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Happy birthday



いつもと変わらない日常

三蔵一行に加わって暫く経つ
三蔵の負けず嫌いで子供っぽい一面がある所や
八戒が影の権力者だってことも理解した
自分が少しずつでも仲間として受け入れてもらえるのが嬉しい

だが、最近はどうも様子がおかしい
何がと言われると上手くは言えない違和感を
ななし1は感じていた

今だってそう、宿に着いて買い物に行く八戒
いつもなら声を掛けてくれるのに気がついた頃には
悟浄と悟空を連れて出て行った後だった

残された三蔵は新聞片手にお茶を飲んでいた




『はぁ〜〜…』

一人部屋で大きなため息をつく

今回の部屋は、四人部屋に一人部屋が取れた

今回に限ってじゃないが私は女だし、一人部屋が取れれば必然的に部屋割りが決まる
そして三蔵が三人に対して文句を言うのが
お決まりになっていた

しかし、今回は文句も言わずに四人部屋に入る

『私何かしたかなぁ?心当たりがない…』

考えても思いあたる節がない
本当に些細な違和感に戸惑うななし1

『考えてもしょうがないっか!三蔵の所行こ』

ななし1は部屋を出て四人部屋の扉をノックする
『三蔵、入っていい?』と聞くと
あぁ、とだけ声が聞こえてななし1は部屋に入る

部屋に入ると三蔵はタバコを吸っていて灰皿には大量の吸い殻が山を作っていた
『煙っ…窓開けるよ?てか、吸いすぎでしょ!』

窓を開けると煙が外へ逃げて行く
ななし1は山になった吸い殻を片付けて綺麗になった灰皿をテーブルの上に置いた

『ねー三蔵、私って…』
「タバコが切れた」
『はぁ?』
「買って来い」

思い切って違和感の正体を確かめようとしたななし1の言葉は三蔵の言葉に消された
このタイミングで言いますか?と思うななし1だが、三蔵に逆らうのは面倒だし仕方なく行ってきますと言うしかなかった



ーーーーーーーー


タバコ屋から帰って来たななし1は四人部屋の扉をノックした

『三蔵、タバコ買って来たよ!』
扉を開けずに部屋に聞こえる声で言うと
入ってこいと声が返ってきた

ななし1は扉を開けた
と同時に発砲音が聞こえてビックリする

『……ッ!!』


八戒と悟空、悟浄にまさかの三蔵までもが口の空いたクラッカーを持っていた
発砲音の正体だ

部屋の中は悟空と悟浄がやったのだろうと分かるくらい雑に飾り付けがしたあって
壁に貼ってある紙には誕生日おめでとうと三蔵の字で書いてあった
テーブルには八戒が作ったケーキとななし1の好きな食べ物が並ぶ

『コレって…』

「今日はななし1の誕生日ですよ?忘れてたんですか?」

八戒は扉の前で立ち尽くすななし1をテーブルの前までエスコートしてくれた

「誕生日おめでと!」
「ななし1チャンおめでと」
「おめでとございます」
「オメデトウ」

まだ頭が付いてきてないななし1はみんなからの言葉にありがとうと返すのが精一杯だった


「ななし1にバレない様に準備するの大変だったんだぞ!」
悟空は頭の後ろで手を組んでニカッと笑う
「そうですね、だいぶ前から準備してましたから」
バレないかドキドキしてましたと片手を胸において八戒も笑う
「この様子じゃ大成功だな!」
イェーイと悟空と悟浄がハイタッチをしている

それを聞いたななし1は
あぁ、そーゆう事か…私が感じてた違和感は
『私の為』だったんだ

どこかモヤモヤしていた気持ちが無くなるのが分かったのと同時に別の感情が込み上げてくる


「…おい、泣くな」
『…え?』

三蔵の言葉にななし1は自分でも気づかないうちに涙を流していた
手で目を擦るが涙はあふれるばかりで、止まれと思うほど、溢れてしまう

『ごめんっ、みんなのっ、気持ちが、嬉しくて、嬉しくて…最近っ、みんなの行動に違和感、あるなぁって思ってて、それが私の為、だったっなんて知らなくてっ…』

嗚咽混じりに喋るななし1に
八戒はすみませんでしたと背中をさすってくれて
悟浄もせっかくの主役が泣くなと頭を撫でてくれた

『ホントに、ありがとう!』
少し落ち着いてからななし1は改めてお礼を言う
みんなそれぞれ返事を返してくれた
私はこの四人に出会えて本当によかったと感じていた

「腹減ったー早く食お〜ぜ!」
悟空は我慢の限界とお腹に両手を当てて訴える
「そうですね」

いただきまーす!

八戒が作ってくれた料理はどれも美味しくて
悟空と悟浄の飾り付けは不器用なりに可愛くて
きっと三蔵はケーキに釣られたんだろうと想像が出来ちゃうけど、
私が生きてきた中で1番ステキで忘れられない誕生日になった





END

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