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勝者だけの時間


1000hit記念のアンケート企画で勝者の首飾りの続編です。
先にそちらを読んでもらうと話が繋がりますので、下部リクエストからお読み下さい。


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あれから腰を引かれ部屋に入れば、マフラーを巻いたままの三蔵は我先にとベットの縁に座った。

ななし1はテーブルの椅子に腰をかけると、嬉しそうに三蔵を見る。

「んー、法衣にマフラーは似合わないね…きっと、私服だったら似合うんだろうな。」

三蔵の姿にけらけらとななし1が笑えば、三蔵はフン、と鼻で笑い、巻かれたマフラーを外した。
そして改めて自分の為だけに編まれたマフラーを見れば、三蔵は指で感触を楽しみながらこう言うのだ。

「……うまく出来てるじゃねぇか。」
「本当?!嬉しい!!いつも自分用しか編まないから、こんなにワクワクしたり、ドキドキして編んだの初めてだったんだあ♪」
「意外な特技だな。」

特に苦労したのはココ!!とななし1が三蔵の前に立ち、マフラーの難関だった場所を指差しながら楽しそうに言えば、三蔵は指差された場所を下を向き、手で触る。

ふと、ななし1が顔を上げると、思った以上に三蔵との距離が近く、驚いたななし1が口に手を添えれば、時は既に遅し。
三蔵はななし1の腕を引っ張ると、よろけたななし1がベッドの縁に手を着いた。

「……ねぇ、ちょっと…三蔵!?ベッド一つしか無いのにどうするの?!……聞いてる…!?」
「……構わんだろ。」

ぐいぐいと引っ張る力を緩めない三蔵の顔は真顔だ。困ったななし1は眉を八の字に曲げ訴えるしかない。せっかくマフラーをあげたのに。これはマフラーを渡す相手を間違えたか??三蔵の思考が全く読めないななし1は苦笑いだ。

「ぶつくさ言ってねぇでさっさと来い。」
「、ぎゃっあ?!」

三蔵はベッドになかなか入って来ないななし1の手を引っ張ると、強引にベッドへ沈めた。
ボスッと音が鳴り軋むベッドと、突然の衝撃に可愛くもない声を出すななし1。

「……可愛くねぇ声だな。」
「だって、三蔵がいきなり引っ張るからでしょ…、」

ななし1の噛みつきなんて全く気にしていない三蔵は、そんな彼女を腕に抱き寄せる。あれよあれよとななし1は三蔵の腕の中だ。自分の身に起こった瞬時の出来事が理解出来ずにいるななし1も、流石にまた抱きしめられたと分かれば顔を赤くする。そんなななし1に三蔵は呟く様に言うのだ。

「……デカい街に着いたら…ななし1の行きたい所に付いて行ってやる。」

その一言に、顔を赤くしたななし1は目をキラキラと輝かせる。まさか、あの三蔵からデート??に誘ってくれる…??とは思ってもみないものだから、いつもに増して嬉しさが込み上げてくる。

「…いいの…!?、行く、絶対だよ、約束だからね??」
「あぁ。」

いつも街に着くと、ななし1が三蔵を無理矢理引っ張り街に繰り出す。
ご当地のデザート等を食べる事で何とか三蔵の機嫌と二人きりの時間らしき何かを保っているものの、それはただの最高僧と従者の徘徊だ。
八戒や悟浄はそれを"お散歩だ"と言うし、何だかんだ強引に誘ってきたななし1もたまに女としての自信が無くなる。それがどうだ、三蔵から乗り気になってくれているのだから、ななし1は胸のドキドキが止まらない。

三蔵の腕に抱かれた恥ずかしさなんて忘れて、ななし1息を荒くする。明日、早速、大きい街は何処か、いつ着くのか、八戒に聞かなくては。

「凄く、嬉しいかも。」
「あぁ…??」
「何だか、デートって感じで、嬉しいの、」
「…フン。そんもん、いつでも連れて行ってやるよ。」
「………え、」

ななし1は、三蔵に小馬鹿にされるとばかり思っていた。
けれど三蔵の口から出た言葉は、いつもよりも甘く、ななし1の心をドキン、と高鳴らせた。
いつもよりも顔の近い三蔵と、視線が合う。いつもよりも、どこか優しい、三蔵の顔。

「さ、三蔵…それって、」
「何だ。テメエは好きでもねえ男とデートするのか?」
「そう、そうじゃなくて…、あの…」

"デート"

この響きが加わるだけで、いつもよりも三蔵を異性として意識してしまい、ななし1の鼓動が早くなる。
三蔵の性格から考えると、嫌いな奴とはいちいち出掛けたりしない。さらに、こんな二人っきりの状況では喋る事はおろか、視界にすら入れてくれないハズだ。ずば抜けてテリトリーに入られるのを嫌がる男である。

そんな彼がデートと認めてくれる…と思われるのが嬉しくて、ななし1は顔を赤らめた。
何か言葉を発しようと思えば思うほど、舞い上がる心と、まだどこか不安な気持ちが入り交じり、口を開くも言葉が出ない。

「…自分から言ったクセに何赤くなってやがんだ…、」
「だって、…何か、急に恥ずかしくなってきたんだもん…、」

今にも逆上せそうな顔を手のひらで包み、目を游がせる。三蔵がななし1の事をジッと見ている事は、彼女は重々分かっているが、今は三蔵と目を合わす事が出来なかった。

「…三蔵が、デートとか言うから……、」
「……あぁ…?…んじゃあ、このマフラーは何で俺に渡した。」

「………それは、」

二人しか居ない部屋。二人で寝転ぶ、一つのベッド。
一向に三蔵と目を合わせようとしないななし1は、游がせていた視線を枕に落ち着かせた。
もじもじと歪む唇と、困った様に八の字に歪める眉。
三蔵をチラリと見れば、鋭い視線と鋭い言葉が彼女に刺さる。
こんな状況で、気持ちを伝える事になるなんて。

「……三蔵の事が、好き…、だからじゃん……」

「……なら構わんだろう。」
「、なにが…!?」

一世一代の告白をしたのに、コントの様なツッコミを入れる事になるなんて。
秘めた気持ちを伝えたななし1はどこかスッキリした気分ではあるが、想いを言ってしまった緊張がぐちゃぐちゃに入り交じり、恥ずかしさから顔を手で覆う。

「…もー、こんなハズじゃ無かったのに…、」

「……それくらい良いだろ。」
「良くない、…それくらいって…」

枕に顔を埋めんばかりのななし1が言えば、三蔵はななし1の肩を押して体を仰向けにさせる。
そのまま覆い被さる様な体制をとり、ななし1の片手を取ると指を絡めた。
顔の赤いななし1が視線を游がせれば、三蔵の空いた片手がななし1の頬を撫でる。

「…ななし1、」
「…さ、三蔵…?」
「一回しか言わねえから良く聞け。」
「……、」

三蔵の真っ直ぐな瞳がななし1を捉えれば、ななし1は目を反らす事が出来ずに、三蔵の瞳を見返す。

「…ななし1が好きだ…。」

「……っ、」

覆い被さる三蔵の顔が、ななし1の顔に近付いていく。
瞳を閉じる事が出来ないななし1と真剣な顔の三蔵の唇が触れるか触れないかの距離になる。

「……私も、三蔵の事が好き…。」
「…あぁ、分かってる。」

ななし1の頬に添えられた三蔵の手が少しだけ力を込めると、ななし1の顔を逃がせない様に固定した。
そのままななし1の唇をついばむ様にキスをする。最初は優しいキス。

「……ん、……んう、」

流石に体が強ばったななし1も、何度も角度を変えて啄まれるキスに体の力が抜けていく。
時より、チュ、とリップ音を響かせながらされる、薄く柔らかい三蔵の唇。
ななし1はだんだんとうっとりしながら、体を三蔵に預けていく。それを良いことに、三蔵からのキスはより深いものへと変わっていくのだった。

「んぅ、……ん、…はぁ……ん、…ふぁ、」

「ななし1、舌を出せ、」

「…ふぇ、……ん、……あっ、」

三蔵は親指でななし1の顎を押さえれば、甘い顔をしたななし1が口を小さく開く。それを逃すまいと三蔵の唇が再度ななし1にキスをすれば、三蔵の熱い舌がななし1の口内に侵入する。
ななし1の舌先を刺激すると、三蔵の熱に驚き肩を震わせたななし1だったが、それも自然と受け入れ始め、段々と荒い吐息を上げ始めた。

「や、…ぁん、…っ、…ふぁ、ん、……んぅ、」

ななし1の体をまさぐる様に抱きしめながら三蔵が唇を離した。
トロリとした表情をしたななし1が三蔵を見つめれば、最後と言わんばかりにななし1の唇に軽く触れるだけのキスをする。

「……ななし1、そろそろ寝るぞ。」

「………うん……、あの…、」
「なんだ。」
「あの、……その、」

三蔵の言葉に返事を濁したななし1は、もじもじと三蔵の袖を引っ張った。
一向に言葉を発しないななし1に小さくため息をついた三蔵と目が合えば、ななし1の胸がこの上無いほど高鳴るのが分かった。

「…一緒のベッドで寝るんだよね…??」
「それ意外どこで寝ろってんだ。」
「う……うん…、」

ななし1の頭を撫でながら一緒に横になった三蔵がバサリ、と布団を体にかけてやる。

「……おやすみ、三蔵…、」
「…あぁ。おやすみ。」

三蔵の腕枕を受けながら、ななし1は目を閉じる。
当たり前ではあるが、高鳴る心臓を胸に寝れる訳がなかった。三蔵とキスした事がまるで数時間も前の様に感じるのは、もっと三蔵とキスをしたいと思ったからだ。かと言ってそれを口にする事が出来ず、ななし1はまたももじもじと三蔵の腕枕から落ち着かない様に動く。

「……ななし1、」
「……ん…?」

「次の街に着いたらこれ以上の事をするんだ、さっさと馴れろ。」
「……っ、」

ギシリ、とベッドを軋ませながら、これ以上ないほどななし1を抱きしめ、足を絡ませる。
そしてチラリと部屋のドアを見ると、ななし1の耳元に唇を寄せ囁くのだ。もちろん、それを聞いたななし1は耳まで熱くさせた。

「…今日でも良いんだが、生憎ドアの外にネズミが居るんでな…今日はここまでだ。」
「……ネズミ…?」
「分からなくていい。」
「……うん、」

「…キスなら、いくらでもしてやるよ。」

頬と頬がくっ付いている状態の三蔵が、顔を動かすとななし1の唇に自身の唇を寄せる。
吸い付くように唇が重なり、舌を絡め合う。ななし1も三蔵の舌に応える様に舌を絡ませた。

脳まで溶けてしまいそうな気持ち良さに、ななし1は次の街に着く前に死んでしまうかもしれない、とすら思うのだった。


夜はまだ長い。




(オイ、悟空、何か聞こえたか?)
(んー…大きな街がどうとかって!!)
(デケェ街だぁ…?…クソ、上手く聞こえねぇぞ…?!)
(二人とも??そんなにドアにもたれると危ないですよ…?)
(そーゆー八戒こそ、めっちゃもたれてんじゃん…!!)

END

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