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些細な変化

最近、冷蔵庫や棚の中から食べ物や飲み物が無くなっている様な気がする

それが毎日じゃなくて…

例えば、ストックしてあるお菓子の中から、いつ買った?と思う様なお菓子がいつの間にか、なくなってる感じ…
捨てたのか、食べちゃったか分からないレベルの些細な変化

それが、一ヶ月ほど前から続いている

今日もまた、この嫌な変化に気づく

『あれ?確かに、ここにカレーのストック置いてあったハズ………なんだけど?』

ななし1は今晩の夕飯をレトルトのカレーにしようと棚の中にあるハズのカレーを探す


無い。

絶対おかしい。

いや、この前のゴミで捨てた可能性もある。


『泥棒…?食べ物だけ盗むとかアリ?』

一人暮らしのななし1が独り言を呟く
これが泥棒なら常習犯だ、それ以上に気持ち悪くて仕方ない
でも貴金属が無くなっているとかは無いし、とにかく違和感が凄い
いろいろと考えていると怖くなったななし1は、恋人の悟浄に電話を掛けた

『あ、もしもし?あのさー、今日、何してる?
よかったら家に来てくれない?』

悟浄は恋人の誘いに、すぐに行く、と返事をして電話を切った


ーーピンポーン


しばらくしてからインターホンが鳴り、ななし1はドアを開けて悟浄を出迎えた

『いらっしゃい!』
「おぅ…どうした?」

ななし1は悟浄を迎えるなりギュッと抱きつく
突然の事に驚いた悟浄だが、すぐにななし1の背中で手を回す
そんな優しさに、胸に顔を埋めて黙り込むななし1

「大丈夫か?」
『大丈夫…ちょっと、不安になっちゃって』
「俺にか?」

悟浄が冗談っぽく言うから、なんか可笑しくて、
ななし1はクスクス笑う

『違うよ、悟浄に不安はないよ!』
「やっと笑ったな」
『ありがとう!』

ようやく2人はリビングに行き、ななし1は悟浄にコーヒーの入ったマグカップを渡す
そして、ななし1は気になっている、あの事を話し始めたのだった



「……マジで?ななし1の気のせいじゃねーのか?」
『だと、いいんだけど…』

軽く顔の引きつる悟浄を見て、そういえば、この手の話は苦手だったな、と苦笑いするななし1

『あ、それより今日は泊まってくよね?』
「いや、明日早いんだわ、悪ぃーな」
『そっか…残念…。』
「…その代わり…」

悟浄はななし1の腰に手を回して引き寄せた

唇が触れるか触れないかの位置で止めると
じれったいと感じたななし1が悟浄の唇にキスをする

『ん…はん…ぅん…』

「気持ちヨクしてやるから…さ?」

にやりと笑う悟浄とそのまま快楽に沈んでいった


ーーーーーー


ーーーー


ーー



事情後の気だるさでベットに体を埋めるななし1と悟浄

悟浄が時計を見れば23時を過ぎた頃だった

「やべぇー、もうこんな時間かよ!もっと一緒に居てぇんだけど…悪ぃな!」

悟浄は、ななし1のおデコにキスをすると、散らばった服を適当に着て部屋を出ていく
一人ベットに残ったななし1も、悟浄を追うように一番近くにあった服を着た


「またな、あんまり気にすんなよ!あと、ちゃんと戸締りしろよ」
『うん、ありがとう…』

今度は唇にキスをして別れる
ドアが閉まったのを確認してななし1は鍵をかける
何回も確認してリビングに戻るとため息をついた

気にするな…とは言われたものの、一人になれば
嫌でも考えてしまう

すると突然、寝室からドンッ、と大きな音がした
ななし1は肩を大きく震わせ寝室の方を見る

『な、何?!……泥棒……?』

(そうだ、携帯!今ならまだ悟浄が…あ、携帯…寝室だ…)

ななし1は恐る恐る寝室の扉を開ける


そこにはキラリと丸みを帯びた何かが光り、音もなく佇んでいる大男
怪しげな笑みを浮かべているその姿にななし1の体は恐怖で鳥肌が立った

『だ、…誰ですか?』

そのまま音もなく、ゆらゆらと近づいてくる不審者

『近づかないで下さい!け、警察呼びますよ?!』

ななし1は寝室の扉を挟んで顔だけを出す
そして、涙目で訴えると彼の動きがピタッと止まった

「すみません、怖がらせるつもりは無かったんですが…」

不審者はななし1の想像とは違い、かなり優しい声を返してきた

「僕は八戒と申します、訳あってここで隠れて暮らすようになってしまい、本当に申し訳ありません」

『………どうやって入ったの?』

ななし1は怯えながら疑問をぶつける

「このマンションの管理人とは知り合いでして…訳を話したら、ココに押し込められてました、あはは」

(〜〜ッあの生臭坊主めッ!!!)

ななし1と管理人もとい、三蔵とは昔からの知り合いだった
このマンションも三蔵の好意で借りられている訳だが…

『……訳って何?……なんでココに押し込められなきゃ、いけないの?』

「いや〜いろいろあったんですけど、最終的にヤクザに喧嘩吹っかけちゃいまして、僕…」

追われてる、身なんです、と笑って答える八戒に大丈夫か?コイツと不安になるななし1

「住所とかあると直ぐにバレちゃうんですよね…」

だからって、なんで私の家なの?!心の中で叫ぶななし1だったが、それは知らぬ間に口から漏れる

「ここに小さなスペースあるのご存知でした?
多分、以前の住人が作ったと思うんですけど…」

八戒は今まで自分がいた場所を指を指す

『え?……知らない。初めて見た……。
じゃあ、三蔵はコレを知ってて?』

やっと寝室の扉から離れたななし1は八戒が指を指したスペースを覗く

それは、想像よりは広いが、男一人がやっとのスペースだった
ましてや、身長のある八戒には狭すぎるであろう


「行くトコもありませんし、ココに居候させて貰えませんか?」

有り得ない事を言う八戒にななし1は目を丸め、即答で返事を返す

『無理です!早く出て行ってもらえますか?』
「それは……困りましたねぇ、」

八戒は眉を下げて顎に手を置いて考える
八戒の棒読みの様な"困った"の言葉に本当に困ってないだろ、と思うななし1
やはり八戒は平然とした顔でごそごそと何かを取り出した

「あ!これ、見てもらえますか?」

ななし1は八戒からデジカメを渡されば、八戒が再生のボタンを押す
何かとななし1はデジカメの画面を覗き込むとそこには、


ーーあっ、…悟浄、ムリッ!…ぃっ、イッちゃう!


『〜〜〜ッ!!!!』

「これ、ネットにばら撒いてもいいんですけど、どうします?」

自分と悟浄のあられもない姿がしっかりと収まっていて
恥ずかしさから顔が赤くなるななし1
同時に隣に立つ八戒の笑顔に、本能的に逆らえないと悟ったのだった




『………同居します。』

こうして、ななし1は八戒との不思議な、いや、強制的な同居生活が始まった


to be continued…

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