×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -




慣れていく日常



『ただいまー。』

一人暮らしの部屋に独り言の様に呟く言葉
今まではそれに返事が返ってくることはなかった

だが、今はーー



「お帰りなさい、ご飯出来てますよ。あ、お風呂先にします?」

不審者。改めて、八戒が出迎えてくれる

あの日、八戒に脅され同居生活が始まった。



それから数日が過ぎた

しかもご飯から掃除、洗濯、お風呂…
何から何まで一人でやってしまう八戒はまるで家政婦の様だ

『……何から何まで、ありがとう。
けど、大変でしょ?私は大丈夫だから』

「大丈夫ですよ?僕が好きでやっているんですから。気にせず、甘えて下さい」

遠回しにペースが乱れる、と伝えたいななし1だったが、八戒にあえなく否定される
ニコニコと笑顔を浮かべている八戒を見て、ななし1は諦めるようにため息を吐いた

『………お風呂入ってくる。』

彼に何を言っても、口では敵わないのだ



ーーーーーーーーーーーー



「さて、片付けも終わりましたし…。
ななし1、明日の予定はどうなってます?」

八戒がキッチンから、コーヒーと紅茶の入ったカップを二つ持ってリビングに来る

ななし1は紅茶を受け取りお礼言って、携帯を見つめた

『明日もバイト、夜勤だから〜…、15時までには、家を出たいな。……で、明後日は休みだよ!』
「なら、明日の朝は起こさなくても大丈夫ですね、帰りは何時ですか?」
『多分…2時には帰れると思う』

朝は大丈夫です、と言うななし1
若干、このやり取りに違和感を感じないでいる自分に驚く

初対面の、家に住み着いていた男をすんなりと信用していいのだろうか…

悟浄に話せば激怒して、別れ話までいくだろうか
それは、絶対に嫌だ

チラリと横目で八戒を見れば、テレビを見ながら時たま笑っている


ーーピンポーン

突然、鳴るインターホンにななし1と八戒は驚いた
ななし1はアワアワとカップを流し台に置き、八戒はあのスペースへと身を隠す

周りを見渡し、八戒が隠れるのを確認してからななし1はドアに近づく

『今、開けますー!』

ドアを開けるとそこには悟浄が居た
いらっしゃい、とななし1は引き攣る笑顔で
悟浄を部屋へと入れる

『何か飲む?』
「あぁ、サンキュ。……ってか、誰か来てたのか?」

部屋を見渡たす悟浄に、男の勘か?と思ってしまう
内心ドキドキしてるのを悟られない様に平然を装った

『来てないよ。なんかあった?』
「いンや、俺の気のせいだわ。」

悟浄は頭をガジガジと掻きながらソファーに腰掛ける
ななし1はカップにコーヒーを入れて悟浄に渡し、隣に座った

『仕事は?落ち着いたの?』
「あぁ、だいぶな。それと、この前の事が気になって、二、三日泊まっていいか?」
『……え、……も、もちろん!嬉しい!』

そうだ!と大きな声に驚く悟浄
『コンビニ行こ?私、食べたいお菓子があるの!』

鍵を手にして二人は玄関を出る
鍵を閉めた所で、ななし1は財布を忘れたから待っててと悟浄を外に残し部屋へ戻る
勿論、財布を忘れたりなんかしていない
当然あのスペースの前にしゃがみ込んで、ひっそりと隠れている八戒に小声で話掛ける

『八戒?コンビニ行くからその間に三蔵の所にでも行ってて。悟浄は泊まる気でいるし、二、三日お願い!』

「えぇ、分かりました。」


ーーーーーーーーーーーー


コンビニから帰ってきたななし1はまず寝室のあのスペースを覗いて彼が居ないか確認した
そして居ないと分かれば悟浄が待つソファーに座って、恋人と二人っきりの幸せな時間を過ごす

『寒かったー。手、冷たい』

冷えた手を悟浄のホッペにくっ付ければ、悟浄はななし1の手の冷たさに身体が跳ねる

「どんだけ、冷てぇンだよ…。」
『冷え性だもん…。』

一緒に風呂入るかと悟浄がニヤリと笑う
ななし1は素直に首を縦に振った




お風呂で散々可愛がられ、ベットに行けば、まだやりたいって言う悟浄を、さっきもお風呂場でしたじゃん!と言ってななし1は布団に入る
悟浄は若干、不貞腐れながら一緒に布団に入った

『悟浄?明日は15時からバイトだから、大人しく待ってね、そしたら休みになるし』
「……。」

ななし1は不貞腐れる悟浄の頭を撫でると触覚がピクピクと動く

「なら、明日は覚悟しろよ…。」
『………考えとく。』


ーーーーーーーーーーーーー

深夜三時

思ったより仕事が長引いた

ななし1は急いで家に帰る
外からマンションのベランダを見れば
部屋にはまだ電気が付いているのがわかった

『ただいま。遅くなってごめん!』

勢い良くリビングに入れば、そこにはソファーで寝ている悟浄の姿

起きていると思っていただけにななし1は驚いた
そっと悟浄に毛布を掛けてやり、起こさない様にそっとシャワーをすませた



起きたら時計の針は、とうに12時を回っていた

ななし1はまだソファーで寝ている悟浄を起こして、買い物に行こうと誘う
まだ眠たげな悟浄の背中を洗面所へと追いやって準備をさせた




雑貨や服、飲食店の並ぶショッピングモールにつけばななし1は目をキラキラさせる

『見て見て、これ可愛い!』
「おー、ケッコー似合うんじゃね?」

試着してみるか?と言われ、ななし1は恥ずかしそうに試着室に入って行った

「……どうかな?」
「んー、ななし1の場合なら…コッチか?ちょと着てみろ。」
「うん、ちょっと待っててね!」

まるできせかえ人形みたいに服を持ってくる悟浄
その顔は真剣でいつも見ている悟浄の雰囲気と違い
ななし1はすこし恥ずかしくなってしまう

結局、最初の服と悟浄の選んだ服を一着ずつ買ってもらい、二人は食品のコーナーへとやってきた

カートに野菜やら肉、魚を入れていく

「そんなに買って大丈夫か?」

食材で溢れていくカート
気にせずどんどん食材を入れていくななし1
悟浄はカートを見つめ心配そうにしているが
ななし1は大丈夫、と会計をすませていく





家に着いた頃には日がすっかり落ちていた
悟浄は沢山の荷物を部屋に入れて片付けを手伝ってくれる
そんな頼もしい姿を見ていれば悟浄がななし1にこう言うのだ


「じゃあ、そろそろ帰るわ。そーいや、もう変な事起きてねぇか?」
『……うん、大丈夫っ!』

悟浄はなら安心だとななし1の頭をわしゃわしゃと撫でる

「じゃ、またな。」
『うん、ありがとう。またね!』

ちゅっ、と悟浄のホッペにキスをすると照れた様に笑うななし1


バタンとドアが閉まる

悟浄は寒いと肩を窄めてマンションのエントランスを出る
すると前から見覚えのある影が近く

「八戒じゃねーか、久しぶりだな」
「……あぁ。悟浄久しぶりです、こんな所で会うなんて奇遇ですね」
「ここに住んでのか?」

マンションを親指を指す

「えぇ、まあ…。」

悟浄が不思議そうに聞けば、八戒は少し濁しながら答えた

そんな八戒の顔をふーん、と流しながら、悟浄は駅の方へ、八戒はマンションへと帰って行った

八戒の背中を悟浄が横目で見てるとは知らずに



to be continued…

[ 66/76 ]

[*prev] [next#]