一目惚れされちゃったみたい。
はにかみながらそう言ったティティの顔を今でも覚えている。
恥じらうような、でも少し得意そうな表情は子どものように屈託がなかった。
思わずどんな男かと尋ねたペルに、国一番の男よと彼女は答えた。

そういうわけで、あまり浮いた話がないティティについに恋人が出来たのかと周りがからかいはじめたが、そうじゃないのよと見当違いの答えが返ってくる。
皆がいぶかしんだり不思議がるのを可笑しそうに見回し、今はまだ秘密だけどと悪戯っぽい含み笑いで先を続ける。

「この前ねえ、お父様に連れられてアルバーナに行ったのよ」
「先王のご命日って言ってた式典の時?」
「そうそう、その時出逢った人なの」
「へぇー、都の男の人なんて、かっこいいんだろうなあ」
「都のやつとは限らないさ、国中から貴族なんかが集まってたんだろ?」
「でもきっと素敵な人よ!」
「ティティ姉ちゃんに一目惚れとか…」
「なんで笑うのよっ」

皆が皆好き放題に言い合う中、秘密の話なんじゃないのかとペルも笑いながら混ぜ返した。

だから数ヶ月後に彼女が嫁ぐと聞いたとき、町の皆の驚きようは半端ではなかった。
しかも相手は次期国王だというのだからなおさらだ。
確かにある意味国一番の男ではあるけれど、それは彼女の惚気半分の比喩なのだと思っていた。
あの言いようからは、それがまさか自分たちの国を担う壮麗な王子のことなのだとは想像すら出来なかった。
皆が呆気にとられたまま気づけばもう輿入れの時で、それから一年も経った頃には戴冠した王の隣には王妃となったティティが居た。
まるで昔語りのおとぎ話のようで、新聞に載った写真を見てもまだ信じられないと皆口々に言ったが、喜ばしいことには変わりない。

誰もが彼女の幸福を祈っていた。


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