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本当に頼って欲しい時には


『八戒、絆創膏ある?悟空が怪我しちゃって…』

『あ!八戒!今から洗濯物干すの手伝って!』

『ねぇ八戒ー甘い物食べたい!』



「ななし1って本当、八戒の事、好きだよな」

相部屋となった悟浄が
タバコをふかしながら呟く様に言った

嬉しいんですけどね…と
八戒は苦笑いを浮かべて返事を返しす

「ナニ?不満なの?」
「いえ、そうじゃなくて」

八戒はどこか困ったように笑う




ーーーーーーーー



「見つけたぞ!三蔵一行!!」

妖怪たちが三蔵達の行く手を阻む
四人はジープから降りすぐに戦闘態勢に入る


「ななし1はその辺隠れてろよ!」

悟空がななし1にそう言って妖怪達を次々と倒して行く

(大丈夫…大丈夫…みんな強いもん!
妖怪なんかに負けない、大丈夫)

ななし1は岩陰で身を竦めて四人の無事を祈る
だが、思ったよりも妖怪の数が多く
苦戦を強いられていた

そんな中、少し離れた場所にいた八戒の目に映ったのはななし1の背後で剣を振りかざそうとする妖怪の姿

「ななし1、危ないっ!!」

八戒が気孔術で妖怪を倒すもななし1の腕には鈍い痛みが走る

『…っ』
「大丈夫でしたか?怪我は?」

心配そうに駆け寄ってくる八戒に
ななし1はとっさに腕を後ろに隠した

『八戒のお陰で大丈夫だったよ!ありがとう』

よかった、と安心する八戒に
鈍い痛みが走った腕をギュッと押さえて
笑顔で返事を返す


あらかた妖怪を倒し、またジープを走らせる



「っにしてもよォ〜、いつになったら次の町に着くんだ?」
「ハラ減ったー!!」
「もう少しの辛抱ですよ」
「ったく、猿はそれしか言えねェーのかよ」
「なんだよ!本当の事なんだから仕方ねェだろ!」

いつもの様に騒がしくなる二人に三蔵が無言で銃を構える

『ほら、二人共…その辺にし……』

ななし1も三蔵の弾に当たるのは勘弁だと思い
声を掛けたがその言葉を最後まで言えず倒れた

「え?お、おい!ななし1大丈夫か?!」

悟浄が倒れるななし1を受け止める
ななし1は苦しそうに呼吸をしながら
大丈夫と答え意識を失った

「悟浄、ななし1をしっかり捕まえてて下さい
少し飛ばしますよッ!」









『…っん…ここは…』

ななし1が目を覚ますと天井が見えた
ボーッとする頭で考え、ここが宿なんだとわかった
そして頭だけを上げて自分の姿を確認すると
片方の腕には綺麗に巻かれた包帯と
もう片方には八戒が手を握り眠っていた

ななし1はゆっくり起き上がり八戒に毛布をかける

(八戒の寝顔初めて見たかも…)

「ん……ななし1?」
『おはよ、八戒』

起きた八戒に微笑む
すると八戒は一瞬どこが悲しい様な、辛そうな顔を見せたがすぐにいつもの顔に戻り、ななし1を抱きしめた

『はっ…八戒!?』
「よかった…目が覚めたんですね」

抱きしめられたことに驚くななし1だったが
八戒に丸一日も寝ていたんですよと言われ
あはは、ごめんね、もう大丈夫と笑うななし1

「どうして、笑うんですか?!
もしかしたら死んでいたかもしれないですよ!
それにあの時、教えてくれていたら…」

八戒は抱きしめる手に力が入る


「本当に、どうでもいい時だけ僕を頼って…
どうして肝心な時に頼ってくれないんです
僕はそんなに頼りないですか?」

抱きしめらているので八戒の顔が見えないが、
声が震えているのが分かった

『……ごめん、なさい
八戒は頼りなくないよ、むしろすごく頼りになるし、この包帯だって八戒がしてくれたんでしょ?』

ななし1は申し訳なさそうに八戒の背中を撫でる

「もう…誰も失いたくないんです
あんな想いは二度とゴメンだ…って思っているんです
貴方がジープで倒れてから生きた心地がしませんでした
また愛しい人がいなくなるんじゃないかって」

八戒はゆっくり身体を離してななし1を見た

『…え、それって…?』

「最初は名前を呼ばれるたびに面倒くせぇ、って思ってたのに…いつからでしょうね、
こんなに嬉しく思うようになったのは」

ななし1は八戒の話を聞いてポロポロと涙が出た
八戒がこんなに心配してくれたこと、
こんなにも私を想っていてくれたこと、
申し訳なさや嬉しいやらでもう涙が止まらない

『八戒…私…
あの時はっ、たくさん妖怪もいてっ…
ただ、八戒に、負担かけたくなかったの…
戦えない私は隠れることしか、出来なくて…』

泣いて上手く喋れないななし1に八戒は手で涙を拭いて
おでこに優しくキスをしてくれた

「ななし1はそんな事考えなくていいんですよ
いつもみたいに笑って僕を頼ってくれればいいんです、言ったでしょ?もう、愛しい人を失いたくないって」

頬を撫でる八戒は優しく笑った

『ありがとう…八戒、大好き』
「僕もです」

今度はななし1の唇にキスをする八戒
ななし1はすっかり涙も止まり顔が真っ赤だった


「あ、そうだ!
腕の傷が治るまでは動かないで下さいね
ご飯も持ってきますから、お風呂も呼んで下さい
それから…」
『まっ、待って、八戒!
それは大袈裟だし、お風呂はちょっと…』

慌てるななし1に八戒が、心配させた罰ですと
黒い笑顔を返してきた



END

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