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ポーカーと雑魚寝編







本日の宿は、一部屋しか取ることが出来なかった。
6人だと言って通された部屋は、簡易キッチン付きの広い部屋。
唯一ある寝室のベッドは、当たり前の様に三蔵が占拠をし、5人は当たり前の様に敷き布団で寝る事になっている。


そんな日の夜。


夕食を町で食べ終わった一行は、就寝までの時間を各々自由に過ごしている。
テーブルに座り新聞を読む三蔵と、わいわいとする悟空達をテーブルに肘を付きながら見ているななし1。八戒はお盆に3つのお茶を用意し、テーブル座る二人にお茶を配膳していくと、一仕事を終えたように自身も椅子に座った。

ななし1が見ている視線の先には、敷き布団敷いた上に座り、トランプをする悟空と悟浄、ななし2の姿。
現在はポーカーの真っ最中だ。


「はーい、フルハウス!!」

「マジかよ!?強ぇな、ななし2っ!!」

「んー??たまたまだよー?」

「よっしゃ、こうなりゃもう一回だ!」

酒缶を片手に膝を立てる悟浄が、ぐいっと酒缶を飲み干して言うと、クスリと笑いながらななし2がカードを集めては切り始める。
ななし2の手の中で規則正しくシャッフルされていくトランプに、悟空がほぇーと声を出した。

そんな三人を少し羨ましそうに見るななし1を、八戒が首を傾げて見る。彼は自身の湯飲みの茶を飲むと、ななし1に向かって口を開いた。


「…ななし1は一緒にやらないんですか??」

「…うん、…やりたいけど、アレのルール…分からないし……」
「あぁ、そう言う事なんですね…。」

ななし1の言葉を聞いた八戒は、眉尻を下げて笑ったと思えば、雑貨が入った袋から何やらがさごそと探り始めた。
今度はななし1が首を傾げていると、ありました。と言われ、彼が手に持っているソレを見ればソレは予備のトランプ。
八戒はにこやかな笑顔でななし1を見ると、一緒にやりましょう、誘うのだった。

「ぇ、ルール……、」
「大丈夫ですよ、僕が教えますので。意外と僕、この類いは強いんです♪」

「………テメェは意外とじゃなくてチートじゃねぇか…」

煙草を吸う三蔵がにこやかな八戒に突っ込むも、
そんな皮肉も気にしない八戒が慣れたら簡単ですよとカードを切っていく。

「ポーカーはカードの絵柄を合わせたり、数字を並べて強い役を作った人が勝ちになります。役は全部で9ないし10。これはジョーカーを入れるかで変わります。」

「うん……?」

「まずは、一枚ずつカードを配るので、取って…あぁ、人に見せちゃダメですよ?……そして、合計で5枚になるまでカードを引きます。」

「……ん!」

「柄や数字が揃うように、何枚かチェンジします。…例えば、この三枚を捨てたら、新しく三枚ドローする…って感じですね。そして、この場合は……コレをチェンジして、…ほら、Jのカードが3枚揃ったでしょう??」


コレでスリーカードですよ。と隣同士座るななし1の手札を覗き込み、八戒がカードを指差しながら教えていく。
ななし1の肩は八戒の胸元に触れてしまいそうな程近いのだが、一生懸命話を聞くななし1は、気付かない。
コレはワンペアだ、と八戒が教えれば、ななし1はなるほど、と息を飲んだのだった。



しばらくして、大まかなルールを教え終わると、八戒は役は後で覚えれば大丈夫ですよ。と一言付け加えた。


「悟浄、悟空、僕達も一緒に混ぜてくれませんか??」

「良いぜ〜!!みんなでやろう!!三蔵も来いよっ!!」

「あ、ななし1もやるの??じゃあ私はディーラーやるよ。」

丁度キリの良く勝敗が付いたカードを集めると、ななし2が手際よくカードを切っていく。
重たい腰を上げた三蔵も、布団の上で胡座を掻くようにして座った。
6人で円を作るように座ると、ディーラーのななし2がパラパラとカードを配る。

「ななし1はまだルールを覚えたばかりなので、僕とセットで良いですか??」

「オーケー、八戒が居ると勝負になんねぇケド、ななし1が居るなら頑張っちゃうぜ!!」

八戒の隣にちょこんと座ったななし1が、照れた様に笑いながら八戒の手元のカードを覗き込む。

「じゃあ、私の隣の悟浄からスタートで。」

ポーカー開始


「……ななし2、二枚ドローね」
「はい」

「俺は三枚!!」
「はい」

「僕は一枚お願いします。」
「はい」

「……三枚。」
「はい」


「…じゃあ、皆??、カード・オープン!!」


「……はい、フォーカードです。」

「って、イキナリかよ!!!」

8の絵柄が揃ったカードを見せると、ニコリと八戒が笑う。自信満々だった悟浄が冗談じゃない!と驚きくも、そんな彼の手中のカードはフルハウス。悟浄は開いた口が塞がらない。

「………そんなに凄いの??」

「役としては、3番目に強いよ。」

役が分からずきょとんとするななし1に、ななし2がカードを集めながら言う。さすがチート。知ってはいたが、まさかここまでとは…と若干引きながら苦笑をするななし2。

「凄いよ八戒!!カッコいいっ!!」

そんなななし2の話を聞けば、ななし1は八戒の服の袖を握っては大喜びして彼を褒める。
彼女の嬉しそうな笑顔を見ては、ありがとうございます、と少し照れた様に笑いながら頬を掻く八戒。
そんな向かい側の二人が気にくわない悟浄が、触角をピクピクと動かしては再戦を急かす。

「んにゃろー!!もう一回だっ!!」

「俺も俺もっ!!!」



ーーーーーーー



「はい、ストレートフラッシュです。」

「…………何故だ。」

かれこれ20回ほど勝負をしているのにも関わらず、一向に八戒に勝てない一行達。ただ、ニコニコと八戒が一人勝ちして笑うだけだった。
彼の隣で見学をして、少しずつルールが分かって来たななし1は、八戒にぴったりとくっ付いては楽しそうにあれこれと話す。


「〜〜っ!!おい、ななし2、ディーラー変われ!!」

「え!?……えぇ…」

勝てないストレスをななし2にぶつける様に、悟浄がななし2の手元のカードを奪い取れば、バサバサと音を立ててトランプを切ると、順番にカードを配っていく。
こうして、ディーラーはななし2から隣の悟浄に移動した。

「ななし2さ、さっきやってたらスゲー強かったんだぜ!!?」

「おぅしっ、やってやれななし2!!そのへらへら笑った顔もこれで最後だぞ八戒!!」

「いやいや、ハードル上げないでよ……あ、悟浄、二枚ドロー。」
「うぃ」

「八戒居るとやっぱり勝てねーな、強ぇんだもん。悟浄、俺も二枚!!」
「ほれ」

「いやぁ、今日は運が良いですねー。三枚お願いします。」
「ッチ…ほらよ」

「……全部だ。」
「三蔵サマは運が向いてねーなぁ…」


「……全員いいかー??、じゃあいくぜー、せーの!!」



「ストレートフラッシュ〜♪」

「フルハウスです。」







「っ、やりぃーっ!!!!ななし2の勝ちだぜ!!!!」
「スゲー!!マジで強ぇじゃん!!」
「…八戒を負かすとはな…。」

「……おや、負けてしまいましたね。」
「えー、負けちゃったんだ、八戒…、」

今まで勝利の独走をしていた八戒が負けた!!と言うこともあり、大盛り上がりの男達に対し、ななし1は少し残念そうに励ましの言葉を言って八戒の顔見る。
少しでも悔しがっているのかと思えば、それはとてもにこやかな笑みを浮かべる八戒の姿。

「…次は勝ちますからね??」
「う、うん…!!?」

あまりの笑みにななし1が恐怖を覚えると、八戒は誰よりも先にカード集め、シャッフルし始めた。彼は、終始笑顔である。
そんな彼を見た三蔵、悟空、悟浄は口にはしないものの、こう思うのだった。


(((…この顔、相当悔しかったんだな……)))



その後も勝負を続ける二人。



ー第2回戦ー

「フルハウス!!」

「…フラッシュです!」

「スゲー!!またななし2の勝ちだ!!」


ー第8回戦ー

「ツーペア!!」

「…スリーカードだよ!!」

「…スゲーな、二人とも…」


ー第11回戦ー

「フォーカードです!!」

「ストレートフラッシュ!!」

「………」


ー第19回戦ー


「…これは負けませんよ!!ロイヤルストレートフラッシュ!!」

「どうかな!?ファイブカード!!!」



二人の間で繰り広げられる白熱バトル。
他のメンバーなんてお構い無しに完璧に二人の戦いで、もう何も言えない一行達。

「……強いですねぇ、ななし2さん…?」

「…八戒もやるねー、久々だよこの感じ。」


お互い笑顔を見せ合っているにも関わらず、見えない火花がバチバチと散っている二人は、これぞポーカーフェイスとでも言うのか、ヤケに怖い。

ずっと白熱バトルを続ける二人に最初は恐怖と呆れを感じていた一行だったが、途中で埒が明かないと思った三蔵がそうそうとベッドで寝始める。悟空は既に大の字になって転がっており、その隣には睡魔に負けたななし1がコロンと寝転がった。

残念な事に二人の静かな戦いに巻き込まれ、寝る事が出来ない悟浄は、大きなあくびを一つ。
バチバチと感じる火花に、よく飽きずにやるなぁ、と苦笑いしかもう出ない。
そんな悟浄を見た八戒が時計を見ると、もう時計は12時を軽く越えているではないか。

「おや…?もうこんな時間ですか…、ななし2さん、これで最後の勝負にしましょうか。」

「えぇ、楽しみましょうね。」

いきますよ!!と八戒が声をかけ、二人は手札を見せ合った。

「はい、ツーペア。」

「僕はフルハウスです。」

「あちゃ!!負けちゃったー!」

あはは、ななし2が笑うと、八戒もホッとしたように笑顔を見せる。お互い好勝負に握手を交わすと、楽しかったねと周りを見渡した。

見ればそこには、ぐっすりと夢の中に入ってしまった三人の姿。彼等がいつの間に寝ていたかすら知らなかった二人は、あちゃー、とこめかみを掻いた。

「…僕たちもそろそろ寝ますか。」

「そう、ですね…。」



八戒も簡単に寝仕度を整えると、あろうことかななし1の隣に寝転がった。
一応、女性の身としては気を使ってななし1の隣に自身が寝るのが当たり前だろうと思っていたななし2は、目を見開いて驚いた。
今までであれば、何かにつけて"女性だから"や"危ない"を散々連呼していた八戒が、まさかななし1の隣とは。しかも悟浄は男と隣同士で寝たくないのか、八戒と間を開けて寝てしまうではないか。悟浄と八戒の間に入るしか余地がなくなったななし2は、何だか腑に落ちない気持ちを胸に布団に入るのだった。



(……何だろう??このサンドイッチ………)


「…ふぁあー…まさか八戒とサシで戦えるやつ初めて見たわ。…すげーな、ななし2。」

小声で言う悟浄に、くるりと身体を向けてななし2は、まあねと笑った。

ごそごそ、と布団の音を立てると、悟浄がななし2の真隣にきては、そっとななし2の手を握る。
びっくりしたななし2が悟浄の顔を見ると、彼は人差し指を口に当てて、イタズラな笑顔を見せるのだった。



さて、明日の昼には出発だ。


end

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