それは、イデアが本を読んでいた時に起きた突然の出来事だった。 不思議な鍛冶を前に、仲間達の装備品を作ろうとレシピが書かれた本に目を通していた。 その時、彼の頬に柔らかい何かが触れたのだ。 顔をそちらへと向けて見ると、そこにいたのはベロニカの姿だった。 イデアに背を向けている状態、触れたそれがなんだったのか気付いた時、イデアの頬が近くで燃えているキャンプの炎のように赤く染まった。 『ベロニカ、今……』 「な、何もしてないから!それよりほら、さっさと鍛冶やりなさいよ」 相変わらず背を向けたまま、勢いよく声をあげるベロニカ。 彼女が今どんな表情をしているか、イデアは気になって仕方がなかった。 仮に顔を見た時、ベロニカは今以上に恥ずかしがって顔を見てくれなくなるかもしれない。 話をしてくれなくなるかもしれない。 滅多にない、数少ないベロニカからのキス。 思い切ってしてくれたのだろうと、イデアは嬉しく思う。 皆が囲っている炎の元へと歩こうとした彼女を止めるように、イデアは後ろからベロニカを強く抱き締めた。 『……ありがとう』 「……うん」 後ろから微かに見えたベロニカの頬は、イデアに負けないくらい真っ赤に染まっていた。 2017/11/11 [*前] [TOPへ] [次#] |