・・」
後ろから今一番会いたくない人の声がした。
その声はとても優しくて、今の私には逆効果だった。
***
D.Side
グレンジャーと別れるアルディスを見た。
遠目からだったのに、他の女とは比べ物にならないくらい美しかった。
コバルトブルーのマーメイドドレスに身を包んだ彼女は、
アクセサリーにパールをあしらって本物の人魚のように見えた。
アルディスとテルフォードは楽しそうに話している。
僕は心底気分が悪かった。パンジーとも一曲だけ踊ってその後は何もしなかった。
あの二人が気になってしょうがなくて・・・
アルディスの腰を掴んで抱き寄せる動作に僕は身の毛がよだつ程、カルロス・テルフォードに嫉妬していた。
本来だったら彼女の隣には僕がいるはずだったのに。
『ごめんな、君の大切な幼馴染を奪っちゃって』
この言葉がずっと渦巻いた。アルディスが行ってしまった後も、自然と彼女を目で追っていた。
僕はやっと気付いた。
アルディスが好きだ―――。
言うしかない。言うなら今だ。
そう思うと丁度いいところにカルロスが女の軍団に囲まれてどこかへ行ってしまった。
アルディスは一人になり、ずっと俯いていた。
そしてふと立ちあがり、奥のバルコニーへと歩を進めた。
僕も自然とそれを追いかけて行った。