異国と愛
Love is funny or it's sad
Or it's quiet or it's mad
It's a good thing or it's bad
But beautiful.
Beautiful to take a chance
And if you fall you fall
And I'm thinking I wouldn't mind at all ………
「……………何だソレは。歌か?」
煙草の煙をフゥ、と吐き出した三蔵が口を開いた。
ある晴れた昼下がり、街に到着するまでの道中で一行は湖畔へ辿り着いた。
まだ街までは日にちがかかると言う八戒の言葉に、一旦ジープを止めて昼食を取ることになった。
これだけ天気が良いのだから、水遊びをしようと悟空の発言を切っ掛けに、ついでに水浴びと洗濯をする事になった。
ななし1は木と木の枝にくくりつけられたロープに、タオルや服を干していく。
木陰に停められたジープに座り新聞を読む三蔵だったが、不意にななし1が口ずさんだ歌に、眉間にシワを寄せた。
少し離れた湖畔から、悟空や八戒、悟浄が水浴びをする声が聞こえる。
「……これ、私の居た世界にある、異国の歌なんだ。」
「…………何を歌ってんのか全く理解できんな。」
興味が無さそうに言う三蔵に、ななし1は眉を潜めて苦笑した。
「……良い歌なんだけどなぁ。」
全ての洗濯物を干し終えたななし1も、一本頂戴と三蔵から煙草を貰う。
普段、煙草なんて吸わないななし1にどうしたもんかと三蔵が様子を見れば、ななし1は空を仰ぎながら煙を吐き出した。
三蔵からはあまり表情は見えないものの、切ない顔をするななし1に、三蔵はフンと鼻を鳴らす。
「……意味は。」
「………ぇ??」
「…さっきの歌だ。どんな意味だ。」
振り返れば、ぶっきらぼうに言う三蔵がななし1を見ていた。
木漏れ日から漏れる太陽光が、三蔵の金髪の髪を一段とキラキラ輝かせる。
綺麗だなぁ、と三蔵を見たななし1は、再度空を仰いで口を開く。
「……愛についての歌なんだ。」
「……愛??」
「そっ、……
Love is funny or it's sad
Or it's quiet or it's mad
It's a good thing or it's bad
But beautiful.
愛は楽しく、時に悲しい。
時に静かで、時に狂っている。
良いか悪いかは分からないけど、
それでも愛は、美しい。
………って歌なんだ。私が生まれるずっと前からある、異国の歌。なんだか、素敵でしょ??」
「……フン、一人前に愛だか抜かしてる暇があればさっさと飯の支度をしろ。…時期にアイツ等が戻って来るぞ。」
「……全く、三蔵サマってばロマンが足りない男ですねっ!」
聞くだけ聞いて再び新聞に目を通し始める三蔵に、ななし1は皮肉を返してやる。
確かに、そろそろご飯の支度をしなければ。
折角、想い人とタイミング良く二人きりになれたのに、ロマンもへったくりも無い!と拗ねるななし1に三蔵はフンとまた鼻をならした。
「………ななし1。」
「んー??」
「さっきの歌に続きはあるのか。」
「……あるは、あるけど……ってきゃ!??」
「…歌え。そして、意味を教えろ。」
(…………え〜…??? )
食材を取ろうとジープに手を伸ばしたななし1の腕を三蔵が引っ張れば、バランスを崩したななし1が三蔵の胸に飛び込みそうになる。
ジープのドアがあるから倒れなかったものの、三蔵の胸元に顔を寄せたななし1は突然の事に顔を赤く染めた。
顔を上げると、顔が触れ合ってしまうのではないかと思うほど、三蔵との距離が近かった。
「…………異国の言葉は生け簀かねぇが、ななし1の歌ならたまには聞いてやる。」
「〜〜!!!」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべる三蔵に、さらに顔が赤くなるななし1。
Beautiful to take a chance
And if you fall you fall
And I'm thinking I wouldn't mind at all ………
運に身をゆだねて
落ちる時は、落ちてしまう。
そして思うのだ。『それも、悪くない』と。
ーーー歌の続きは、まさに、自分の事じゃないか。
end
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