いちのに。
―――――会いに来てよ。
会いに来たのに。
「俺、尾浜勘右衛門。よろしく、えーと、久々知?」
「…久々知兵助。よろしく」
思わず無愛想な返事になったのを、竹谷に「おい、」と肘でこづかれて注意されたが、そんなことは全く気にしていなかった。
会いに来たのに。探してって、言ってたのに。
記憶の中と同じ名前と容姿をした彼は、生まれ変わってまっさらになっていた。
「…久々知兵助。よろしく」
目の前の彼は無愛想にそう言った。横にいたボサボサ髪の少年が咎めるように肘でその子をこづいたけれど、彼の態度は変わらなかった。
綺麗な黒髪、太い眉。大きい眼に、長い睫毛が影を落としている。制服の着こなしも規則通りで、真面目な印象が残る、美少年だ。だからだろうか、
(なんか、目が離せない)
そのままじっと見つめていると、少年―――――久々知は、なんだか顔を歪めてふい、とそっぽを向いてしまった。「悪いな、」とボサボサ髪の少年―――――竹谷が謝ってきたので、笑って「いいよ、」と言った。
(なぜだろう、多分、嫌われてはいないはずなんだけど…)
彼はどうして、あんな寂しそうな顔をしていたんだろうか?
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