▼ 02
「エド、貴方もお願い」
「俺も?」
「使者の人がエドの同席もお願いしてるみたいなの。」
「…わかった。」
エドヴァルトを呼びに行き、エステルは居間のソファーに座る。
エドヴァルトもその隣に座る。
「あ、エステル今日はネイルしてもらったんだ?」
「ええ。緑と青。青はエドの目の色みたいな色なの」
「とっても素敵だね。俺も帰ったらお揃いにしてもらおうかなあ」
「ふふ、それもいいかもね。」
結婚指輪のある薬指を青のネイルにしてもらったの、とエステルが伝えると、エドヴァルトは顔を抑えた。
大の大人が照れて可愛いなあと思っていると、ドアがノックされた。
エステルもエドヴァルトも表情が強張った。エステルが緊張の混じった声で答える。
「どうぞ」
エステルが返事をすると、10秒ほど沈黙。
そしてドアが開いて一人の男が入ってきた。
身長は178くらいの、エドヴァルトより少し若い…エドヴァルトの弟のアイザックくらいの年の頃かもしれない。
羽帽子のついた帽子はあまり飾りがなく、シンプルなもの。
紺色のマントと暗い灰色のズボンとブーツ。腰には黒光りする銃がぶら下がっている。
マントの下には貴族のような上着とベストが見える。
その羽帽子からちらりと見える、毛先が少し猫毛のサラサラの髪。
彼は部屋に入ると同時に帽子を脱いだ。その顔は口元は笑っているが…翡翠色に近い緑の目は一切笑っていない。
エステルもエドヴァルトの目は、大きく見開かれた。
「ユーグ…?」
「やあ、エステル。エドヴァルト殿下。お久しぶり。5年ぶりかな?」
恭しく、芝居がかったような礼をしながら。
ゲルマニクス王のユーグは二人に笑みを浮かべながら挨拶をした。
「どうして…」
「どうしてって、王自ら来てはいけないのかい?大体君もミゲル王に会いに一人で行ったり、イシュトヴァーンにも行ったんだろう?なら、僕だっやってもいいだろう?」
「…」
エステルはそれ以上言わずに、ユーグにソファーを勧めた。ユーグはそのままソファーに座り、脚を組む。ふてぶてしい態度に、エステルは綺麗に整えられた眉をひそめた。
その表情の変化に気づき、ユーグの表情はにやにやとしたものに変わる。
三人がソファーに座ったところで、女官長のフォティアがコーヒーとココアを配った。ユーグはじぃっとコーヒーを見つめる。
「毒なんて入れていないわよ」
エステルは自分用のコーヒーにミルクピッチャーからミルクを入れながらユーグに言う。
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