ハンドクリーム
『八戒の手、カサカサじゃん!』
夕食が終わり、後片付けも終わって、部屋へと戻る途中ななし1は八戒の手を見て声をかける
「そうですねぇ、いつも水仕事をしているのは僕ですから…」
最近は、ななし1のお陰で減りましたけど、と
眉を下げて笑う八戒にマジで主婦だな、と思うななし1は部屋で待ってて、と八戒に告げて小走りで自室へと入って行く
お待たせ、と戻ってきたななし1の手にはハンドクリームが握られていた
「何をするんですか?」
『ん?手、カサカサだから塗ってあげる!』
部屋のソファーに座り、ななし1はハンドクリームを自分の手に出して馴染ませながら八戒の手に塗り始めた
八戒はその光景を見ながら、ななし1も女子なんだと再確認した
『今、私の事を女子だな、とか思ったでしょ!』
「おや?バレちゃいました?」
『私は元から女子ですー』
口を尖らせ拗ねるななし1にすみません、と謝る八戒
ななし1は出来たよ、と言って手を離す
『これから毎日塗ってあげる!
どうせ八戒は自分の事だと、後回しにしてやらないでしょ?』
ニカッと笑うななし1にドクンっと心臓が跳ね、視線を反らせなくなる八戒
『八戒?どうしたの?』
「あ、いや、何もないですよ」
八戒はななし1の声に我にかえる
『このハンドクリームいい香りでしょ?私、この香り好きなの!』
「いつもななし1からいい香りがするな、と思っていたらハンドクリームだったんですね、僕もこの香り嫌いじゃないです」
『よかった!じゃあ、また明日ね!おやすみ』
部屋を出て行くななし1に
おやすみなさいと返事を返してドアが閉まるまで見送る
そして八戒はななし1にさすられた手を見つめる
部屋に広がったハンドクリームの香りと熱を持った自分の手に少しだけ特別な感情が芽生えた
END
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