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くじ引きと添い寝編



一行は、小さな村に辿り着いた。

決して豊かとは言えないが、活気の溢れる村だ。村のあちらこちらから機織り機や、ガラ紡機が見えてくる。聞けば、この村は繊維業が盛んで、女が紡ぎ織り成された糸や布は男達の手によって他の街に売られて行くそうな。

前に立ち寄った街で、同じ様な柄の織物を見ました、とななし2が言えば、仕上げた織物を持った老婆がこの村の唯一の特産なのだと教えてくれた。



「ベッド二つってマジかよ!!」

夕方、一行は夕食を食べに村一番大きな料理屋に入っていた。
机をバン、と叩いて大声を出す悟浄に、その場に居た誰もが心配そうに一行を見た。

「落ち着いてください、悟浄。皆さん怖がってるじゃないですか…」

話を最後まで聞いてください、と八戒が言えば、悟浄は周りの視線をばつ悪く感じ、悪ぃ、と椅子に座る。
悟浄の隣でおかずをつまむななし2がドンマイとでも言わんばかりに、悟浄の取り皿に唐揚げを置いた。


村に到着してから明日の出発に備え、一行は宿の手配をする担当と、食料や日用品の買い出し担当に別れて行動をしていた。
宿の手配に八戒、悟空、ななし1。
食料等の買い出しに三蔵、悟浄、ななし2。

宿手配担当の八戒は、仕方がないでしょうと湯飲みに入ったお湯割りを飲み干して言う。

「部屋は取れたには取れたのですが、二部屋しか空いていませんでした。さらに各部屋にはベッドが二つ。両部屋合わせても、ベッドが二つ、どうしても足りないんです。……あ、すみません、同じお湯割りお願いしまーす。」

「この村、あまり人が泊まったりする事が無いのと、この村の先にある山村の人が、悪天候で自分の村に帰れないみたいでさ、部屋が足りなかったの。でも、古いソファーがあるから、部屋に入れてくれるって言ってたよ!」

一緒に手配をしていたななし1が宿の女将に言われた事を皆に話し、何とか雑魚寝は防げるねと笑顔で言った。

「〜っても、どうする?今日の部屋割り、全く決めてねぇぞ。」

ビールを片手に、悟空に蹴られなきゃ何でも良いと話す悟浄。悟空がわざとじゃないから仕方ねーじゃん!!と噛みついた。
そのままポカポカと喧嘩に発展している二人を他所に、八戒はごそごそと何かを取り出した。


「そんな訳で、今日はこれで部屋を決めたいと思うんです♪」

彼が手にしていたのは、6本の紙切れ。
先端を八戒が握り、握られた拳から紙切れが人数分出ている。
そう、くじ引きである。

こんなものいつ作ったの八戒?と問うななし1に、八戒は笑顔で企業秘密です、とさらりと答えた。
各々が自分が引く紙を選ぶと、三蔵以外のメンバーはゴクリと息を飲む。

(((((三蔵とだけは相部屋になりたくねー!!)))))

彼はこんな状況においても権力の乱用、自己中心的なのは全員が知っている事。
必ず、絶対、ベッドで寝るに決まっている!!
全員がベッドで寝たいのだから、三蔵以外の部屋になればベッドで寝れる可能性が高くなる!!

メンバーが全く同じ事を考える中、痺れを切らした三蔵がいくぞ、と声をかける。
目を光らせた悟浄が、大きく口を開いた。

「ぁ、せーの!!」

うらさi

「「違う違う違う違う!!!!」」

空から聞こえてきた何かに、焦ったななし1とななし2が勢いよく制止をかけた。
それぞれが紙を引き抜き、今夜の部屋割りが決まった。


紙の先端が赤く塗られた紙を持っていたのは、
ななし2、悟浄、三蔵

逆に何も塗られていない紙を持っていたのは、
ななし1、八戒、悟空


「…あれっ、昼間のメンバーと一緒じゃん!すげー!!」

「凄い偶然だね!!やったね、悟空!!」

ベッドで寝れる確率が高くなった悟空とななし1は、こんな偶然もあるんだー!!と二人して喜ぶ。


一方、赤く塗られた紙を引いてしまったななし2は、悟空に自身の春巻きをあげるよ〜と誘い、口を開いた悟空に春巻きを食べさせる。その代わり、部屋を交換してくれないかと話を持ちかけると餌付けをするな!と三蔵にハリセンでスパァンッと叩かれた。

「あぁ〜、ヤダヤダ、どうせ三蔵サマがベッドを占領するんだろ?」

引いてしまったクジをヒラヒラと指で遊ばせる悟浄は、どうしたもんかと背もたれに体重をかける。
当たり前だ、害虫は害虫らしく床で良いだろ。と酒を呑む三蔵。
分かってはいたが、慈悲も何もあったもんじゃない、と悟浄は口を開く。

「んなこと言いなさんなって………あ、ななし2、今日は一緒に寝て良いか…?」
「うん??変な事しなければ別に構わないよ??」
「やりー♪…ってマジかよ!!!」

半分冗談で言った言葉は、杏仁豆腐に手をつけていたななし2に肯定された。
ななし2はレンゲを口にし、隣の悟浄を見る。
ポカンと呆気にとられ固まる悟浄をバックに、衝撃的な会話を聞いた四人がこそこそと話し合う。

「おい…あれでヤってねぇは無ぇだろ…」
「……本人達は付き合ってないそうですが…どういう了見なんですかね?」
「俺、ななし2が悟浄の事を男として見てないと思うんだ。」
「ぇ、違くない??何か、オトナな関係って感じで…」
「ななし1、その話は後にしましょう。」

これ以上は悟空の教育上良くありません、とななし1の会話をピシャンッと遮った八戒。
ごめんねと苦笑するななし1と、意味が分からずキョロキョロする悟空。

三蔵は情けねぇと、一言、煙草に火を付けるのだった。


――――――――――


宿に戻り、明日の出発に向けて食堂で飲み明かす一行。
昼間は別々に行動をしていたのもあり、この村でこんな事があっただの、こんな風習があるらしいだの、酒を飲むながら駄弁り合う。
基本、悟空はご飯の話しかしないが、今日はこれを貰ったんだ!と村の子供から貰った綺麗な小石を皆に見せびらかしている。
ななし2とななし1は、この宿の女将が漬けてくれた果実酒を飲み比べしては、女子の会話に花を花を咲かせていた。


時間時間が経ち、 どんどん酒が進んでいく。
良い具合に出来上がっている一行の会話は、

この酒旨い、エイヒレ最高、おやつのポテチ食べよう、この間襲ってきた妖怪のリーダーが誰かに似ていた、八戒のモノクルは意味があるのか、みかんの皮を剥いた時にある白いスジは取る派か、靴下って何でか片方揃わなくなる、お正月はガキ使派か紅白派か、そう言えばさっき聞こえてたうらさiって何だ、みかんと海苔と醤油でいくるになるよ、雨の日に居る巨大ミミズは何処から出て来るのか、ブルーチーズの美味しさがわからない、何故丸角やファミレスの店員はオーダーを一気読みするのか、煙草無くなったから部屋まで取りに行くじゃんけん……

………どんどん、グダグダになっている。


―――


悟空が眠たそうに目を擦ると八戒は、壁に掛けられた時計を見た。
おや、もうこんな時間ですか、と日付を跨ぎそうな時間に気付き、そろそろ寝ましょうかと悟空を部屋に誘導する。
このまま僕も寝ますので部屋に戻ります、と席を立つ八戒に、ななし1は私も!と席を立ち、残るメンバーにお休み!と挨拶をし、早に向かう二人の後を付いて行くのだった。
おやすみなさい、と挨拶をした八戒は残る三人に、明日は早いから夜更かし厳禁ですよ、と念を押して部屋に消えて行く。


おやすみ、と手をヒラヒラ振るななし2と悟浄。同じ足の組み方、同じセリフ。
あまりにも行動がシンクロする二人に、酒を吐き出しそうになった三蔵がハリセンを振るった。


―――――――――



「結構飲んだなぁー♪八戒は飲んでも全く変わらないね?」

「そうですねぇ、意外と酔ってる事もあるんですが、顔には全く出ないんです、僕。…あぁ悟空、部屋はこっちですよ!」


部屋まで戻る中、ななし1はうん、と伸びをした。
お酒の酔いから、普段は緊張して話すことが出来ない八戒とも、話が弾む。
二人してニコニコ歩いていれば、寝惚けた悟空が壁に向かって歩くものだなら、ななし1は慌てながら悟空を止めるのだった。

ドアを開け、部屋に着き、早々と悟空はベッドにダイブする。
まだ誰がベッドを使うか決めてないよ、とななし1がベッドに寝転んだ悟空を揺すも、

「……悟空、……もう寝ていますね。」

「うん、…何だか、ちゃっかりしてるよね…」

流石、悟空と驚きと感心するななし1。
悟空の睡眠の邪魔にならないように、少し小声で会話をする二人。

さて、困りましたね、と八戒が少しため息をつく。
部屋の両端に設置されたベッドと、その間に狭苦しく置かれたソファーは、少しキナ臭い。

「僕がソファーで寝ますので、ななし1はベッドを使ってください。」

「、八戒は運転あるから、私がソファーで寝るよ!…妖怪達と戦ったりしないし、身体も小さいし、問題ないよ…!」
「それでも、女性の身体にこのソファーは少し堪えるでしょうしーー………」

八戒は腕を組み、口元に指を当てて思考を巡らす。
少し意地っ張りなななし1の事だから、どれだけ疲れていてベッドで寝たくても、気を遣って八戒をベッドで寝かそうとするだろう。きっと、彼女は意見を曲げない。
かと言って八戒も、ななし1をわざわざ狭いベッドで寝かせるのは自身のポリシーに反する。
いつも野宿ばかりな旅だ。一日くらいソファーになるのは、なんら苦ではない。むしろ屋根はあって雨風へ凌げるし、誰かが見張りや火番をして起きている必要もない。

どうすれば、ななし1をベッドで寝かす事が出来るのか。


(『 …あ、ななし2、今日は一緒に寝て良いか…?』)


ふと、先刻の悟浄が言った言葉が八戒の頭を過った。

―――コレだ、と八戒は不敵な笑みを浮かべる。


「……ななし1、僕と一緒に、寝ますか…?」


いきなり言われた言葉に、ななし1の呼吸が止まる。
ななし1が驚いて顔を見上げれば、いつもより艶やかな笑みを浮かべる八戒と目が合った。
身体中の血液が、顔に集まる様な感覚に襲われる。


「………八戒となら、……いいよ…」


見つめ合う瞳が、ゆらゆらと揺れる。

いつもだったら、こんな冗談は言わない八戒が、
いつもだったら、こんな顔をしない八戒が、
いつもだったら、こんなに見つめ合わない八戒が、

そう思考を巡らせていたななし1だったが、思考とは裏腹に、口は勝手に、素直に八戒を受け入れる。
それを聞いた八戒は、満足そうにニコリと笑い、寝る支度を始めた。


―――


寝仕度が済み、ななし1は先にベッドに入っていた。
八戒が来るのを、今か今かと待っている。
何故こうなったのかと、煩い心臓を落ち着けながら考える。
酔っ払った勢いであんなコト言うから…!!
嬉しさと恥ずかしさが入り交じる中、ななし1は枕に顔を埋めた。

洗面所のドアが開いて、八戒がやって来た。
ななし1は咄嗟に仰向けになり、布団を両手でぎゅッと握る。

「まだ寝ていなかったんですか…?」

「…うん、ちょっと、緊張しちゃって…」

変な感じだねと苦笑するななし1。
八戒はベッドに近づき、モノクルをナイトテーブルに置いた。そのまま、ベッドの縁に手をかけ、ゆっくり布団に入ってくる。


八戒の過重を受けて、ギシッと軋むベッド。


身体を横たわらせ、右肘を立ててななし1の方を向く八戒。
荒ぶる動悸を、細かな呼吸で落ち着けるななし1。先程の言葉を思い出しながら、力の抜けた笑顔で八戒に笑う。

「八戒も、大胆なところがあるんだね…」

「………ななし1、」


そっと八戒が、左手をななし1に伸ばす。ななし1は何事かと、思わず目を固く瞑った。

するり、と八戒はななし1の眼鏡を外す。そして、自身のモノクルを置いたナイトテーブルに眼鏡を置いた。
未だに固く目を瞑るななし1に、八戒はクスリと微笑む。
ごそり、と少しだけななし1との近くに寄る八戒。
そのまま少しだけ近付いた耳元で、そっと囁いた。


「………ななし1、そんな顔したら……勘違いされちゃいますよ…?」

ビクンッと身体を跳ねさせたななし1が、恥ずかしそうに自身の髪を手櫛でとぐ。


「…………八戒だったら、良い、って、思う…」


やはり、へらりと笑うななし1。
色っぽいなぁ、と、少し蕩けた様な目で八戒を見つめた。
窓から照らす月明かりが、八戒を妖艶に照らしている様に見える。
寝間着から見える鎖骨や、普段身に着けているバンダナや、モノクルが無い姿は、滅多にお目にかかるモノではない。
とても得をした気分だ…、とななし1は肩をすぼめ、布団をきゅッと握ると、頭を少しだけ八戒ち近づけて目を閉じる。

そっと、ななし1の頭に何かが触れた。くすぐったさに、んむ、ななし1が目を開ければ、ななし1の髪を撫でている八戒。乱れた髪の毛を直す様に、前髪を流し、横髪を耳にかけ、その指で顎のラインなぞる。

撫でられるのが気持ち良さそうに八戒にすり寄れば、まるで猫を撫でるかの様に優しく扱ってくれる。
ふと、目を開けば、月明かりに照らされた八戒と、目が合った。



ぁ、と漏れた声。
そのまま覆い被さり、体重をかける様に、ゆっくりとななし1の唇に自身の唇を重ねる八戒。
薄く柔らかい熱が、ななし1の唇に伝わってくる。
覆い被さられた際に、布団を強く握ってしまったななし1も、口づけが長くなるにつれて少しずつ身体の力が抜けていく。


小さくチュッと唇が離れると、これまでに経験をした事の無いほど顔が近い八戒。
煩い鼓動にを押さえながら、肩を小さく上下に揺らすななし1は、どこか名残惜しそうな顔をして八戒を見つめる。

そんな表情を見た八戒は、再度ななし1の頬を撫で、もう一度覆い被さるのだった。


「……っんぅ、………は…ん……ぅ…」


八戒がななし1の顎を親指でクイッと上に上げ、唇をペロリと舐めれば、少し開いた唇に自身の舌を入れて絡ませていく。
角度を変えながら何度も口づけられ、ななし1は声が漏れない様に必死に耐えるも、小さい吐息が漏れてしまう。

唇を離した八戒が、ななし1の耳元に唇を寄せる。
ゾワリ、と耳元にきた快感に、小さく息を漏らす。耳元で聞こえる、八戒の息づかい。


(…そんなに男を誘う顔しちゃダメですよ……)


さらに囁かれ、ゾクッと身体を震えた。
八戒は耳元から顔を話すと、覆い被さる状態まで身体を戻す。

「…今度は、二人っきりの時に……」


そう優しく囁く八戒は、ななし1の髪をとく様に撫でた。
お酒の酔いもあってか、身体中の血が沸騰寸前なななし1は、冷たい八戒の手に顔を擦り寄せる。

八戒はななし1の横に寝転がり、彼女を抱き寄せた。そのまま額にキスをすると、八戒の手が気持ち良かったのか、気を失ったか、静かに寝息をたてるななし1。

すぅすぅと聞こえる寝息に八戒は微笑み、そのままななし1と自身の足を絡め、宝物を抱くように目を閉じた。


―――――――――

――――――

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「うわー、八戒ってばやるぅ…!」
「コイツもちゃっかりしてるよなぁ〜」

酒が足らなくなり、部屋に忍び込んだななし2と悟浄は、ひそひそと話をした。

悟空は相変わらず大の字で芸術的な寝相を作り上げる。方や八戒とななし1はお互い身を寄せ合い、しっかりと身体をホールドする八戒。

ニヤニヤした二人は、ちゃっかりお酒を拝借し、三蔵へ酒のつまみにと部屋を出ていった。



end

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