いちのさん。

そんな話をしていたのが、約一年前。


「勘ちゃん、」

「あ、へーすけ」


季節は変わり、また春がやってきた。呼びかければ赤みがかった茶髪が揺れて、大きな丸い瞳と目が合う。


「もうすぐ始業式だぞ」

「うん、わかった」


用件を伝えると、彼は今も昔も変わらないあの笑顔で返事をした。そのまま二人で体育館まで向かう。


「あ、やっと来たよ"五い"の二人」

「おせーよ、ギリギリだぞ」

「ごめんごめん」


体育館前で待っているいつものメンツに、彼がそう言って輪の中に入っていく。学生服を着た彼らの背中に、一瞬"昔"の姿がダブって見える。


「あれ?何してんのへーすけ!式始まるよ!」
(『あれ?早くしないと授業始まっちゃうよ?』)





「…うん。今行く」




記憶の無い彼らは、陽の光を浴びて輝いてみえる。いっそ自分も彼らの様になれたならと、思ったこともあったけれど。






―――――あいに、きてよ。








あの日の約束を、無かった事にはしたくないのだ。




01.鳥は、
(飛んで行ったまま、帰って来ない。)

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