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「教皇聖下の所、ですか?」
「そう。戦争は終わったしユーグは私の『帝国皇帝』になることを認めたわ。
なら、教皇にも認めてもらってさっさと戴冠したいの」
「上手く、いくでしょうか…」


バルト公はため息を付きながら呟いた。
エステルは何故か『ため息をつくと幸せが逃げる』という言葉を思い出した。


「教皇」とは、この世界の一番メジャーな宗教の最高聖職者のことである。
エステルのシェーンブルーやゲルマニクスにもこの宗教を信じている人物が多い。
特に、シェーンブルーはその宗教の国家とも言えるほど信仰が深い。

エステルもこの宗教を信じてはいるし、大聖堂や教会が建つのは別に構わないと思う。
お祈りも毎日欠かした事が無い。

でも、その権力は『帝国皇帝』よりも教皇のほうが上なのだ。
それだけが、エステルは不満に感じていた。

でも、この世界の「当たり前」なのだから…口には出さない。
エステルは咳払いをして以前お会いした教皇のことを思い出した。


その教皇は、二年前に見た方は厳格そうな老人だった。
女が男と同等の立場にいることを許せない、あり得ないと主張していた為…
エステルは18歳の時に皇帝になれなかったと言ってもいい。


その彼も、エステルがイシュトヴァーンの王になった頃に別の人に王冠を渡して引退し、そしてそのまま亡くなっていた。
その新しい教皇が、どんな人なのかエステルにもわからない。しかし、ゲルマニクス国のユーグは何かしらの用事で会った事があるらしい

その時に連絡先を貰ったことがあるらしく、季節の贈り物とかを教皇にしていて付き合いがあるという。あの院議無礼な態度から想像は難しいが、年上の人にはちゃんと弁えているらしい。


エステルに、先日の講和の時のお詫びに教皇と会わせてやるとの申し出がきた。

ムカつく文章だったが、『お詫び』を拒否したら色々と面倒くさいことになる。
エステルは借りを作りたくなかったが…仕方なく受け入れることにした。

すでに会う日が指定されており、その日が明後日だったのだ。

「話が通じてくれればいいけど。その間…1日だけど、その日の内政は申し訳ないけどお願いしてもいいかしら」
「わかりました。」
「それから、ちょっと準備して欲しいものがあるんだけど…」
「?」
「フォティアにも後で話してみるけど…戴冠式までに間に合わせたいものがあるの」

エステルはバルト公に耳打ちした。
バルト公は驚いた顔をしたが、理由を話すと微笑ましそうな表情に変わる。

「わかりました。急いで準備しましょう」

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