仲良しこよし
これは、悟空とななし1の、とある1日と、それを見守る(?)三人の1日である。
ーー飯屋にてーー
「これ、美味しいっ!」
口の中に広がる肉の旨味に、ななし1は頬に手を当てた。もう一つ、と焼売に箸を伸ばす。
「ななし1、こっちも!ウマイぞ!!」
もぐもぐとレンゲに乗せた炒飯を頬張る悟空が、これも食べてみてと皿に盛られ、少し形を崩したソレを隣に座るななし1に差し出した。
「悟空、ぽっぺに付いてるよ?」
差し出された皿よりも、悟空の頬に付いたご飯粒を指でつまみ、ななし1はパクリと食べる。
ソレを見た悟空は、恥ずかしそうに笑う。
「…おい、三蔵。今の見たか?」
「…あぁ。」
「猿のくせに、いつの間に…!」
「……これは、ギリギリセーフでは?」
「「…マジか…?」」
和気あいあいとする二人の姿を見た三人は、箸を止めて言う。
ーー買い物にてーー
「ちょっ、悟空、待ってよ!」
「ななし1!早く来ないと先行っちまうぞ!!」
ななし1の袖を引っ張り、急げとせかす悟空。
付いて行くのに精一杯のななし1。
息も切れ切れ走れば、道の窪みに足を取られた。
「おわっ!?」
ガクン、と転びそうになるななし1を、悟空が受け止める。
「ななし1ってば鈍臭せぇぞっ!」
「…うるさいなぁ!」
軽々とななし1を支えた悟空は、ケラケラと笑う
に、ふてくされた様にななし1が言う。
ほら、これなら転ばないだろ?
ニコッと笑う悟空は、ななし1の袖ではなく手を差し出す。ななし1が手を繋ぎ返すと、悟空はより眩しい笑顔で笑った。
「…おい、八戒。これは、どうなんだ?」
「……いやぁ、ほのぼのしますねぇ。」
「いや、違うだろッ!」
雰囲気も距離も置いてきぼりをくらう、後ろを歩く二人。
ーー宿にてーー
「すみません。今日は部屋が埋まっていて一部屋しか取れませんでした…」
「大丈夫だよ!!みんな一緒って、久しぶりだねっ!」
「りさこー!一緒にトランプしよーぜ!」
「よしっ!負けたら…明日の朝ごはんのおかず、一つ頂戴ね。」
「えぇ〜!!ぜってぇ負けねーし!!」
ワクワクとする二人を他所に、八戒が間に入り込む。
「悟空、そろそろお風呂入ってくださいね?」
「おう!!ななし1、ちょっと風呂入ってくるな!!」
「うん、いってらっしゃーい!」
風呂から上がった悟空は、雨日捨てられた子犬の様に髪が濡れていた。
「悟空!髪濡れてるじゃん、乾かしてあげる!!」
わしゃわしゃとタオルドライをし、ドライヤーで悟空の髪を乾かす。気持ち良さそうに目を閉じる悟空に、ななし1はにこりと目を細めた。
「はい、出来上がりっ」
「よっし、ななし1、サンキューなっ!」
「どういたしまして〜」
「……なぁー、やっぱりさー、」
「それ以上言うな、クソ河童…」
「まぁ………悟空を弟ぐらいにしか思ってませんよ。…多分。」
テーブルでお茶をすすりながら、どんどん二人の世界に入って行く悟空とななし1に、何とも腑に落ちない様子で見る三人。
ーー就寝前にてーー
「りさこは、俺の隣な!」
「えーっ、やだ!!悟空は寝相悪いもん!!」
「でも、悟浄の隣よりはマシだろ!?」
「えぇ??そーだけど…。」
「オイ!!どーゆー事だそれは!!」
敷き布団を並べて場所決めをする中、特に意味もなく言われる言葉の暴力に、悟浄が怒る。
全く悟浄の話をスルーして喜ぶ悟空に、悟浄の口端がピクピクとつり上がる。
「じゃあ、決まりだな!」
寝間着に着替えた悟空が、ななし1にギュッと抱きついた。
突然の事にびっくりしたななし1だったが、子供の様に暖かい悟空に抱きしめ返す。
「りさこは柔らかくて、あったけーな!」
「悟空は意外とゴツゴツしてるーっ」
「いや、もう、コレアウトだろーよ!」
「…流石に、これは…ちょっと…」
「チビ猿も三蔵より先にチェリー卒業かぁ。」
「…死ねクソ河童!!」
三人が堂々と言い合いをしても、完全に二人の世界に入ってしまった悟空とななし1。
八戒は先ずは何からどう教えましょうか、と順序だてを考えるのだった。
「ムニャ…ムニャ…ななし1〜……」
仲良く、くっついて寝る二人でした。
end
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