その日は一段と夜空に輝く星々が綺麗に輝いているように見えた。 一見同じように見える輝きも、一つ一つが個性ある光を放ち、世界を照らしている。 雲が邪魔をする事無く、円形になった月と優しい光を放ち空に浮かぶ命の大樹と共に満面に輝いていた。 一行はキャンプを張り、夕食を済ませると次々とテントへと休みに入っていく。 「おやすみ、イデア、ベロニカ」 穏やかな表情でそう告げたのは、勇者であるイデアの祖父、ロウだった。 その表情はやはり実の祖父だからか、イデアの穏やかな表情にとてもよく似ている。 「おやすみなさい、おじいちゃん」 『おやすみなさい、ロウ様』 イデアと近くにいた少女――イデアの恋人である――ベロニカは、同じように穏やかな表情でそう言葉を返す。 ロウがテントへと入った時、気が付けば揺らめく炎の傍にはイデアとベロニカだけになっていた。 炎のせいなのか、それともこの状況になったせいなのか。 二人の頬が、ほんのりと赤く染まったように見えた。 「……イデア、寝ないの?」 暫し続いた沈黙を、ベロニカが破った。 穏やかな微笑みを浮かべてイデアは口にする、もう少ししたら寝るよ、と。 そっか、とだけベロニカが口にすると、二人の間に再び沈黙が訪れた。 優しい風の音、それに揺られる草木や花の音、虫の鳴き声と炎のパチパチといった音が重なり音楽を奏でる。 二人は耳でそれを受け取り、何も言わずにいるのか、言えずにいるのか、この時間すら幸せであると噛み締めていた。 ふと、イデアは立ち上がり、ベロニカの元へと歩み寄る。 そうして、隣に座ってもいいかい、と言いたそうな表情を浮かべた。 それに応えるようにベロニカは微笑んで見せた――いいわよ、と伝えるかのように。 二人の背中に佇むテントに、炎が作り出した二人の影が表れる。 最初は少し距離のある影だったそれは、一時経った時には寄り添い合っていた。 同時に、二人は身体を寄せ合っていた。 何も言わずに、自然と、ゆっくりと。 『……暖かいね、ベロニカ』 「そうね……イデア……」 二人の前で変わらず燃え続ける炎のように、穏やかに告げられる優しい声。 互いから伝わる温度も、炎のような暖かさだった。 そう会話してから、再度沈黙が訪れる。 代わりに辺りに追加されたのは、イデアとベロニカの安定した寝息だった。 炎は自然と消え、直暗い青から明るい青へと変化するであろう空に煙を残す。 太陽が顔を出し始めた時、テントからロウが起きて来た。 寄り添い合いながら幸せそうに眠る二人を見て、ロウは優しい笑顔を浮かべる。 「ふぉふぉ……彼女、ベロニカなんじゃな、イデア。将来ユグノアの王妃となるものは……のぅ……?」 悟ったかのように、ロウはそう呟いて再び笑顔を浮かべた。 “生涯を共にしたい人が出来ました” 少し前、今目の前で眠るイデアから受けた告白を、頭の中で思い出しながら。 2017/11/21 二人が両想いで恋人同士になったと仲間達が気付いていない頃、なイメージ。 ロウおじいちゃんが気付いた時はこんな感じだったらいいなぁ。 イデアはロウおじいちゃんの事を普段はロウ様って呼んで、いざって時おじいちゃんって言ってたらいいと思うのです……。 [*前] [TOPへ] [次#] |