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想いを込めて



ーーー八戒、料理教えてほしい

ななし1の一言から始まった料理レッスン


普段は悟空と同じで食べる方に回るななし1が
まさか自分から料理を覚えたい、なんて何があったのかと
思いを巡らす八戒

二つ返事で了承したのだが、知らない誰かの為にと思うと
気が進まない

宿の亭主にキッチンを貸してほしいと言えば、使った物をちゃんと戻してくれればと渋々、承諾をしてくれた


『ねぇコレでいいの?』
「えぇ、合ってますよ、ななし1案外器用なんですね」
『案外、は余計でしょ?』

野菜を切りながらななし1は八戒に確認をする
料理は苦手と言っていたななし1だが、それなりに出来ている事に驚く八戒

「ななし1は料理を覚えて誰に振る舞うんですか?」
『それは…。な、内緒!』

顔を少し赤くさせて笑うななし1に八戒は心がモヤっとするのを感じた
ななし1にこんな顔をさせて、料理食べさせたい男に嫉妬する



三蔵だろうか、最近よく一緒に居るのを見かける

悟浄って事もあり得る、暇さえあればななし1を口説いている、ななし1が本気になってしまったのか

まさか、悟空…純粋で、可愛いが、それとは異なり男らしい一面があるだけに侮れない

そんな事を考えている八戒にななし1が声を掛ける



『八戒、次は何するの?

ーー八戒?八戒ってばっ!』

「あ、すいません。これはこうするんです」
「わかった!」
「僕は、こっちのを切っておきますね」

八戒は、あれやこれやと考えていたら指が滑り、包丁が指を掠めた

「…ぃっ、」
『大丈夫?見せて?』

八戒の指からジワっと血が滲む
ななし1はなんの躊躇もなくパクっと八戒の指を咥えた
その行動に驚いて少し身体が跳ねる八戒

「ななし1?!何してるんですか?!」
『ふぇ?こうすると、早く治るって…』
「…ッ、咥えたまま、喋らないで下さいッ」

チュッと音を離れる唇
上目遣いで見上げてくるななし1が、まるで夜のアレを彷彿させる様で、八戒は焦る

それな煩悩を振り払う様に料理の続きをしようと
無理矢理でも気持ちを切り替える



ーーーーーーーーーー



『出来たぁ!!』

テーブルに並んだ料理に満足気に笑うななし1
八戒のお陰だよ、とお礼を言うななし1に八戒は
素直に喜べないでいた

『喜んでくれるかなぁ…』

ポツリと呟いたななし1の言葉を八戒は聞き逃さなかった

ななし1を見れば、心の中に居る誰かを想う、優しい笑顔で料理と向き合っている。
それを見た八戒は、プツンと、心の中で何かが切れた気がしたのだ

「きっと喜んでくれますよ。ななし1がこんなに頑張ったんですから。……ですが、これだと僕の味付けになってますからね。それでその人が満足なら良いんじゃないですか?」

『い、いいよ、慣れてこれば…私の味になるでしょ?』

まさか、八戒からそんな言葉が来るとは思っていなかったななし1はオドオドと返事を返し俯く

八戒は俯いてしまったななし1に本当はこんな事を言うつもりは無かったのにと後悔するが、後の祭りだ

『………だもん…。』
「……え?」
『……八戒と料理…作りたくて…食べてほかったんだもん』

顔を上げたななし1は涙目で八戒を睨んでいた

「……僕の為ですか?」
『…そう、私が料理を覚えれば、八戒も少しは楽が出来るし、覚えるなら八戒の好きな味が良かったの』

八戒はななし1の気持ちを聞いて思わず抱きしめた

まさか、自分の為に料理を覚えてくれようとしていた
なんて夢にも思っていなかったからだ

「すみません、まさか僕の為だったとは思ってもいませんでした。先程の、許してもらえますか?」

抱きしめ腕に力が入る

『許さない…ちゃんと、料理が上手くなるまで教えてくれなきゃ、イヤ』

背中の服をギュッと掴むななし1に今までに感じていた黒いモノが消えて行くのを感じた

『あっ、料理、冷めちゃう!味見して』

パッと顔を上げて八戒を見る
そうですね、と箸を運ぶ八戒を不安そうな顔で見つめるななし1

「美味しいです、僕の好きな味ですよ」

その言葉に安心する、そして

『これからもよろしくお願いします』

ななし1はそう言って笑った


END

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