×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -




君には勝てない


『私、買い物行って来るね!』

勢いよく四人部屋の扉を開けてななし1は八戒にそう伝えた

「え、待って下さい、一人では…」

洗濯物を畳んでいた八戒が慌てるも
行ってきまぁーすと御構い無しに部屋を出ていってしまった

まったく、と少し大袈裟にため息をつく八戒に
悟空とカードゲームをする悟浄が母親かよ、とツッコミを入れた

「悟浄、そろそろタバコが無くなるじゃありませんか?
あ、三蔵もでしたよね?
ついでに買って来たらどうですか?」

たたみ終わった洗濯物を持って
悟浄の後ろに立った八戒はニッコリと黒いオーラ全開だった

「は、ハイ!行ってきます…」

八戒に負けた悟浄は肩を落としトボトボと部屋を出た


ーーーーーーーー

(それにしてもデカイ街だな…
この中からどーやってななし1を探すんだよ)

悟浄はななし1が行きそうな店をまわるが
見つかる気がない
そもそも、この大きな街で行き先も聞いていないのに見るかる方が奇跡だ

ななし1を探すのを諦めた悟浄は宿へ戻るための近道に大通りより一本細い道に入った

「このアマ…調子に乗んなよ!」

建物の影から男達の声が聞こえてきた
悟浄は一旦は通りすぎるが、気になり戻る

喧嘩か?と悟浄が覗くと

「…ゲッ! ななし1?!」

数人の男に囲まれているななし1の姿があった

『はぁ?!調子に乗ってるのはそっちじゃん!
彼女、嫌がってたでしょ!分かんなかった?バカなの?』
「女だからって容赦しねーぞ!」

男達が拳を挙げて、ななし1に向かって行く

「はーい!ストップ!その辺にしとこーぜ」

悟浄が男の腕を掴んで睨みつけた
面倒な事に巻き込まれたくはないが、ななし1を置いて帰る訳にいかず、悟浄はため息をつく


『あ!悟浄!』
「ったく、面倒かけやがって…
俺が八戒に怒られっだろ!!」

悟浄は掴んだ手に力を入れる


「何すんだよ!離しやがれ!
って、お前禁忌の子か?!」

やべぇ、行くぞ!と男達は逃げて行った
ななし1はべー!と逃げていく男達に舌を出した

そして悟浄に近づいて

『別に、助けてなんて言ってないし!
てか、なんでここに居るの?』
「ンなっ!可愛くねぇー」


タバコ買いに来たついでだよ、とタバコに火を付けななし1の頭をくしゃくしゃと撫でた

『わあっ!ちょっと、やめてよ!
髪ぐしゃぐしゃになるでしょ!』

コンニャロー!とななし1も背伸びして
悟浄の髪を引っ張る

「っイテテテ!
悪かった、ギブ!ギブ!」

その言葉に手を離す



『禁忌の子ってなに?』

悟浄の顔が少し強張った様に見えたが、
気にすんなと言って歩き出す

『えー気になるじゃん!
教えてよ、ねー悟浄!』

ななし1は悟浄の腕を掴む

「禁忌の子つーのは、妖怪と人間のハーフで
俺みてーな赤毛と瞳の事だよ!
わかったら帰るぞ!」

掴んだ手を振り払われ
なんとなく悟浄の背中が寂しく思えた

『ご、悟浄は…自分が嫌い?
わ、私は、悟浄が好きだよ!』

突然の告白に咥えていたタバコが落ちる

「……はぁ?」

『禁忌とか、関係ないよ!
悟浄の赤髪とか瞳だってすごく綺麗だし、
それに…


…どうしちまったんだ?俺…
いろんな女に髪が綺麗とか言われても
こんなに嬉しかったことはない

思い出すのは…あの人が泣いていて
俺はいつも怯えてた

ななし1の声を聴くとその不安が
スーっとなくなる感じかする

これってまさか、この俺が?




悟浄は
河童とゴキブリのハーフでしょ?』

「…………」



〜〜っ前言撤回だぁぁあ!!



「……テ…テメェー!!
ふざけてんのかぁあー!!」
『あはは、ふざけてないよ!
やっぱり、いつもの悟浄が1番いいよ!』

ほら、買い物行こ?と、ななし1は悟浄の手をひっぱる
その笑顔に悟浄は微笑む

「…サンキュー…」

悟浄は小さな声で呟いた

『え?何?』
「何でもねぇーよ!行くぞ」


ったく、コイツには勝てねーわ…



END

[ 21/76 ]

[*prev] [next#]