いつか、二人のように


いつの間にそこまで進展していたのか。
目の前にいる青年と女性の姿を見て、教会の傍に居たイデアとベロニカは揃って同じ事を思っていた。
白いタキシードを身に纏う青年、カミュ。
そして隣にいる女性、セーニャは純白のウェディングドレスを身に纏っていた。

邪神を討伐し、勇者一行は旅を終えた。
それから時間が経ち、二人旅をしていたイデアとベロニカに届けられたものは、招待状だった。
それの送り主は、今目の前にいるカミュとセーニャからの物だ。
花の形をしたシールで封がされている白色の封筒。
開けた中から出てきたものが招待状――イデアとベロニカの名前が書かれた結婚式の招待状だったのだ。

「ありがとな、イデア。来てくれてよ」

イデアの相棒であるカミュが、満面の笑みを浮かべてそう告げた。
タキシード姿の彼は今までと違って見える、そんな事を思いながらイデアは微笑んで頷いて見せる。
そうして穏やかな声で、相棒におめでとう、と告げた。
隣にいるセーニャも透明のヴェールにドレスと、ベロニカの目には違って見えていた。
似合うと思うのはもちろんなのだが、長い間一緒に過ごしてきた妹だ、多少の事では驚かないと思っていた。
しかし、ドレス姿のセーニャはまるで妹ではないみたいだと、妹の知らない一面があったのだと驚かずにはいられなかった。

「綺麗よ、セーニャ。流石あたしの妹ね」
「お姉さま……ふふっ……ありがとうございます」

瞳に涙を浮かべ、嬉しそうにそう言うセーニャ。
彼女がベロニカの目線と合わさるために座り込んだ時、ベロニカはセーニャの瞳に人差し指を当てた。
泣かないの、泣くのはまだ早いわよ、そう伝えるかのように。
その思いが伝わったのか、セーニャは目を細めて幸せそうに笑って見せた。

「カミュ、セーニャを泣かせたら許さないから」
「おー怖い怖い。……必ず幸せにするから安心しろって」
「アンタだから不安なのよ、まったく」
「なっ、ベロニカ……!」

邪神討伐の旅をしていた頃と全く変わらない二人のやり取り。
その光景を見て、イデアとセーニャは微笑みを浮かべた。

セーニャが選んだ相手だから。
カミュなら安心して任せられる。
そんなベロニカの本心は、笑って言う彼女の表情を見れば一目瞭然だった。
手を握り締めベロニカに対抗しようとしているカミュの表情も、見た事の無い幸せそうな表情。
ベロニカの本心は、彼にもしっかりと伝わっているようだった。

「カミュちゃ〜ん!セーニャちゃ〜ん!」

背後から聞こえてきた、シルビアを始めとした旅の仲間達一行。
イデアとベロニカ同様に、仲間達も招待状を受け取っていた。
メンバーが揃った事により、カミュとセーニャは最終準備をするため教会の裏へと揃って向かっていった。
そんな相棒と妹の背中を見守る勇者と少女。

“いつか、ベロニカと”
“いつか、イデアと”

揃って同じ事を想っていた。
しかし、この時の二人は知らないのだった。
そう遠くない未来で式を挙げ、互いがこの日の話をするまでは。

2017/12/2

カミュとセーニャさんの方が早く結婚しそうだなぁと。
ベロニカちゃんにセーニャを泣かせたら許さないって言ってほしかったのがこのお話の発端です(笑)


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