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口裏合わせと行水編







「ね〜、ななし2、気持ちいいねぇ〜」

「……ホントだね〜。」


ちゃぷ、ちゃぷと足を揺らせば水面が揺れる。

川辺に座り、裸足を川に投げ出しているななし1とななし2。

異世界に飛ばされてから、三蔵一行の仲間入りをし、最初の街に向かうまでの道中。一行は野宿続きになったのもあり、この川で水浴びや水汲みをしようと寄り道をしたのだ。
彼女達が行水を行う少し離れ、樹木の茂みに隠れた奥では、悟空と悟浄が入浴まがいの水浴び中だ。お互いの笑い声やギャーギャーとじゃれあいが聞こえてくる。ななし1とななし2は二人が出てくるまでの順番待ちをしている最中だ。

ポケットから出した煙草に火を点けて吸うななし2と、腰を落とす地べたに両手をついて空を見るななし1。
この景色だけ見ればのどかな景色に、ななし2が煙を吐き出して言う。


「…ななし1…原作の話とか、絶対したらダメだよ?」

「…うん。」

「…これから出てくるかもしれない紅孩児とか、過去の話…とか。」


分かってると思うけどね。と念を押す。

この数日を過ごし、彼等は牛魔王蘇生の阻止を三仏神から命じられ天竺に向かっている話や、四人の話を聞いた。

三蔵がとても高貴なお坊さんだと言う事や、悟空はとてもご飯を沢山食べる事、悟浄はとにかく女好きだから注意する事や、八戒は怒らせたら一行内で一番怖い事を聞く。
ここまでは彼女達が勿論知っている知識であったが、改めて本人を前にすると、自然と初めて聞いた気持ちになった。
一番驚いたのは、ジープである。
実は白竜と言う動物なのだと言われ、勿論それも
知っては居たが、いざ実際にジープから白竜になる姿を見て二人は大きく驚いた。

ここまでは一応、原作通りではあるが。


「…っても、全部が原作通りとは、限らないしな…」


そもそも、旅に同行してる時点で原作と違うしなぁ…。
ななし1と同じく空を見上げたななし2は、煙草の煙を胸いっぱいに吸い込む。
隣をチラリと見れば、ななし1は足をバタバタさせて川に水飛沫を飛ばしている。

「……あんまり実感湧かないなぁ。夢なんじゃないか…って、思っちゃう。」

「えー、夢なら覚めないで欲しい!!」

「……あー、胃がイタイ。」
「何で??」

何でって。逆に何でそんなに楽観的に考えられるんだよ。
小突きたくなる腕を我慢して、ななし2も足をバタバタと動かすのだった。




「ななし1ー、ななし2ーっ!!水浴び終わったぜ!!」


後ろを振り返ると、短パンとタンクトップ姿で駆け寄ってくる悟空。
次は二人の番だ!!と言われれば、行水を止めて水浴びの場に案内される。空腹を訴える悟空が、こっちだと茂みをガサリと分け入れば、そんな明るい悟空を見ると、二人とも頬が緩んだ。



「ぅおっ…!?、気を付けろよ悟空〜っ!!」

分け入った茂みに入ると、悟空が悟浄にぶつかった。
彼女達が何だと見れば、髪の毛を拭きながら上半身裸の悟浄の姿。
ななし1は上半身であろうと見てしまった恥ずかしさから、咄嗟に顔を赤くして背中を向ける。
そんな彼女を見て、ななし2はあはは、と苦笑いをした。

「服!!服着てよ悟浄…!!!」
「ぉっと、わりぃ。……ななし1ちゃんはウブなんだな…??」

「……ごめんねっ、悟浄……ちょっとびっくりしちゃって…!」

「なに怖がらせてんだよっ悟浄!!さっさと服着ろよ!!」
「うっせー、分かってるっつーの。二人もさっさと入ってこいよ??」

「悟浄が覗かない様に、見張っといてやるからな!!」
「やんねぇーよっ!!テメェは黙ってろクソ猿!!!」


「………じゃー、水浴びしてきまーす。ななし1、行こっか。」
「え、良いのかな?放っておいて…?」


良いでしょ。ななし2はそう呟くとななし1の手を引っ張り、足を進めた。

茂みに隠れていたソコは、とても綺麗な景色だ。

川は少し深いのか、先程の行水していた浅瀬の色と違う碧さがあり、太陽に反射しては水面がキラキラと揺れる。

服を脱ぎ、川に足を進めて行けば、やはり岸部でも足の付け根まで来る深さだ。
冷たいけれど、気持ちいい。


「ななし2〜、…それっ!!」
「うわっ!?冷た…っ!!…おりゃー!!」

「やめてよ、冷たーいっ!!」
「えー!?先にやったやろ!?」


笑いながらバシャッと水を掛け合う二人。
子供染みた遊びでも、大人気なく出来るのは二人の仲が良いからだ。

冷たさに馴れていけば、寒い寒いと言いながら全身を水に浸り、身体の汚れを落としていく。
異世界に来てからは荒野の砂風に吹かれたり、走って汗をかいたり散々だったが、身体が少しでも綺麗になる感覚が気持ちいい。


「ねー、ななし2、川遊びとか、何年ぶりかなっ??」

「小さい時、行ったよね〜!あの時はたしかさ…」



ーーーカザリ


「「っおわぁぁぁあああっ!!!!????」」


「「!!???!!」」



ーーーザブーーンッ!!!!


急に聞こえた叫びにひどく驚き、ななし2とななし1は身体を寄せ合い、声がした岸に顔を向けると、大きな水音と一緒に激しい水飛沫がいくつも飛んできた。咄嗟に目をギュッと瞑る二人。


何事かと恐る恐る二人が目を開けると…



「「……………………あ……………」」

「「………えっ…………………??」」


そこには、服を着たままずぶ濡れで川辺に膝着く、三蔵と悟浄。
頭まで水に浸かったのか、二人の金髪と赤髪から、滴がポタポタと滴り落ちる。
取っ組み合いでもしていたのか、悟浄は三蔵の頭を掴むように片手を置き、もう一方は自身の膝に手を着いて。


「「「「…………………………………」」」」」


腰元まで川に入っていると言えど、全裸で向かい合い胸元で手を取り合うななし1とななし2。


三蔵と悟浄の眉毛が、ピクピクと動いた。



「……………わ、………ワリィ………。」


「「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!!!」」



周辺に、声にならない二人の悲鳴と、大きく乾いた音がこだました。



ーーーーー



「……俺ぁてっきり、三蔵サマが覗きの趣味でもあったのかと思ってよぉ……。」

「…俺は八戒にタオルを置きに行くように頼まれただけだ、このクソ河童…っ」

頬に赤い紅葉を作った二人が、缶詰めを食べながら罵り合う。
パチパチと燃える焚き火を四人で囲み、気まずい空気が漂っていると、三蔵と悟浄の服を乾かす八戒が眉間にシワを寄せて口を開く。

「もう、貴方達は何で頼まれ事一つやるにしても、何かしらやらかすんですか…!?」

「……だから、わりぃ…」
「……フンッ」

すみませんでした。と彼女達に丁重に謝る八戒。
お陰様で仕事が増えました、と二人にキツくお灸を添えているのは分かるが、彼の背後には黒いオーラが本当に見える。

((……怖えぇー……))

何も言えない雰囲気の中、ななし1とななし2は顔を合わせるとあはは、と苦笑するしかなかった。

「…では僕も水浴びをしてきますから。二人とも、これ以上僕に"仕事"を増やさせないでくださいね…???」

ニコリ、と暗黒なオーラを身に纏いながら言う八戒に、ただコクコクと何回も頷く悟浄と、罰が悪そうに舌打ちをし目線を反らす三蔵。
ななし1とななし2も、被害者なのにも関わらず、彼の恐怖から悟浄と同じく首を何度も縦に振るのだった。


「……なんつーか、マジですまなかったな…。」

「まぁ…過ぎた事だし気にしてないですよ、ね??ななし1??」

「う……うんっ……大丈夫??三蔵…??」

ニ度目の入水で鼻水をすすりながら言う悟浄に、ななし2が励ましの言葉を述べると、隣で暖を取るななし1に話を振った。
しかしななし1は火を挟んで反対側の三蔵が気になって仕方ない。
ななし2と悟浄が何事かと三蔵の方に顔を向ければ、彼は寒さからか鼻をむずむずしている様で。



「……っ、ぶぇっくしょいっ……!!!!!」



くしゃみした三蔵の腰から、グキッと変な音がした。
八戒の仕事が増えてより怒られる事になったのは、言うまでもない。



end

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