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「#エロ」のBL小説を読む
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当て馬達と髪飾り編




「ななし2さん、少しお話したい事が…」

「私、何かしました?」

「いや、ななし2さんに問題がある訳ではないんですが。…少しいつもの事で気になる事がありまして…」
「あー、いいよ。仕分けが出来たらそっちに行きまーす。」

今夜の宿も、無事に取れた。そして宿の食堂で昼食を取り、一段落。
居間で悟空は、今日も元気に食後の肉まんを口いっぱいに頬張っている。
そのテーブルで喫煙組が一服をする中、先程市場で買ったばかりの日用品をテキパキと仕分けるななし2に八戒が話しかけた。
ななし2が返事を返せば、八戒は分かりました、と割り振られた部屋へ足を進める。
割と普段の光景ではあるのだが、ななし1は部屋に向かった八戒の後ろをジッと見つめていた。


間もなくして、仕分けが終わったななし2も軽く一服をし、自身の煙草を揉み消し終われば八戒の居る部屋へと向かって行く。

そんな二人の背中を見ていたななし1は、つまらなさそうに小さなため息をついたのだった。



――――――――



「ねー、悟浄…。八戒ってななし2の事、トクベツだったりするのかなぁ…?」

「……へぁ?何だってそんな事気になるんだよ?」


しばらくして、ななし1は重たい口を開いた。

三蔵は行きたい場所がある、と言い悟空と一緒に街に繰り出している。
唯一、居間でのんびりする悟浄に向けられた言葉。
突然の素っ頓狂な質問に、目を見開いた悟浄。


「だって、八戒って何かあったらすぐにななし2を呼んでるし…。かれこれ6回目だよ?八戒がななし2を呼び出すの!私にはなんにもそういう事無いからさぁ…」

「お前、随分と細かく数えてんのな。…まぁ、どーせ食材の買い出しの話とかそんな大した話じゃないだろ。」

「そうかなぁ?でもそんなの私達がいる所でも出来る話じゃない??」

それなのに何で二人でー…と言葉を濁したななし1。悟浄は煙草に火を点けて、煙を深く吸う。

悟浄は何故ななし1がこんな質問をしたのか、大体察しがつく。

ーーーきっとこれは恋。

人の恋愛にとやかく言う気は無いが、相手はあの八戒ときた。
悟浄としては、折角の恋を応援をしてやりたい気持ち半分、くっ付いたら面倒くさい(あと悔しい)気持ち半分、
……いや、3:7程度の割合でしか考えておらず、互いに頑張れ。と言うスタンスでいるのが妥当だろうと考えている。

…ただ残念ながら、今回は3割の応援側ばかりの役になる事を、彼はまだ知らない。


「そんなに気になる事なら直接本人に聞けば良いじゃねーか?ななし2とも長い付き合いなんだろ?」

「それが出来たら苦労してないもん!だから、悟浄に聞いてるの!それこそ悟浄だって、八戒とし暫く一緒に住んでたんでしょ?だから何か知ってるかなって思って…!!」

「………まぁ、お前が思ってる様なカンジじゃないと思うぜ?八戒にゾッコンになるくらいならこの優しい悟浄お兄様にしておくか?」

ニカッと不敵な笑みを浮かべた悟浄。
まだそんな事言ってないのに…!!と赤面したななし1は、悟浄の太ももをペシッと叩いた。
ただ、「トクベツ」かどうかをはぐらかされた事と、廊下の奥、あの二人が居る部屋がどうしても気になるななし1だった。



――――――――――――――――



「…今度は何があったの、八戒。」

気になる二人、八戒とななし2。
八戒と悟空の部屋に居る二人は、小さめのテーブルと椅子に腰掛けて話していた。


「いやねぇ、非常に面目ないのですが、いつもの話とは別に渡す物がありまして。」
「んじゃあ先にいつもの話をお願いします。」

間髪入れずに答えるななし2を、少し三蔵に似てきていると苦笑した八戒は、居間から運んできた湯飲みに急須でお茶を注いだ。
ななし2は淹れて貰ったお茶に口を付けながら、八戒の話を聞く。


「……さっきの買い出しでななし1、髪飾りを見てたんです。」
「あぁ、見てたね。シンプルなべっ甲のやつ?」

「はい、それで彼女、髪の毛が長いでしょう?プレゼントで渡したらどうかと思いまして。」

「良いじゃん。プレゼントしなよ!」

「……とは言え、僕一人からのプレゼントみたいにするのも団体行動としては、いささかどうかと思うんです。」

八戒もお茶を飲みながら、少し神妙そうな顔つきで言葉を紡ぐ。
ななし2は話を聞きながら、八戒に煙草を吸っても良いかの許可を取る。
はいどうぞ。と用意された灰皿と、開けられた窓。
ななし2は煙草の煙を肺に入れ、フゥっと窓の外に煙を吐き出した。


「それにななし1は僕の事を苦手に思っているのか、あまり話をする事が無いので……助言を頂ければと思いまして……。」


少し落胆したように苦笑する八戒に、ななし2もあはは、と苦笑しながら小さくため息をついた。
…我ながらお節介役が板についたもんだ。と内心思うのだが、あの八戒がななし1の事を想い人として相談しているのだから、と口を開く。

「じゃあ…プレゼントまではいかなくとも普通に良かったら使ってくださいって言えば良いじゃないですか。『ななし1に似合うと思って買ったんです、良かったら使って下さい♪』とかさぁ。プレゼントも出来て普段より話も出来るんですからwin -winですよ。それに……」

八戒なら簡単でしょ?と言いそうになったが、ななし2は咄嗟に口を閉じた。
言いかけてしまった言葉は、煙草を吸って誤魔化す。

そもそも八戒がななし1と話を出来ていればこんな二人っきりの密会の様にしなくていいのだから。
それこそななし2は最初、八戒からの突然の願いに何事かと驚き、戸惑いもした。他のメンバーからは恋人疑惑が一度浮上した程だ。
なのに、その密会の内容は、ななし1の好き嫌いだとか、ななし1の服のサイズだとか、口を開けばななし1しか言わない。今回だってそうだ。

正直面倒だと言ってしまいたいが、今回ばかりはプレゼントしたい、と言う八戒の初の試みに、どうしても良心が痛んで応援してしまうななし2だった。


「それもそうなんですが…喜んでくれるでしょうか…?」

「大丈夫!!八戒に言われたらななし1は絶対に喜びますって!女の子は気取った物より、さり気ないプレゼントの方が嬉しかったりもします。」

「難しいですねぇ、女心と言うのは。僕もまだまだ勉強不足です。」

「いや、八戒は男だしね、分かったら逆に引きます。髪飾り渡すなら二人っきりにするとか協力するのでまた言ってくださいね。」

最後に、参考程度にしておいてよ!と、毎回密会がある度に言う決まり文句を釘刺すと、八戒からは恩にきりますと少し照れた様に笑顔が返って来た。
その笑顔を見たななし2も、つられる様に小さく笑うのだった。


「――――――――んで、もう一つの話って何?」

「あぁ、それなんですが――――――――」



―――――――


―――――



ゴン、と何かが落ちた。


音がしたのは、気になるあの二人の部屋から。
中の様子が気になって仕方ないななし1は、音の原因を確認するべく、二人の部屋へと足を進めた。
でも、いざ、部屋を前にすれば、ドアを開けるかどうか、躊躇してしまう。



『ちょ!!…そんな恥ずかしいことー…!』
『そんな恥ずかしがりますか?ななし2さんと僕の仲じゃないですかー…』



そんな部屋から漏れてきたのは、二人の声。

ドクドクと低く鳴る鼓動が、ななし1の聴覚を支配した。
想像していた、最悪の瞬間を聞いてしまった。
そうだ、先ほどの悟浄は「トクベツ」に関して否定はしていなかった。

やっぱりそう言う事だ。これで決定的。そもそもお似合いの二人だったじゃないか…、とななし1の心が悲鳴を上げる。

ななし1は泣きそうな気持ちを何とか抑えようとするも、そのままドアを開ける事も出来ず、居たたまれないその場から走って自室に逃げ込むのだった。



―――――――――――――――



「あばばばばばば!!ごめんなさい、八戒!!」

「良いんです、此方こそ野暮な事を聞きました。」


二人して、落とした灰皿と灰を掃除する。
少し顔が引きつった表情をするななし2に、八戒が淡々と物を言う。

「でも、実際困る事でしょう?女性の身体なんですから。」

「いや、まぁ、そりゃ、困りますよ。いくらなんでも直球過ぎるでしょう、びっくりしましたよ!いくら二人きりだからって爽やかに渡されたらびっくりしますよ!!」

僕が買って来たので、コレを一応『予備』として持っていてください、何処で何があるか分からないんですから。と言いながら


爽やかに。ななし2に差し出された。




生理用品とコンドーム




生理用品は、男だらけの一行に気を遣っているななし2も八戒も、そこは利害が一致しているので問題は無い。
しかしコンドームはどうだろうか。
仮にも20代の女性に男性が手渡す物なのだろうか。ななし2は八戒の謎の奇行に驚きと戸惑いを隠せない。
そして、ななし1と自分の扱いの差に、解せんと文句をたれながら八戒に手を差し出した。

「…ななし1にも渡しておくからもうワンセット下さい。」
「…………………」

八戒は、生理用品だけ渡して、コンドームを渡すのに何故か躊躇。

「……………、え!?ななし1は自分と使いますからみたいな欲!?何処で何があるか分からないのはななし1も一緒じゃん!?」

「まぁ…そうですね…」

若干キレながら、渡すかどうかは別として!とななし2が強く言えば、正論を言われた八戒が渋々ななし1用にとコンドーム渡す。
若干、強奪に近い形とはなったが、そんな理不尽を認めないと笑いながらななし2はたっぷりと皮肉を言う。

少し、眉間にシワを寄せて感慨深そうな八戒の顔
を見て、ななし2は笑った。

その後、少しの雑談を経て、二人で居間に戻るのだった。



――――――――――


――――――――



皆で夕食を食べ、夜も更けてきた。
各々がそれぞれの時間を過ごす中、悟浄はかなり憔悴していた。それもそのはず、


「やっぱり出来てるってあの二人ー!!!」

「だーかーら!気にし過ぎって昼も言ったろぉ!!」


ヤケ酒レベルで酒を呑み、ボロボロと涙を流すななし1の相手を、かれこれ3時間近くはやっている。
最初は一緒に飲みたい、と可愛らしく誘ってきた彼女だったが、酒が回るとどんどんと泣き上戸になっていくのだ。
唯一抑えれそうなななし2も、今や此処に居ない。
かと言って、これだけ大泣きする原因の当の本人、八戒を連れて来る訳にもいかず、悟浄は大きなため息を煙と一緒に吐き出した。

本来、ななし1は三蔵と相部屋だったが、悟浄とななし2の相部屋に大きな酒瓶を持ってきたのだ。
それこそ、最初は寝ていたななし2も起こして、三人で馬鹿騒ぎしていたのだが。
ななし2が眠気に負けた所から、ななし1の何かに火が点いてしまった。
寝ていたななし2は余程煩かったのか、終わったらまた呼んで。と三蔵の部屋に枕と布団を丸ごと持っていってしまう始末。もう一人どうやって寝るんだ!!と悪態を付いた悟浄だが、その言葉はドアに阻まれてななし2までは届かなかった。


はぁー、と、またもため息を付いた悟浄は、酒を片手にオンナってのは面倒くせぇ、今日は寝不足だ。と腹を括る。思い返せば、2時間前にも同じ事を思っていた。
悪態を付きながらも、ななし1に何があったのかを聞いてやる。


「だって!今日聞いちゃったんだもん…」

「だから何を?」


ななし1は今日あの部屋から聞こえた会話を、ありのまま悟浄に話をした。

悟浄はあー、っと言葉を濁し、目線は空を仰ぐ。アイツの性格だから、どうせななし1の事を相談してるんじゃ…と言葉にしたら何れだけ楽か。

ただそれは、一、男として八戒に失礼だろうと、悟浄は言葉を濁す事しか出来なかったのだ。
その表情を見て、やはり決定的だ!!と勘違いしたななし1が余計泣きじゃくる。

きっとここまで泣かれては、誰でも八戒の話をしてしまうだろう。
ただ、悟浄は前に八戒が一人ゴチた言葉を思い出し、口から出そうになる言葉をグッと飲み込んだ。


(………アイツのあの表情はオメェに向けられてんのによぉ………)


何を言ってもマイナス思考なななし1をあやしながら、悟浄は早く泣き疲れて寝ないかな、と天井を仰ぐしか出来なかった。



(………あー、枕欲し……)



夜が、更けていく



――――――――――――


――――――――――


――――――――


――――――



「おはようございます、皆さん……って、いつの間に三蔵とななし2さんが相部屋になったんです?」

「知らん。起きたらコイツが俺の部屋に居た。」


朝、居間に続く廊下で八戒部屋と三蔵部屋のメンバーは一緒になった。
それぞれ朝の挨拶を済ますと、八戒が昨日決めた部屋割りと違う事に気付き、三蔵に声をかけた。


「…と言う事は、悟浄の部屋にはななし1がいるんですか?珍しいですね、何かあったんですか?」

「………ちょっとあの二人が部屋で騒ぎすぎて…煩くて眠れないから、部屋を交換した……」


ななし1があの悟浄と相部屋――――――――?
決して、悟浄の事を信頼していないと言う訳では無いが、あのタラシな悟浄と、一晩一緒に過ごす事に八戒の胸がザワザワとした。
ましてや異性の扱いに慣れているななし2と違い、相部屋になったのはななし1である。
ふむ。と部屋割り一つでここまで穏やかじゃない気持ちになる事に、八戒は自身の心を分析していると、ギィ、と扉が開いた音がした。

見れば丁度、反対側の廊下に部屋から出てきた悟浄とななし1の姿。
各々挨拶を軽く交わす中、ホッとした八戒はななし1に笑顔で挨拶をする。

しかし、彼女は俯いたまま、おはよう、と素っ気なく挨拶を返すと、八戒を横切ってななし2に飛び付いた。
いつもと違う様子のななし1に呆気をとられた八戒だが、ななし1はとんでもない言葉を口にする。


「ななし2ー!!悟浄に泣かされたー!!」

「わぁー、悟浄サイテー、」

「ッお前ふざけんな!!ななし1お前が泣きついて来たんじゃねぇか!誤解だ!ななし2ー!!」

「うっゎ!!ななし1にも手ぇ出したのかよこのエロ河童!!」
「……クズの風上にも置けんな…」

「待ってください!!まだ本当にそうと決まった訳ではありませんよ…!?……ななし1、大丈夫でしたか??」

「うん……多分大丈夫なんだけど、何で一緒のベッドで寝ていたか分からなくて……」

「…っておい!!今言うかソレ!!……誤解だぞ??……おぃ八戒…??」

黒いオーラをもりもりと出した八戒が、優しい笑顔で詰め寄ってくる。

悟空も三蔵もななし2でさえも軽蔑するかの様な目で悟浄を見ているのだから、弁護してくれそうな仲間が誰一人として居ない。
ななし1に言ったところで余計な誤解を招くのだから、どう足掻いたってこの空気は変えれない。
元はと言えば、布団を丸々持っていったななし2のせいだ!!と言いたくても、こんなにも笑顔の怖い八戒は久しぶりの悟浄。ただ顔を引きつらせていた。


「あれ、ななし1、すっげー目が腫れてるけど大丈夫か??」


空気を壊してくれたのは悟空。
少し俯き気味の顔は、長めの前髪で隠されていたが、変化に気付いた悟空がななし1の前髪を掻き分けて言った。

そのななし1の瞳は赤く充血し、瞼は腫れぼったく膨れ上がっている。メガネ越しにでも分かる腫れ具合に、悟空がデメキンみたいだ!!と笑った。

悟浄からも、あんだけ泣くからだぞ、っとななし1の髪の毛をわしゃわしゃと崩された。もー!!と悟浄をぺしっと叩きながらも、一緒に食堂に付いていくななし1を、少し険しい目線で追う八戒。
先ほどの泣かされた、と言う言葉に、八戒は心がモヤっと曇る様な気分だった。



「なぁ!!早く飯食いに行こうぜ!!」


未だ廊下にたたずんだ八戒は、悟空の声にはっとした。
早歩きで一行に追い付いた八戒は、これでは駄目だと小さく息を吐き、いつもの顔に戻る。


「……今日は食料の買い出しに行きますが…三蔵、あなたはどうします?」

「俺は行かん。てめぇ等だけで行ってこい。」

「ななし1、めっちゃ目が腫れてるけど……大丈夫?」
「うん…こんな顔じゃ街に出れないし、私もここにいる。」


「……そうですか、じゃあ二人とも、僕達は行ってきますが、昼には戻るのでよろしくお願いしますね。」


そのまま、朝食を食べる一行。
いつも通り、騒がしい食事の風景だが、八戒は時よりななし1に視線を配るも、彼女と目が合う事は無かった。



―――――



朝食も終わり、ぞろぞろと宿を出る四人。
居間に戻る三蔵とななし1を尻目に、ななし2が悟浄の手をツンツンとつついた。


「、ねぇ悟浄、昨日のって……アレ??」


小さく親指で示す方角に、悟空と宿を出る八戒の姿。

「……っぁー、そ、アイツのモヤモヤに俺様付き合わされたってワケ。」

「そっか。………誤解招いてごめん。でも、ありがとね、悟浄。」

「…何かありましたか?二人とも?」

こそこそと話す二人に、八戒が不思議そうに声をかけた。
話の当事者になっている事を知らない八戒は、バタバタと宿を出る二人を見ると首を傾げる。


「…やべ、早く行くぞななし2!」
「う、うん…!」



――――――――


―――――




「悟浄ー!こっちのも買うから、手伝いお願い!」
「へいへーぃ、今行きますよっと。」

昨日も歩いた市場で、買い物をする四人。
ななし2が悟浄を呼ぶと、袋いっぱいに食料を入れた悟浄は、ななし2を見失わない様にそそくさと歩いて行く。

「あれ、八戒??悟浄達、行っちまうぞ??どうしたんだーって……髪飾り?」

悟浄とななし2が離れていく姿を見た悟空が、八戒に話しかけた。
しかし、真剣に品定めをする八戒を見て、何を見ているのかと自身も覗き込む。店に並んだ商品を見れば、女性物の宝飾品がずらり。

その中でも髪飾りのコーナーで足を止めている八戒に、悟空は何事かと首を傾げた。

そんな悟空の視線に気付いた八戒が、少し照れながら頬を掻いて笑う。

「…髪の長いななし1に、贈り物をしようと思いまして。」
「へぇー!!良いじゃん!俺、あれが似合うと思う!!でもどうやって使うんだ??」


悟空が指差したのは、夜光貝が装飾された髪飾り。

「どれですか?――――――――あぁ、こういうのは――――――――、」

実際に品物を手に取り、こうやって使うんです。と八戒は悟空に優しく教える。
へぇ、と初めて知る事に興味深々の悟空を、八戒は目を細めて微笑んだ。



一方。



「おい、ななし2ー、アイツ等付いてきてねぇぞ……ったく、オーイ!!八戒!!悟空!!」

次々に荷物係増えていく中、悟浄は付いて来ない二人の名前を叫んだ。
食料のリストを見ながら値切りをするななし2が、悟浄に制止をかける。

「いいの、悟浄。今プレゼント選んでるから、そっとしておいて??」

「プレゼントォ??誰に。」

野菜の痛み具合を見ながら淡々と話すななし2に、悟浄は片方の眉をひそめた。

「八戒が、ななし1に。」
「………もしかしてそれで昨日は呼び出しされてたワケ??」

コクリと頷くななし2。
これだけ買ったら、いくら値下げ出来るか…を亭主に交渉するななし2と、はす向かいの宝飾店で、二人して屈みながらプレゼントを選ぶ八戒と悟空。
そんな二方向を見ながら、昨夜の出来事の被害者である悟浄は、何とも言い難い気持ちを小さくため息として口に出して見守るのだった。


ななし2の買い物が一旦終了し、人混みを分ければ開けた小道を見つけた。

お互い煙草を我慢していたのもあったが、悟浄より先にななし2は煙草を取り出した。
ただ、両手が荷物でいっぱいの悟浄に代わりに、悟浄の胸ポケットから煙草を出してやる。
当たり前の様に行われる行為に、少し驚いた悟浄。彼女はそのままハイライトの袋から一本だけ煙草を出し、悟浄の口に咥えさせると、ライターで火をつけてやる。

荷物をうまく片手に収めた悟浄はサンキュ、と礼を述べた。


「……んで昨日の俺は無駄に勘違いしたななし1を夜な夜なあやし続けた、って事だろ?」

「…そ。んで今日も恐らく、八戒はななし1が泣いた理由を、私に聞いてくるんだよ。」



大きく煙を吸って、空高く煙を吐く二人。



「…………俺、ラブコメでしか見たこと無いわ、こーゆーの。」
「ね。せーしゅん、ってカンジ。」

「「………アイツ等はな(ね)。」」


お互いに苦労するな、と苦笑しあった。



しばらく休憩をしていると、八戒と悟空が二人を呼ぶ声が聞こえた。
行くか、と荷物を抱え直し、二人を呼ぶ声のする方に向かう。先程の市場の大通りに出れば、少し先に居た二人の姿があった。

悟浄に気付いた悟空が、大きく手を振る。
にこやかな笑みを浮かべる八戒も、小さな小包を大切そうに抱えている。

そんな八戒の姿を見た悟浄とななし2は顔を合わせるなり、ニカッと笑い合った。
悟浄は突然走り出したかと思いきや、悟空の首をぐぇーっ、と腕で絞める。
じたばたと抵抗する悟空に、八戒の事は秘密だからなと釘を刺す。
当たり前じゃん!!と鼻息の荒い悟空に、本当に大丈夫かと呆れる悟浄。さらに首を絞める腕に力を加えてやった。

三人に合流したななし2は、じたばたとじゃれ合う二人を無視し、八戒の隣に身を置けば頑張れ、と笑顔で応援する。
それを見た八戒も、爽やかな笑顔で返事をした。


後は、渡せれば今回問題ないねと歩き出すななし2を、八戒は手を掴んで引き留めた。

そのままななし2の手を握り、そっと己に引き寄せる。

八戒に急接近されたななし2が驚いていると、真剣な顔をした八戒がななし2に問う。

「ななし1が泣いていたって朝言ってましたが、何か知りませんか??」

(……うわ、早速出たコレ……悟浄、助けて……)


早くもこれか、と悟浄にアイコンタクト送ろうとするも、悟浄はまだ悟空の首を腕で絞めており、彼等は後ろ姿しか見えない。
今日も面倒な事になる。と腹を括ったななし2は、この街について一番大きなため息を付いたのだった。



―――――――――――――


――――――――――


―――――――



「………………遅いね、八戒たち。」

「………」

「…八戒たちって、いつもこんな時間かかってたっけ?待ってるの初めてだしよく分からないや、」

「………………」

「…八戒たち、今日は何食べるんだろうね?昨日の春巻き美味しかったよなー、」

「………………………」

「ねぇ、三蔵、八戒達が帰って来たらご飯だから、準備しておこうよ。」

「チッ」


大きく舌打ちをした三蔵が席を立ち、居間から居なくなった。
機嫌が悪いのかと言われれば、それもそのはず。
キャッチボールにならない会話を、かれこれ10分は続けている。
ななし1の一方的な投げ掛けしかしていないのだから、三蔵からすれば、鬱陶しいと思われても仕方がない。
三蔵の性格を分かってはいるが、大きくため息を付く。


(遅いな、八戒たち………)


思い出さない様に、気にしない様にと意識しながららななし1は机に伏せる。


(『ななし2さんと、僕の仲じゃないですか』…………か………)


目を閉じれば、昨日聞こえてきた八戒の声が、イヤと言う程こだましてしまう。

八戒とななし2の事を認めようと思えば思うほど、八戒の気持ちを忘れようと思えば思うほど、ななし1の胸は締め付けられた様に苦しく、涙が出そうになった。
こんなに弱気じゃ駄目だ、部屋でもう少し泣こう、と思った時、頭に冷たい感覚が走る。

驚いて顔を上げると、居間に戻って来た三蔵と目が合う。ひやりとした冷たい感覚は、三蔵が持ってきた氷のうだった。
三蔵はななし1の頭に乗せた氷のうから手を放すと、元居た椅子に座り、煙草を吸う。
ななし1は頭から落ちそうになった氷のうをキャッチして、三蔵を見つめた。

「………テメェが泣き散らしてた事なんざ俺には一切関係ねぇが、そんな不細工な顔で喋り続けられたら不愉快極まりねぇ。とっとと冷やせデメキン。」

「、ひど!!……でも…わざわざ貰ってきてくれたの…?」

「あまりにもデメキンが八戒八戒煩いからな、早く冷やさねぇと昼飯も食えねぇぞ。」


目すら合わせず物申す三蔵に、泣くはずだったななし1は、呆気にとられた。
調子に乗って氷のう二つでデメキンの真似をしてみれば、調子に乗るなとハリセンで叩かれたり、
ぶっきらぼうながらも三蔵なりに落ち込んでいることを気にしてくれた優しさが、ななし1は嬉しかった。

ありがとうとお礼を言えば、あぁと小さく返事が返って来る。
ななし1はそれがさらに嬉しくて、顔に集まる熱を逃がす様に、氷のうに顔を埋めた。

しばらく、三蔵とななし1は、他愛もない会話を一人続ける。

三蔵も普段なら煩いと怒るのだが、今日だけは、あぁ、と付き合ってくれるのだ。
時よりフッと笑う三蔵に、出掛けないで良かったかも、とななし1は笑顔を見せるのだった。

「…ななし1、デメキンを卒業したじゃねぇか。」



――――――――――


―――――――



外が騒がしいと思えば、あの四人が帰ってきた。

居間を通るなり、遅くなりました、軽く謝る八戒。
そのまま先程買った髪飾りを、食材と一緒に自室に置きに行く。

特にやる事も無い悟空は、お腹が空いたと昼飯の時間を訴えた。
三蔵は、久しぶりの一人の一時はななし1をあやす為に使ったわ、煩い奴らが帰ってきたとあれば、ストレスの貯まった矛先を煩せぇと悟空にハリセンのお見舞いする。
痛てて、と頭を擦りながらななし1を見れば、二人のやり取りをクスクスと笑っている。

「あ!!ななし1、目の腫れ治ったじゃん!」
「でしょ!三蔵が手伝ってくれたんだ♪」

「……フン、お前が煩せぇからな」

「…そか、三蔵も何だかんだ言って優しいところあるよな!!」
「黙れクソ猿!!」

悟空の頭を再びハリセンが襲う頃、荷物を置いてきた八戒達が居間に戻って来た。

楽しそうな三人を見て、茶化す悟浄とななし2だったが、目の腫れも治って笑顔のななし1の姿に、八戒だけはあまり芳しくない表情を浮かべる。

その隣で八戒の表情を見逃さなかったななし2と悟浄は、お互い目線を合わせると、これは良くない。とアイコンタクトを取って頷いた。


((なんとかしないとまた、今夜も平和が無くなる……!!!))


そんな二人の思惑を知ってか知らずか、ななし1の髪を手でぐしゃぐしゃに乱して行く三蔵。そのまま先に昼食を取るぞ、と居間を出て行った。
乱された髪の毛を整えながらも、少し照れた表情を浮かべるななし1。

そのやり取りを見た八戒は、黒いオーラが増している気がした。
悟浄とななし2の決意を他所に、無情にもすれ違いをしていく八戒とななし1。


これはヤバい、と悟浄の触角がピクピクと動くのだった。



――――――


――――


――



昼食を食べ終わり、宿に戻る最中の一行。

三蔵に昼飯の感想を身ぶり手振りで伝えている悟空と、相変わらずな三蔵達が先頭を歩く。

ただ、その後ろを歩く四人には、若干重たい空気が流れていた。


皆が落ち込んで居るわけではない。
誰とは言わないが、いつも通り笑顔なのに黒いオーラを身に纏う一人のせいで、他三人が若干びくついているのだ。
それを知ってか知らないでか、明るい悟空といつもの三蔵はどんどん先に進んでしまう。


四人との距離が、少し開く。


ななし2は、何とか皆を明るくする方法を考えていたが、下手に喋ると、結果は地獄しか見ないのを先ほど学んだばかりだ。

ななし1に話を振れば、悟浄だの三蔵だの悟空だの、一番触れて欲しい男の名前を言わない。

八戒に話を振れば、たまには飲みませんかとななし2を誘う。違う、お前が誘うのはこっちだバカ。
内心八戒に悪態をつき、横でどんどん落ち込んでいくななし1を尻目にななし2は冷や汗が止まらない。



それを見かねた悟浄は突然走り出し、前を歩く悟空に飛び付くと腕で首を絞めた。

「うが!!何だよ悟浄!!それ苦しいんだって!やめ
ろぉ〜っ!!」

その辺に美味そうな肉まんの店があったぜ、と悟空に話す悟浄が、チラリとななし2を見た。
肉まんに食らい付いた悟空とは裏腹に、目があったななし2は、悟浄がニヤリと笑った顔を見て、瞬時に飛び付いた意図を汲み取った。


―――――――――あとは、三蔵さえ何とかなれば良いのだ。

彼女は横を歩く八戒の服の裾を強く引っ張ると、少しよろけた八戒に、髪飾りは持っているかと小声で聞いた。
えぇ、まぁ…と白竜用の白い肩布を少し手繰り寄せれば、小さな小包がチラリと見える。
そんな八戒の背中を強く叩いて鼓舞し、三蔵に向かって走っていく。
ななし2は八戒に向かってウインクすると、八戒は状況をハッと理解した。しかし、この状況と空気で、気になる想い人と二人きりの現状に、八戒は苦虫を潰したような顔をしするしかなかった。



「……皆さん行っちゃいましたね…」

「………何かあったのかな…?」
「それは分かりませんが、せっかくですし…どこか観光でもしていきましょうか?」

「ぇ…私でいいの?」
「はい、明日には此処を出てしまいますし、この街を満喫しましょう。」



ニッコリと笑う八戒に、ただならぬオーラを感じたななし1は、断る事が出来ず、一緒に付いていくしかなかった。


しかし、ななし1は八戒を気にする以上に、この街が魅力に吸い込まれていった。

この街が誇る大きな寺院は、僕らの居た長安と同じくらい大きいかもと八戒が話せば、初めて見る寺院にななし1は目を輝かせる。

賑わいを見せる市場の雑技団を見れば、危ない技をハラハラと見守る。大技が決まれば、沸き起こる拍手にななし1も笑顔で手を叩いた。

最初は八戒に緊張していたななし1だったが、自然と笑顔が増えていく。そんな彼女を見た八戒も、自然と笑みが溢れるのだった。


「あはは、凄いですねぇ、僕たちもお金に困ったらああやって稼ぐのも一つ手ですよねぇ。」

「……そうだね!ねぇ、八戒、あそこ寄ってもいい?」

日も少しくれて、夕方前。
一通り観光をし終わり、宿に向かって歩くななし1が、店を指差した。

「甘味処ですか…えぇ、もちろんです。何を食べましょうか?」

笑顔を見せる八戒に、えへへ、と照れた様に笑う。

「三蔵にあんみつお土産にしたくって♪」

「………三蔵に??」
「今日、目が腫れてたの直してくれたし、迷惑かけちゃったからお礼にって思っ……て…………八戒?」


「………ななし1は、三蔵の事が…好き、なんですか……?」



好き、という言葉に、ななし1の胸がドキンと高鳴った。
質問の意味が理解出来ず、ななし1は言葉に詰まる。
言葉を発した八戒の顔を見れば、切なそうに、ななし1の瞳捉える表情。
そんな顔を見れば、彼女は動けなくなってしまう。


「……こうやって…仲間として一緒に居ても…他の男の名前を出されると、良い気分ではありませんね…」

「………怒ってるの……?」

「いえ、惨めな男の独り言です…、忘れてください。」

口に手の甲を当てて話す八戒は、ななし1から視線を反らした。良い年をした男が、嫉妬なんて……

本来はグッと堪える筈の気持ちが、口に出てしまったのだ。
八戒は、自身は昔より温厚になったからと少し驕って居たことを恥じた。


「忘れる訳ないじゃん!!そんな事言われたら期待しちゃうし……だって……八戒にはななし2がいるじゃん…」

「…ななし2さん……???」


それでも、袖を掴むななし1に、驚きが隠せない。

身長差があって見え辛いが、耳が赤くなっている彼女を見て、今までの出来事が頭を過る。



(……ななし2さん、少しお話したい事が……)



相談を、逢瀬と勘違いしているのでは―――――



「っ、誤解です!彼女には相談に乗ってもらっていただけでー…!!」

袖をつかむ彼女の腕を、今度は八戒が力強く掴んだ。声を荒げた八戒にななし1はビクッと肩を震わせる。
何があったかと、街を歩く人々も、一斉に視線を二人へと向けた。
それに気付いた八戒はちょっとこっちへ、とななし1の腕を掴んだまま、足早に人気のない場所まで歩いていく。
早歩きをする八戒に、ななし1は何も言えず、ただ転ばないように付いて行くのが、精一杯だった。



――――――――――――


「…、すみませんっ、腕、痛かったですよね!?」


人気のない小道に入る。
ハッと、我に帰った八戒が、ななし1の腕を放した。
息を少し乱れさせた彼女は、大丈夫、とだけ返事をする。
一息つくと、八戒の顔を見上げて口を開く。


「………ねぇ、八戒、さっきの話って……本当なの…?」
「、はい…彼女とは、ななし1が思っている様な事はありません。」

八戒も呼吸を整える様に、ゆっくり深呼吸をする。



「……………昨日はコレの相談に乗ってもらってまして……」

「……コレ??」



八戒の肩布のから取り出されたのは、小さな小包。
そのまま、胸の前に出され、小包を見たななし1はきょとんと八戒の顔を見上げた。

「…………これ……、私に……?」
「もし、良かったら使って欲しいって、思ったんです。」

少し顔を赤らめながら、目線を反らす八戒。
小包を受け取り、封を開ければ、中には綺麗な石で装飾されたサイドバンス。
思わず可愛い、とななし1が口に出せば、八戒がクスリ、と小さく笑う。

「ななし1は、やっぱり笑顔が似合いますよ」
「……八戒、それってどういうイミ…??」

期待していいの?と小さく漏らした言葉に、八戒は身体の熱が上がるのを感じた。

「……ななし1、それはまだヒミツ、ですよ?」


(…まだ――――言うべきではないでしょうか…)

きっと想いを口にすれば、目の前のななし1は受け入れてくれる。
ただ、今日はまだ、話すきっかけの一つに過ぎない。機を早まって失敗するのであれば、もう少し好機を伺った方が良い。
逸る気持ちを抑えながら言った言葉に、よりななし1が赤面していく。
最後に貰ってくれますか、と苦笑する八戒に、ななし1は髪飾りを両手に持つと、もちろろん!ととびきりの笑顔を見せる。
八戒は良かったです、と胸をホッと撫で下ろした。



寺院から夕方の鐘が聞こえると、二人は宿へと向かって歩き出す。

何だかんだで、二人きりになるのは初めてだったが、今日の出来事をきっかけに、少しでも距離が縮まった事が二人は嬉しかった。
いつもだったら、お互いに誰かが居てこそ、二人の会話が成立していたのだから。
これからは、少しずつ話せる様になりますねと、二人で顔を合わせて笑い合うのだった。



――――――――


――――――


―――――



「さぁ、皆さん出発しますよ!準備したら降りてきてください!」

僕は白竜に荷物を積みますので…と聞こえた出発の日。
それぞれが朝食を食べて宿を出ていくと、前を歩くななし1に悟空が駆け寄った。
そのまま彼女の背後から顔を出し、明るい笑顔で笑いかける。

「ななし1、それすっげー似合ってるぞ!!」

「…!!ありがと、悟空♪」

「…テメェ等さっさと歩きやがれ!邪魔だ!!」
「わっ、やべぇ!!ななし1急ごうぜ!!」


後ろを歩いていた三蔵が、楽しそうに話す二人に痺れを切らして怒っている。
さらにその後ろには、少しダルそうに歩く悟浄とななし2の姿があった。


「…おい大丈夫か?ななし2ー??」

「昨日さぁ……ななし1と同じ部屋になったら、一晩中、のろけられた……眠い……」

ふぁぁ、と大きく欠伸をするななし2。

「今日は悟浄サンのお膝でゆっくり寝かしてやるよ?」
「ありがと…そうさせて………マジで……………あ、そうだ…!」

何かを思い出した様に、ななし2はカバンをがさごそと漁る。
急に何だ、と口にする悟浄を他所に、お目当ての物を見つけると、ジープに乗る手前のななし1を呼び止めた。
こっちこっち、と手招きされたななし1は、何かあったかとななし2に近づいていく。

「――、何?ななし2??」

「これねぇ、一昨日、八戒から渡しておくように言われてたんだ!」

「「?????」」

プレゼントなら、昨日貰ったはずだ…と首を傾げるななし1と悟浄。

はい、と手に渡されたのは、四角い袋に丸いリングの膨らみがくっきり見えている



コンドーム



私も先に貰ったよ、と渡すとさっさとジープに乗り込もうと歩き出すななし2。
堪えきれずブハッと盛大に吹き出した悟浄も、ななし2と一緒にジープへ向かってしまった。

(八戒から…??なんで??ぇ……なんで??ななし2にも…!?!?)

渡されたコレの意味が分からず、立ち尽くすななし1。
痺れを切らした三蔵が怒鳴るのは、もう10秒ほど後のこt『っおいななし1!!テメェだけ置いてくぞ!!早くしろ!!』



………ハリセンが、一発、綺麗な音をたてた。



end

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