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本能とマシュマロ



「ななし1って、スゲー優しいよな!!」

「しーっ!!みんな起きちゃうでしょ…!」

「わわっ………ごめんっ!!」


ななし1に向けられた純粋な瞳に、少しばかりか
ドキッとしてしまった。


――――――


一行は次の町を目指し、今日の所は野宿となった。
近くに落ちていた枝や木をくべて出来た火を囲んで、二人だけの時間。
妖怪は来てないか、火が消えて寒くならないか、野宿の時にはこうした見廻りを時間交代して休憩を取っている。今夜は悟空の番だった。たまたま寝付きが悪かったななし1も一緒に、二人して体操座りで火に集まる。

「何でそうやって思うの?」

「だって!!こうやって腹が減っても食べ物内緒で作ってくれるし!!」
「だぁーかーらー!!声が大きいってば…!!」
「うぅ、ごめんってば…」

ペシっと、悟空の頭を叩けば、 眉尻を下げて反省の表情だけは表してくる。
小さくため息を付いてななし1は手に持った枝をくるくると回転させる。焚き火で炙ればふっくらと焦げ目をつけて膨らむソレを、ななし1ははい、と悟空に向けてやる。
待ってました!!と言わんばかりに両手に持ったクラッカーでソレを挟めば、トロリと滴りそうになるのをこぼさない様に…と一口で口に入れてはムシャムシャと食べる。


甘い匂いがたちこめる、焼きマシュマロ。


下手に食料を食い荒らせば次の日起きた三人が黙っていないのは目に見えているから、ななし1は自身の小遣いで買った非常食を内緒で悟空に別けてやるのだ。
笑顔で両手に焼きマシュマロサンドを持つ悟空に、可愛いなぁとななし1は悟空の頭を撫でて微笑むのだった。


「……俺さ、三蔵達と出会うまでずっと一人だったし、女の人と喋る事も無かったんだけど、ななし1って何だか………」

「……何だか……??」

「"お母さん"、って感じなんだろうな!!」

「………へ?」



――――いやいやいやいや、そんな純粋な瞳で言われましても。こんなでっかい子供どう頑張っても作れません。

一瞬でも異性の発言をした悟空に期待してしまっただけに、落胆が大きかった。ガックシ、と擬音が付くのではないかと言うほど項垂れるななし1を見た悟空は、何事かとわたわた慌てる。片手に持った焼きマシュマロサンドを差し出され、腹が減ったのかと問われれば、深くため息でも付きたくなる気持ちだった。


言葉にすれば、きっと違う意味で捉えてしまう『好き』と言う気持ちを飲み込んで、ななし1は再度悟空の頭を撫でる。今度はわしゃわしゃと髪の毛が乱れる程に。ちょっぴり、嫌味と希望を込めて。

「わははは!!何すんだよっ!くすぐってぇ〜!」

「せめてお姉さんにしなさい。お 姉 さ ん 。」


不思議な事に、悟空の笑顔を見ているとこっちまで笑えてくるんだ、とななし1は思った。
きっと、くすぐられる母性本能は"お母さん"に近いものがあるのだろうが。

(………まだ、このままでいい。……このままが良い。)



焚き火があって良かったと思うのは、顔が赤くてもバレやしないから。


end

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