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寒い夜


小さな村に着いた一行
村の人に聞けば、この辺は旅人も少なく宿屋が無いと教えてくれた

ここ何日か野宿を強いられた五人
屋根がありさえすればいい、と訴えれば親切な人が倉庫で良ければ、と貸してくれたのだった

ジープから荷物を降ろしていると
二枚しか無いけど…と毛布を持ってきてくれ


ーーーーーーーーーー


『寒ッ…これじゃ、寝られない』

ななし1は毛布に包まって手を擦り合り呟いた
息を吐けば寒さに白く変わる
季節はまだ冬ではないが、今日は特に寒い

「ななし1、大丈夫ですか?」

毛布から少しだけ顔を出せば
八戒が心配そうにこちらを見ていた

『ごめん、起こしちゃった?』
「いえ、まだ寝てませんでしたから」

寒いですか、と小声で聞いてくれる八戒に
ななし1は少しだけ、と答えた
本当は、凄く寒いのだが、二枚しか無い毛布の
一枚を貰っておきながら、それは言えないと思ったななし1
もう一枚は、三蔵が奪い取っていた

「実は、僕も寒いんですよ」
『ごめん、八戒、毛布使う?』

ななし1が起き上がり毛布を渡そうとすると
手を引っ張られバランスを崩し八戒の胸に倒れ込む

『はっ、八戒?!』
「シー、みんな、起きちゃいますよ」

突然の出来事にパニックになるななし1とどこか楽しそうに見える八戒

「これなら、寒くないですか?」

毛布を直して腕枕をしてくれる八戒に声にならない声が唇から漏れるななし1

「ーー嫌でした?」
『え?あ、うんん。嫌じゃないけど…恥ずかしい』

先ほどまでの寒さが、八戒の熱と、自分の熱で無くなっていくのがわかる
恥ずかしいと言っておきながら、この暖かさにななし1は居心地の良さを感じた

ふぁーぁ、と大きく欠伸が出るななし1に
八戒が無意識のうちにななし1の頬を撫でる

『…八戒?まだ手、冷たい』

とななし1が八戒の手を両手で摩る
その姿に自然と表情が緩む




「それ、俺のだぞーー!!」



ーービクッ!!

突然、叫び声を上げる悟空にビックリする二人は目を丸させ顔を見合わせる
ななし1は握っていた八戒の手をキツく握りしめていた

『…ビックリしたー、どんな夢、見てるんだろ』
「きっと、また悟浄に食べ物を取られたんですね」

二人で声を殺して笑う
先程のまでの、甘いムードが吹き飛ぶ
悟浄ならまだしも悟空に邪魔されるなんて、と思う八戒



「ななし1のおかげで、手も暖かくなりましたし、そろそろ寝ましょうか」

そうだね、と手を離そうとするななし1の手を
今度は八戒が握って、おやすみなさい、と目を閉じる

ななし1は、勘違いしちゃうじゃん…と、口先まで出かかった言葉を飲み込み、無理やり目を閉じた



END

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