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次の日。
いつもと違う内装の天井に驚いてエステルは飛び起きた。あの後、頭痛がして意識を失った。まだフラフラする。

「エステル。」

男の人の声が聞こえた。
優しくて甘いけど、どこか怒っているような声。
聞いていて一番落ち着く声。

まさか、と聞こえた声の横を見ると、いるはずのない人物がいた。

「エド?!何でここに…」
「連絡貰ったんだ。熱出してぶっ倒れたって」

それは、シェーンブルーにいるはずのエドヴァルトだった。いつもにこにこと優しい笑顔を向けてくれる彼が、めちゃくちゃ怒ってる。

眉間にシワを寄せて、腕組をしている。
膝まで組んで…怒っていなければとても格好いいなと呑気に思ったエステルにたいして、再び眉をつりあげた。

「まったく君は一人で考えて突っ走って…!何考えてるんだ!少しは自分の体を大事にしなさい!」
「ご、ごめんなさい…」

彼の剣幕にエステルは驚いた。
いや、むしろ恐縮した。

「もし無理してそのまま高熱出して病気になったらどうするの。誰がシェーンブルーを指揮するのさ!少しは自分の身を大事にしろ!」
「ごめん…エド…怒らないで…」
「怒るな?無理な話だろ!自分の妻が苦しんでるのほっとけるわけないだろう!」

口調まで変わってきてる。
ああ、これは何言っても火に油を注ぐ結果になってしまう。エステルが何を言おうとも、聞いてくれないパターン。

エドヴァルトはガーっと怒った後、ため息をついてエステルの手を取った。

「…エステル。俺何度も言ってるけど、君は一人の皇族である前に女の子だよ…。もっと自分を大事にしてよ。約束して。」
「…」
「わかったか?俺は君の味方だし、できることなら協力するから…危ない真似はしないでくれ。正直生きた心地がしなかった」
「…はい。ごめんなさい…」
「気を付けてね。熱は大丈夫?一応下がったかな?顔色はいいみたいだけど…」

エドヴァルトは自身の額をエステルの額にコツン、とくっつけた。次に、手袋を脱いでエステルの首の脈のところに手を当てた。

「来たときよりはマシかも」
「うん…」
「イシュトヴァーンの人達から全部話は聞いたよ。
頑張ったね、エステル」
「…っ…」

エドヴァルトがエステルを引き寄せ、頭を撫でた。
その言葉に、涙が溢れる。我慢しないとと思うほどに涙腺は緩み、ポタポタと頬を流れる。

エドヴァルトはエステルにハンカチを出してあげ、涙を拭ってあげた。

「イシュトヴァーン王としての戴冠式は明後日なんだろう?今日はとりあえず体を休めよう」
「うん…」
「バルト公達はちゃんと来ているから。戴冠式には出てくれるって」
「…エドもいるんでしょう?」
「ううん。俺は出れないみたい。」

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