小説 | ナノ


▼ 01

シェーンブルーの離宮は、シェーンブルーの王宮よりもこじんまりとしている。

普段は、お客様用のお部屋などとして使用している。王宮よりも建物自体は小さいが、ここもロココ調を基本としており、上品な柔らかい色が中心のインテリアや家具を置いている。

王宮では、バルト公達に別の事をお願いしている。

実は、講和を受け入れるにあたって周辺の国に動きがあった。
以前ミゲル王が収めていたバヴィエーラ。ミゲル王の弟が後を継ぎ、改めて話し合いを行った。

その事で和解出来て、彼らもエステルに「帝国」の皇帝になって欲しいと言ってくれた。そして、何かあれば力になる。とまで。

エステルは、ミゲル王とは争ったけど亡くなる前に和解も出来てバヴィエーラと遺恨が残らずに済むことに安心していた。


そしてもう一つ。これはいい知らせなのか悪い知らせなのかはわからないが。
エステルの父の代では同盟を組み、エステルの友人の国のギュバハルルと戦ったクレムリンという国がある。その国で、あるクーデターが起こったのだ。

クーデターを起こしたのは、クレムリンの4代前の女帝の娘だ。
自信が正統な皇位継承者として、帝位を継いでいた親戚の幼い男の子を塔に幽閉したとい
う。そして、そのクーデターが成功してその娘…リュドミラは女帝に君臨したという。


その女帝の噂は凄まじかった。
「クーデターを起こした女帝」という事実から、残忍なやり方で幼い皇帝を取り囲んでいた兵を殺すように指示をしたとか…。銃殺刑で多くの兵を殺すのを平然とロシアンティーを飲みながら見ていたとか。そして銃器も簡単に扱える、拷問好き、死刑好き、魔女狩りを復活させようと思っている、とか悪意に満ちた噂ばかりだった。

どれも彼女を否定的に噂ばかり。
そのリュドミラが、この戦に参戦しようとしているとの噂もあった。

どちらの側で参戦するのかわからないが、もし敵側についたらいろいろと怖い。
自分も惨たらしく殺されるのかもしれないし拷問…考えるだけで頭が痛い。 仮に味方についてくれたとしても…「帝国」に干渉されるのは辛い。


どっちみち、講和を受け入れることを決めたのだから…関係はないのだが。
クレムリンの動きも気をつけなければならないと思った。


エステルは使者のために女官にコーヒーを淹れて貰おうと席を立つと、一人の女官がエステルに声をかけた。ゲルマニクスの使者から伝言を預かったと言う。

「それが…講和の話し合いには、エドヴァルト殿下が必ず立ち会うことを希望する、と伝えていました」
「…わかったわ。じゃあ、コーヒー2杯とホットショコラ1杯お願いね」

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