ビビは何も言わずただそばにいて抱きしめてくれた。


もう何も考えたくない。
あたしの頭の中が空っぽになったのか、それともいろんな想いで容量オーバーになったのか、どっちなのかわからない。
結局ある極限まできてしまうと、どちらも大差ないんだと思う。


今必要なのは温もりで、今一番こわいのも温もり。
温もりを求めれば孤独が顔を出してあたしにまとわりついてくるから。
震えながらビビの背中に手をのばした。


「………ひっ………く、」


ロビン先生はあたしと向き合うことすらしなかった。
なんでもない取るに足らないことのように、忘れましょう、と。
少しでもあたしをみていてくれたと思っていたのに。
あたしのただのひとりよがりだったんだ。

「ナミさん、もう十分よ」

ビビが切なそうな顔をしている。
なにが十分なの?
あたしはやれるだけのことをやったってこと?

「ビビ、あたしは……どうすればいいかわからない」

「なにも考えなくていいわ
時間がかかってもいいから、ゆっくり忘れていけばいいんだと思う」


ビビもロビン先生みたいに忘れろって言うんだね。











学校がこんなに辛いなんて。
世界史の授業はほとんどサボるようになった。


顔をみたくない。
悲しくなるから。
声を聞きたくない。
苦しくなるから。


「今日はナミさんのために弁当をつくってきたの
ちゃんと食べてないでしょう?」

「ありがとう、ビビ
本当にうれしいんだけど
なんか食欲ないんだ」

「そう…じゃあせめておにぎりだけでも
ナミさん、梅すきでしょう?」

そう言って差し出されたおにぎりを受け取ったら、昔の思い出が次から次へと溢れてきた。

「……ごめん、ビビ
気持ちだけ受け取らせてもらうよ
ほんとにごめんね」

「ナミさん……」

「ちょっとトイレに行ってくるね」

「ナミさんっ
ひとりで抱え込まないで、ね」

「ありがとう」

早歩きで非常階段に向かう。
扉を閉めて、階段にしゃがみこんだ。
ロビン先生のおにぎりは塩と海苔が巻いてあるだけのシンプルなやつだったなあ。
すごくすごくおいしかった。

どうしてこんなに涙が溢れてくるんだろう。
忘れたいのに、思い出にしがみついてしまう。



キーンコーンカーンコーン

昼休みの終りを告げるチャイムが耳に入ってきたから涙を拭って教室に向かった。

心配かけちゃだめだ。
この想いを殺して強くならないと。

気持ちを切り替えて頑張ろうと思ったら、教材を持ったロビン先生とすれちがった。
隣を歩く生徒と楽しそうに話をしていて、こっちを見向きもしなくて。

今さっき切り替えたはずの気持ちがどんどんしぼんでいく。


もう疲れた、なにもかも。

教室に向かって進めていた足を止めて、鞄もなにも持たないまま、学校を出た。

今はただ家に帰って眠りたい。
できれば楽しい夢をみたい。
ロビン先生と出会う前に戻れたらどんなにいいだろう。






ほんとうは、まっすぐなこの想いを貫き通したかった















<あとがき>
ナミちゃん、現状に慣れようと必死です
だけどうまくいかなくてじたばたともがいている状態
ビビをどうしようか検討中
なにかアクションを起こさせようと思ったけど、力尽きてしまった
次こそは頑張ります





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