◎うたた寝(妖縁)


宮が珍しく昼寝をしている。


ここは私の屋敷で、現在の時刻は15時。
お仕事が終わって、私と宮は屋敷にそのまま帰ってきた。手洗いをしてお茶をいれたところで宮が居間で横になっていた。


「疲れたのかな…」
「そうじゃない?私達って昼間起きてるの、わりと辛いのよお」
「ひっ!」

急に聞こえた声に、私は腰が抜けるほど驚いた。

ぬ、っと表れたのは宮の妹の玉藻。
宮の妹、と言われても正直お姉さんの間違いじゃない?と思うほど大人っぽいのだ。

宮はどちらかというと私と同い年くらいの見た目だし…余計にそう思えてくる。でも、見た目が若いだけで年だけは上の妖怪だっているのかもしれない。


「澪ったら大袈裟な驚き方ねぇ。そういうところ可愛いけど〜」
「た、玉藻…。驚かさないでよ…」
「ふふふ、ごめんね。」

玉藻は私の横に座り、宮の分の淹れていたお茶を一気飲みした。

「あたしも兄者も…というか、妖狐はね。夜行性だから昼間は基本眠いのよね。兄者はたぶん無理に夜行性から朝型に直してる途中なのよ」
「朝型に…」
「夜の方は屋敷に忍び込む妖怪とかがいないように、目を光らせてんのよ。あたし達」

--知らなかった。
玉藻も宮も夜はぐーすか寝ているようで、夜は私がゆっくり眠れるように屋敷を守っていたのだ。

「結界貼ってても駄目なのかな…」
「結界ねぇ。ここね、あたしや兄者が動けるほどだからそんなに強い結界じゃないわ。」

祖父様が宮に会いに行く前に、結界を貼り直していたのを思い出した。きっと宮がここに住むことを見越していたのだろう。


「だから、結界が破られたりしないように気を付けてるの。」
「玉藻…」
「居候だし、これくらいはさせてね」

玉藻はそう言って、友人に会いに行ってくると言って姿を消した。


寝ている宮を見ると、規則正しく胸が動いている。
私は自分の部屋にあった羽織を持ってきて、宮にかけてあげた。


「改めて見ると…宮って睫毛長いし美人…」

宮は男の子だけど、パッと見は女の子。
髪は艶々で手触りいいし、睫毛も長くて美形。体は華奢だけどちゃんと筋肉ついてて。

髪の毛は紺色に近い群青色だけど、毛先の方が晴れた空の色。なんだか、夜空と晴れ間の昼の空が一緒になっているような感じ。


「何見てるんだ」
「へ」

あまりじっと見つめすぎたのか、宮が起き上がった。

「ふぁ…あ。寝ていたのか、すまんな」
「え、いや…」
「何だ?」

宮にじっと見つめられて、急に心臓の鼓動が激しくなる。

「な、何でもない…」
「ふうん…。ま、いいや。もう少しだけも寝ていい?」
「うん、いいよ。」
「床が固いから、頭だけ乗せさせて」

宮はそう言いながら、星座で座っていた私の太ももに頭を乗せて目を閉じた。


「ご飯作るときには起きてね」
「うむ…」

そのまま眠りの世界に行ってしまった。


「夜中も起きてくれていたなんて知らなかったよ、有り難うね。宮」

私はそう言いながら、宮の頭を撫でる。
宮の尻尾がパタパタ動いたように見えたが、気のせいかな。

私は太ももに宮の重みを感じたまま、庭に見える紫陽花を眺めるのだった。





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