05.

転校生の指に巻きつく、赤い糸。今やほとんどの男子生徒の赤い糸を繋いでいる転校生は、授業休み時間問わず注目の的だった。男子からは熱い視線。女子からは嫉妬と憎悪の視線。これでは授業にすらならないため、いつも個性的な先生方が珍しく皆一様に頭を抱えている姿が見られた(一年三組の土井・山田両先生はいつものことだけれど…)。とにかく、今学園はめちゃめちゃだった。


そんな中、私はというと。


「いい天気だねぇ」

「…そうだね」


何故か尾浜君と一緒に、お昼ごはんを食べていました、まる。あ、いや、決して二人きりではなく、私の女の子友達も一緒に。友人たちは唯一転校生に毒されてない尾浜君を大事なものを愛でるように接していて、まるでハーレム状態だ。彼女たちは出来るだけ彼を転校生に近づけないようにしている。彼女たちもまた、尾浜君と同様に赤い糸を無理やり千切られ思い人を奪われた『先のない赤い糸』を持っているから、思い人をなくした者同士波長が合うのかもしれない。女子数人対男子一人の状況なのに不思議と話は弾むのは(女子特有の雰囲気で男子を置いて話がポンポン進んでいくということが無い)、そのせいもあるのだろう。


……。


私は、どうしたいのだろう。昨日、私は赤い糸を彼女から解くことができた。今まで考えたことも無かったけれど、あの時見えるのなら触れないのか、と思ってしまったのだ。結果、赤い糸は私の手で解け、元々結ばれていた相手の元へと還っていった。これが出来るのなら、今のめちゃめちゃな学園をどうにかできるかもしれない。

でも、いいのだろうか。私は赤い糸が視認できるだけで、転校生が赤い糸に何か細工したという確証には至らないのだ。もしかしたら彼女には誰もが持っていないような魅力があって、それに男子が惹かれていったのかもしれない。そんな魅力の持ち主がいれば、だけれど。


「どうしたの?」


ハッとなって顔を上げると、尾浜君が私をじっと覗き込んでいた。どうやら考え込みすぎて意識が飛んでいたらしく、友人たちも「顔色悪いよ、大丈夫?」などと声をかけてきた。


「大丈夫、寝不足なだけだから」

「あー、アンタ本の虫だもんね」

「そうなんだ?」

「うん、昨日もいつの間にか夜中になってて焦った」


ははは、と笑うと友人たちはバカねえ、と笑ってくれた。尾浜君も少し訝しげにしていたけれど、多分誤魔化せたと思う。











「ねえ」


そんな昼休みを過ごした日の放課後、不意に呼び止められた私は立ち止まる。呼び止めた本人の尾浜君は少し迷うような仕草をしたあと、困ったように笑った。


「一緒に、帰らない?…少し、相談にのってほしいんだけど」






05.手を伸ばした先の赤い糸
(申し訳なさそうに頬をかいたその指には、先の無い赤い糸)(気がついたら、私はいいよ、と言ってしまっていた)


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