とりあえず、ロビンの時間割は把握している。
例えば朝っぱらから体育でフランキーのスーパーな授業(本人曰く)を受けているとき、ロビンは今頃1年生にヨーロッパ史を教えているんだろうなあとか、あたしが3限目のウソップ先生の化学を受けてるとき、ああきっとロビンは空き時間なのかって。
どんなときでもロビンを想って、そばにいなくても心はいつもロビンに寄り添ってる。
「うーあー!!」
とはいっても、昼休みや放課後だけの逢瀬なんかじゃやっぱりもの足りません!!
しかも職員会議とかあるから毎日会えるわけじゃないし。
それに学校でしか会えないし。
極めつけは、ロビンが忙しくて部活が休みだったから今日を入れたらもう3日も二人の時間を過ごせていない。
世界史の授業ではもちろん会えるけど、教師としてのロビンじゃなく、ロビンのままのロビンに会いたいわけで。
だからかえって逆効果。
生殺しなんですですよ、もうほんとに。
思わず机に突っ伏して頭を抱える。
出来ることならロビンの背中にずっと張り付いていられたらいいのに。
ああ、なんかもう発想がストーカーじみてるわね。
「くぅー!!」
「ナミさんさっきからその奇声が気になるんだけど」
ビビが白い目でこっちを見てくる。
「奇声じゃないわよ
これは心の叫びなんだから」
「ああ禁断症状ね」
なんじゃそりゃ。
なんか一人で自己解決してるし。
違うんだからね!!
…いや、あながち間違ってないけど。
5限目の休み時間。
たった10分しかないこの時間を、なにが悲しくて悶々と過ごさなきゃなんないのよー
6限の授業を受けたら待望の放課後だけど、今日も部活休みだし。
あーいーたーいーよー
どうしても我慢できなくて、スカートのポケットに入れてた携帯を取り出してロビンにメールを送信。
"ロビン、大好き
会いたいよ"
学校にいるときにメールなんてしたら真面目なロビンが怒ることは百も承知だけど、今はとにかくどんなかたちでもいいからロビンと繋がっていたくて。
でもやっぱり
返信こないかもなあ、って思った瞬間、携帯が震えた。
画面を見ればロビンからのメールで、
"非常時以外は在校中でのメールは禁止だと決めたでしょう?
ちゃんと勉学に励んで"
やっぱり教師らしいというかロビンらしい返事で。
久しぶりのロビンとの会話でうれしいけど、やっぱりちょっとしゅんってなった。
会いたいと思うのはあたしだけなのかな。
大人の女ともなるとやっぱり余裕が出てくるのねなんて考えてたら、まだメールには続きがあるらしく、長い余白の最後にまるで隠してあるみたいに一行の文章が
"非常階段で待ってる"
ばっと教室の時計を見ればあと2分で休み時間の終りを指していて、急いで非常階段まで走った。
そのまま突進するくらいの勢いで扉を開けたら、ロビンが階段にちょこんって座っていて一気に力が抜けた。
「ロビンっ!!」
「ナミちゃん、扉はもうすこしソフトに開けて?」
こんなときにもロビンは間の抜けたこと言うのね。
「会いたかった」
「メールで読んだわ」
「すっごーく会いたかった」
あたしだけに向けてくれる笑顔を見たらなんだか心の中に漂ってたもやもやがすうーっと消えていって、ロビンの手をぎゅって握った。
あたたかくてあたしの手にしっくりとなじむロビンの手。
6限目開始のチャイムが聞こえたと同時にロビンもあたしの手を握り返してくれて
「ロビン、もう授業始まるよ
次、3年生の授業でしょ?」
「そうね
じゃああと10秒だけ」
「い―――ち
に―――い
さ―――ん」
「……ナミちゃん、一秒一秒がとっても長いわ」
<あとがき>
会える時間が限られてるのは、思春期真っ盛りのナミちゃんにはつらいものがありますね。
素直にわたしも会いたい、と伝えられないロビンのあまのじゃくな感じがちゃんと表現出来たか不安です
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