04.

たしかめたいことがある。


保健室で彼女が寝ている。保健委員の仕事をしていると、時々彼女はここに寝に来るようになった。本来なら委員として注意すべきなのだろうけど、委員長の善法寺伊作先輩や他の上級生の男子生徒が骨抜きになっている今では、目をつけられかねない。なのでここは彼女が好きな時に寝られるような空間になってしまっている。

たしかめたいことがある。

眼鏡はもう外してある。そっと、彼女に近付く。彼女の左小指には、数えきれない位の赤い糸。ぐっすり眠っている彼女は、その手を無防備に投げ出していた。


その綺麗な指の糸に、手を伸ばす。すると結ばれた細い糸の中の一本を、掴めた。くい、とそれを引っ張ると、蝶結びだったそれはするり、と、いとも簡単に、取れた。


(……取れた…)


すかさず足音を立てぬよう彼女から離れる。自分の手元を見ると掴んだ赤い糸はたらりと垂れている。彼女のところへ戻ろうとはしない。それを、すっと離す。

すると赤い糸は、まるで意思を持つかのように突然、動き出した。びっくりして固まると、その糸はどんどん保健室から縮むように出ていったのだ。彼女なんて目もくれず(いや、目は無いんだけど)。

ぺたん、と座り込む。なんだか、とんでもないことをしてしまったかもしれない。




04.解けた赤い糸
(次の日、一人の男子生徒が必死に元カノに復縁を求める声が響いた)



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