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イシュトヴァーンの貴族達は、共同国王でも「王妃」でもないエドヴァルトに、私人としての席しか用意できないと告げていた。そんな扱いを受けるくらいなら、エドヴァルトは出席しないと選択したのであった。

「はあ!?意味わからない!私の配偶者なのに?!」
「まあまあ。落ち着いて。シェーンブルーの時のエステルの戴冠式出れたの、ある意味奇跡みたいなものだから。」
「でも…普通は配偶者にも席を用意するのが当然じゃないの…?!」
「ちょっと難しい立場なんだよね…大丈夫、教会に入れなくても、いざとなったらよじ登って教会の窓からこっそり様子見るから」
「よじ登る?!危ないわ、エド!」
「高熱出したエステルに言われたくないな。いざとなったら、だから。大丈夫大丈夫。」

エドヴァルトはエステルの頭を撫でながら、いつもと変わらない笑みで答えた。


「王配」という身分は難しい。
普通は王が男で、その配偶者は「王妃」。
しかし、その逆だと王の配偶者の「王配」。女王の影に隠れてしまうことも多く、「殿下」としか敬称をつけられないこともしばしば。

エドヴァルトはましてや、ロレアル公国君主の座に一年だけ就いたが、その国の場所を知っている者は少ない。一地方の領主程度の貴族の彼はシェーンブルーの大臣達と生まれ持った身分で言うとほぼ同等。

エドヴァルト自身は気にした様子はない。しかし、周りからヒソヒソ言われるのを耳にする度に心苦しかった。彼の人柄を見れば、陰口を叩く気持ちもわかないほどの立派な人なのに。

「そんな顔しないで。エステル」
「だって…エドがそんな扱いされるの嫌だもん」

だだっ子のようにエドヴァルトの手にすがり付いた。
そんな様子を見た彼は、叱咤することもなく優しくエステルの頬を撫でた。


「…エステルは優しいね。気にしなくていいんだよ。今日はベッドから起き上がるのを極力控えてね。お世話は俺、するから」

優しいエドヴァルトの言葉に、エステルの瞳から一粒の涙がこぼれ落ちたのは…。彼の優しさに甘えてしまっていることの悲しさなのか、熱で情緒不安定になっているからなのか。

わからなかった。

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